表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第8章 嵐の竜帝国
67/73

04 大災害

 04 大災害



 シャリーナが出て行ってすぐにまた外で大きな雷鳴が轟いた。

「きゃっ」

 小さく悲鳴をあげるミュゼリア。

「ほんと酷い雨だな。まるで滝の中にいるようだ」

 窓の外を見て眉間を寄せる功助と、不安そうに胸に手を当てるミュゼリア。


 城の中は比較的静香で、強い雨の音と時々爆音のような雷鳴が聞こえるだけでいつもと変りない。

 功助は何もすることもなく時は流れそろそろ昼時となっていた。

「コースケ様、お昼の準備してきます。しばらくお待ちください」

 ミュゼリアが昼の膳を取りに部屋を出る。

 そして十数分後ワゴンに昼食を乗せて戻ってきた。

「どうぞお召し上がりください」

 いつものように配膳をし功助はそれをいつものようにおいしく食す。それを見てミュゼリアはうれしそうだ。

 食事も済み功助はスマホを取り出した。

「ご両親様に電話するのですか?」

「あ、うん。母さんに今日のこと言っておかないとね」

 と言ってスマホを捜査する。

 数回の呼び出し音ののち功助の母友紀が応答した。

「『はい、もしもし功助。今晩だったわよね。ほんとにもう早く連絡してきなさいよね、心配してるんだから』

 といきなりの説教に苦笑する功助。

「あ、うん、ごめん。ちょっと取り込んでて。でさ……」

 功助は今晩の二十四時に儀式を行い還ることを説明した。

『そうなの。で、どこに戻ってくるの?やっぱり自宅?それとも功助が住んでたマンション?それとも日本のどこか?それとも世界のどこか?世界のどこかなら大変だけど、大丈夫なの?』

