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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第6章 何故
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08 行方不明

 08 行方不明


 ・・・67日目。・・・


「えっ!ミュゼが行方不明…?」

 功助がバスティーアの報告に目を見開いた。

 朝、いつもの時間になっても訪れないミュゼリアを心配し廊下に出た功助。そこに偶然にも通りかかったバスティーアにミュゼリアがまだ来ないことをいい部屋を見てきてもらった。

 だが部屋の鍵はかかったままでいくらノックをしても中からの返事がない。そこで侍女長のミーシェスカ・グランスを呼びマスターキーで鍵を開けて入ったところ部屋の中には誰もいなかった。

 部屋の中はとてもきれいにしてあり塵一つおちてなかった。風呂場も綺麗に掃除してあり洗面台にも髪の毛一本落ちてなかった。

 寝室に入るとベッドの上の掛け布団が中に人がいるようにふくらんでいた。が、部屋の主のミュゼリアの姿はなかった。

 バスティーアは不信に思い侍女たちを集めミュゼリアを捜させた。だがミュゼリアは見つからなかった。

「はい。どこに行ったのか……。それとも誰かに……」

「……ミュゼ…」

 つらそうに眉間を寄せるバスティーア。

 そこに廊下からドタドタ走る音が聞こえてきた。そして功助の部屋のドアを乱暴に開けるとドカドカと青い鎧が入ってきた。

「コースケ!ミュゼリアが行方不明と聞いたのだが真か!」

「ベルクリット団長。はい、そうなんです。朝なかなかミュゼが来ないから心配してバスティーアさんに見てきてもらったんですが部屋はもぬけの殻で」

「……っ!どこに、どこに行ったんだコースケ!ミュゼリアは、ミュゼリアは今どこに!」

 ベルクリットは功助の両肩を持つと悲壮な顔を近づけてきた。

「ベ、ベルクリットさん。落ち着いて、落ち着いて!」

「これが落ち着いていられるか!コースケ!」

 とそれを見たバスティーアがベルクリットの肩を優しくたたいた。

「ベルクリット団長。今使用人及び緑の騎士団を動員し捜索しております。今しばらく落ち着いてお待ちください」

「う…、あ、ああ。すまんコースケ。ミュゼリアが行方不明と聞いて…、すまん」

 ベルクリットは両手を除けると功助に頭を下げた。

「い、いえ。俺も同じ気持ちですよベルクリットさん」

「バスティーア殿。何かあればすぐに連絡をくれ。頼む」

「はい。承知いたしましたベルクリット団長」

 ベルクリットは俺も心当たりをさがしてくると功助の部屋を出て行った。

 そしてベルクリットと入れ替わるようにハンスが入ってきた。

「コースケ」

「ハンスさん。……、ミュゼが…」

「ああ。どこ行ったんだろうなあのバカは……。はぁ…」

 功助の部屋の窓から見える曇り空を見上げるハンス。妹を心配する兄は小さく息を吐いた。

 そうしていると再び部屋のドアをノックする音がした。

「ダーリン」

「コースケ隊長」

 魔法師隊の隊長と副隊長が入ってきた。

「シャリーナさん、ラナーシア副隊長」

「ミュゼちゃんが行方知れずだって?」

「はい。いつも朝早くから来てくれるんですが今日はこなくて。バスティーアさんに頼んで部屋も見にいってもらったんですがいませんでした」

「そう……。ねえバスティーアさん」

「はい。シャリーナ隊長」

「あのさ、ミュゼちゃんの部屋だけど、現状維持してる?」

「はい。私とミーシェスカ侍女長と二人で入りましたがその後は誰一人入室はありません」

「そう。それならよかった。ねえダーリン、ミュゼちゃんの部屋に行くわよ」

「え?」

「’え?’じゃないわよ。初動捜査は早くしないと。現場検証するのよあたしたちで。わかった?わかったらちゃっちゃと動く!ほら早く行くわよ」

「あ、はい。あっ、待ってくださいよシャリーナさん!」

 早くしなさいと言いながらシャリーナは部屋を飛び出すと廊下をタタタと走ってミュゼリアの部屋に向かった。

 その後を追いかける功助。そして功助に続いてハンスとラナーシアも走って追いかけた。


 ドアを開け部屋に入った功助たちは慎重に部屋を見渡