「へ?あ、うん。自宅だよ。頭に思い浮かべたとこに戻るんだってさ」

『そう。それなら安心ね。でも、へんなところ思い浮かべたらダメよ。藤さんのてっぺんとか、南極とか、月とか』

 と言ってくすくす笑う友紀。自分の言ったことがおかしかったのだろう。

「はは。母さんじゃあるまいし」

 と功助も笑う。

 とその時城を震わせるほどの雷鳴が轟いた。

『な、名に今の音。凄い音したわよ。大丈夫なの?』

「うん。今こっちは凄い嵐だよ。まるで超巨大台風が来てるみたいだ。でもここは頑丈な城の中だから大丈夫だよ」

『そう。でもそんな天気で儀式できるの?お月様も見えないでしょう?』

「うん。それは大丈夫。月の力は天気に左右されないんだってさ。だから儀式はできると思う」

『そう、それなら安心ね。それじゃ戻ってくるの待ってるからね功助』

「うん。それじゃまた儀式の直前に電話するよ」

『わかったわ。それじゃあね。くれぐれもみなさんによろしく言っとくのよ』

「うん、わかってるよ。それじゃ」

 と言って通話を切った。

「ユキ様のはずむ声が聞こえてましたよコースケ様」

 とミュゼリアはうれしそうだ。

「あはは。そうだな、うれしそうだったよ」

 と言って手の中のスマホを見つめた。


「それではコースケ様、魔族の骸をいただきにバスティーア様のところに行きましょう」

「そうだな」

 と言ってミュゼリアの開けたドアから廊下に出た。

 昼間だと言うのに廊下は夜のように真っ暗だ。

 窓の外に意識を向けるとあちこちから魔力を感じる。おそらく魔法によって救助をしているのだろう。

 功助はふとシャリーナのことを思い浮かべた。

「(頑張ってシャリーナ)」

 功助は再びミュゼリアのあとに続きバスティーアの部屋に向かった。


「コースケ様。これが魔族の骸です」

 頑丈な箱に入れられた魔族の骸。それを取り出して確認した。

 拳大のガラスのような石はダンニン。金貨のようなものはデイコックだ。そして干からびた蛇のようなものはムダン。

 最後に、羊のようなツノは大魔王ゼドンだ。

「これで、コースケ様の魔力と気を白き牙の台地に注ぎ込めば、元の世界にお戻りになることができるのですね」

 バスティーアは確認した骸を再び箱に戻すと功助に手渡した。

「コースケ様、時間になればお迎えに行きますのでお部屋でお待ちください。そして、儀式には私もご一緒させていただき見届けさせていただきます」

 バスティーアはうやうやしく一礼した。

「……ありがとうございますバスティーアさん」

 箱を持ったミュゼリアとともに功助は自室へ戻るため廊下を進む。相変わらず廊下の窓から見える景色は強い雨でまったく見えない。

 薄暗い渡り廊下を通り、角を曲がると廊下を掃除してるバサバサ金髪のオーシャンに出会った。

「おう、兄ちゃんやないか」

 ニコニコしながらオーシャンは近づいてくる功助に片手をあげる。

「おっちゃん」

「今晩やったな」

「はい。やっぱり知ってましたか」

 と微笑む功助。

「そりゃそうや。なんせワシは掃除のおっちゃんやさかいな」

 わっはっはと笑うオーシャン。相変わらずだなと少しうれしくなる功助。

「それが魔族の骸か?」

 オーシャンがミュゼリアの持つ立派で頑丈そうな箱を指さした。

「はい。これが元の世界に戻るための触媒になるものですよ」

 と説明する功助。

「そうか。ふう、なあ兄ちゃん、やっぱり還るんやな」

「……はい。次に還れる見込みがあるのが五十年後。少しばかり待つのが長いですし……」

「うーん。そやけどなあ。なあ、思い残すこと無いんか?」

 オーシャンの質問に少しとまどう功助。

「うっ……。ま、まあ、無いこともないですけど……」

「ふーん、そうなんや。還ったらもやもやすんねんやろなあ兄ちゃん」

「……たぶん……」

「でもまあええわ。それが兄ちゃんの出した答えなんやな」

「……はい……」

「ほんならもうなんも言わへんわおっちゃんは。でも、でもな」

 とまっすぐに功助の黒い瞳を見るオーシャン

「残されたもんはめっちゃ寂しいねんけどな。ほんま、こうなるんがわかってたら兄ちゃんのこと無関心でいたかったわ」

 と苦笑するオーシャン。

「…おっちゃん…」

「ははは、悪いな兄ちゃん。戯れ言やと思といてや。まあ、ちょっとはほんまの気持ちやけどな」

 再びはははと笑いながら功助の肩をポンポン叩く。

「でもな寂しい思いすんねんやったらいっそのこと兄ちゃんに嫌われた方がホッとするかもしれんわ。それの方が兄ちゃんも未練無くなるやろし」

「へ?」

「どうしたんや兄ちゃん」

「あ、いえ……」

「なんや変な兄ちゃんやな。まあええわ。なあ兄ちゃん、元の世界に戻ってもワシのことはええけど姫さんのことは忘れんといてやってな。姫さんもとてもやさしいさかい。見てて悲しゅうなってしまうことが多いんや。昔はあんなにお転婆やったんやけどな」

 とオーシャンは小さく肩を竦める。

「へ?あ、はい、わかってます。わかってますよおっちゃん」

 その時再び城を震わせるほどの大きな雷鳴が響いた。

「うわあ、大変やなこれは。ほんま掃除してる場合とちゃうかも」

 窓の外を見て眉間を寄せるオーシャン。

「ほなな兄ちゃん。もう会うことはあらへんと思うさかいな。元気でな」

 オーシャンは肩てを上げ手をひらひらさせると功助たちとは反対の方に歩き始めた。

 その時カツカツと走る足音が廊下に響いた。

「ここにおられましたか!今連絡がありました。城下の西にあるアール川が氾濫しました!」

 走ってきたのはバスティーアだった。そしてバスティーアが城下からの連絡を報告したのはなんとオーシャンだった。

「え、あ、うん。いや、あんな」

 としどろもどろのオーシャン。

「どうしたんだろ?」

 と功助が不思議そうに二人を見つめているとバスティーアの次の言葉に驚いた。

「すぐに対策室にお越しください、トパークス国王陛下!」

 バスティーアは真っすぐにオーシャンを見て言った。

「……トパークス…国王…陛下……?へ……?」

 口を開けてオーシャンを見る功助。その横でミュゼリアは額に手を当てて大きなため息をついていた。

「あは、あはは。ほ、ほんまにもう、嫌やなあバスティーアはん……」

「陛下!遊んでいる閑はありません。すぐにお越しください!」

 と一括。

「あ、うん、わ、わかったから、今すぐ行くからそんな大きな声を出さんでもよいではないか」

 とオーシャン。そして功助の方を見ると頭をかきながら言った。

「な、なんだ、えと。今からおっちゃんは忙しなるさかい。ほんならな」

 と言うとスタコラサッサと廊下の向こうに消えていった。

「なあ…ミュゼ……」

「あ、はい」

「どゆことなんだ?」

「はい、えと……」

 苦笑するミュゼリアだった。


「え……、ええええええええっ!」

 部屋に戻りオーシャンの真の正体を聞いた功助はソファーから飛び上がった。

「ま、まさか、おっちゃんが陛下だっただなんて……。俺、そうとは知らずにいろんなこと話したぞぉ」

 頭を抱えた。

「本当のことを教えてさしあげようとはしたのですが……、陛下のあの目で睨まれてしまいまして……。コースケ様、申し訳ございませんでした!」

 といってミュゼリアが深々と頭を下げた。

「あ、ミュゼはそんなことしなくていいから。ミュゼのせいじゃないからさ、な。だから頭を上げてくれ」

「……はい……」

 と肩を落とす。

「それにしても……」

 豪雨でまったく見えない窓の外を見つめる功助。小首を傾げるミュゼリア。

「おっちゃんの……じゃなかった陛下の言葉……」

「はい?」

「寂しい思いをするなら俺に嫌われた方がいいって……。なあミュゼ」

「はい」

「俺って女ごころがまったくわからない大バカもんだって改めてわかったよ。ほんと、俺って……」

 テーブルを見つめる。

「コースケ様……。姫様の……」

「たぶん。……俺って最低だ」

 と言って頭を抱える。そしてソファーから立ち上がった。

「コースケ様?」

「シオンのとこに行く」

「はい。御供いたします」


 廊下の角を曲がり、シオンベールの部屋のドアが見えたと思ったら勢いよくそのドアが開き、中から黄金の髪を振り乱してシオンベールがこちらに向かって走ってきた。

「姫様お待ちください!」

 その後ろからシオンベールを追いかける副侍女長ライラ。

「どいてください!」

 おそらく功助だと気づかなかったのだろうシオンベールは功助のすぐ横をすり抜け廊下を真っすぐ走っていった。

「お待ちください姫様ぁ!」

 ライラとともに衛兵もシオンベールを追いかける。こちらも功助たちには目もくれず猛スピードだ。

「な、なんだいったい?」

「さ、さあ。どうしますコースケ様」

「追いかける!」

 そういうとあとを追いかける功助とミュゼリア。

 そしてすぐにライラに追いつくと尋ねた。

「ライラ副侍女長!何があったんですか!?」

「あっ、コースケ様。な、なんでもありません」

「なんでもないことないでしょう!悲壮な顔でシオンが走って出て行った。これのどこがなんでもないんですか!」

 功助は少し声を荒げてライラに尋ねる。

「…うっ、……コースケ様……」

「俺、シオンの気持ちがわからなかった。なんで避けられてるのか……。シオンは俺に嫌われたかったみたいだって気づいた。俺は今シオンを助けたい。何があったんですかライラ副侍女長!」

 ライラと並走する功助はため息をつく。

「……コースケ様……、わかりました。お話いたします。しかしその前に姫様をどうかお止めいただけませんか」

「了解!」

 功助は一気にスピードを上げるとシオンベールに追いついた。

「シオン!止まれ!話を聞くから止まれ!」

 急に近づいてきた功助に驚くシオンベール。

「な、なぜコースケ様が…?!……いえ!止まれません!一刻を争いますので失礼します!」

 そう言ったところで玄関ホールから横殴りの豪雨が降り続く外に飛び出した。

 するとシオンベールはその身体を白く輝かせると走りながら竜化した。

「待て!危険だシオン!」

 黄金の竜と化したシオンベールはその翼を広げると強風荒れ狂う空に舞い上がる。だが凄まじく吹く風に地面に叩きつけられた。

「ピギャァッ!」

 風に押されゴロゴロ転がると城の壁に当たり止まった。そして白く輝いたかと思えば元の人の姿に戻るシオンベール。

「う、うぅ……」

「大丈夫かシオン!」

 駆け寄る功助。

「う、うぅっ、こ、こんなところで倒れてる場合じゃないのに……」

 手を着きゆっくりと身体を起こすが腕に力が入らず再び地面に伏した。

「シオン!」

 功助はシオンベールの横にしゃがむとその華奢な身体を抱き起こした。

「コ、コースケ様……。私…、行かないと……あの子たちが……。洪水で……流れて……、早く……、誰もいなくて……」

「しっかりしろシオン」

 シオンベールのプラチナブロンドの髪は雨と泥にまみれ顔や首にまとわりついていた。

「コースケ様、わたくしが説明いたします。姫様は……」

「ライラ副侍女長……」

 ライラの言うにはこの嵐で城下の西にあるアール河が氾濫し、以前慰問に訪れた孤児院と養老院が激流に呑み込まれたのだという。

 しかし頼りの騎士や兵士たちは他の地区での救助に行っておりそちらまで手が回らないとの連絡があった。

 ライラはその情報をシオンベールに話してしまった。そしてそれを聞いたシオンベールは自分がなんとかしなければと部屋を飛び出したのだと言う。

「シオン……」

「子供たちが……、ご老人たちが……。私、今動けるのは私だけ。だから……、行かせてくださいコースケ様」

 功助の腕の中から抜け出そうとするシオンベール。

「コースケ様、離してください……」

 その黄金の瞳を見つめる功助。

「……シオン」

「……」

「俺も、俺にも手伝わせてくれないか」

「えっ……?!で、でもコースケ様は今夜大切な儀式が……」

「ああ。まだ大丈夫だ。今はまだ夕方だ。二十四時までにはまだまだ時間がある。だからシオン、俺にも手伝わせてくれ」

「……コースケ様……」

 とまどうシオンベール。

「姫様。どうかコースケ様とお二人で救助に行ってください」

 そう言ったのはライラだった。

「ライラ……」

 いつもは危険だからとか、姫様が行く必要は無いとか、とにかくシオンベールを危険に合わせたくないとライラはいつもそう思っている。そのライラが功助とともに救助に行って欲しいと言っている。

「……ライラ……。コースケ様!」

「なんだ」

「私と一緒に子供たちを助けに行っていただけますか!?」

「ああ、もちろんだ!」

 功助は打撲しているシオンベールを癒すとゆっくりと立ち上がらせた。

「しかし凄まじい雨だな。強いシャワーを浴びてるみたいだ」

 功助とシオンベール、そしてライラもミュゼリアもずぶ濡れだ。

「うまく風と雨を制御すれば大丈夫だ。行くぞシオン」

「はい」

 シオンベールは再び竜化した。そして功助は浮遊を使いシオンベールと視線を合わす。そして功助は二人の周囲に魔力を展開すると暴風と豪雨を受け流す。

 功助はシオンの鼻先を撫でるとその目を見る。

「シオン、行くぞ!」

「ピギャ!(はい)」

 頭の中にシオンベールの声が響いた。

「え?」

 驚く功助。これまで竜化したシオンベールの言葉がわからなかったのだが、なぜか今言葉がわかる。

「シオン?」

『はい』

「俺、竜化したシオンの言葉がわかるぞ」

『…そうなのですか?』

「ああ、そうだ」

『凄いですコースケ様『

 と喜ぶシオンベール。

「でも今はこんなことはどうでもいい。行くぞシオン。子供たちを助けに行くぞ!」

『はい』

 シオンベールは翼を大きく広げると暴風雨をものともせずに飛び立った。功助もシオンベールと並んで飛翔術で一緒に飛んだ。

 二人を見送るライラとミュゼリア。

「姫様、どうかご無事で。コースケ様姫様をどうかよろしくお願いいたします」

 胸の前で手を組み遠ざかる二人を見つめるライラ。

「さあミュゼリア、城の中にもどりますよ」

「ライラ副侍女長」

 と城の中に戻ろうとするライラに声をかけるミュゼリア。

「どうしたのですか?」

「……私も行きます!」

 そういうが早いがミュゼリアは竜化すると功助と同じように魔力を展開すると翼を拡げ飛び立った。

「ミュゼリア!お待ちなさいミュゼリア!」

 だがライラの声は暴風雨に阻まれミュゼリアには届かない。

「ほんとにもう。あの娘ときたら………。二人の、姫様とコースケ様の役に立つのですよミュゼリア」

 ライラは大きくため息をつくと城の中に戻って行った。


 明日もまた一話投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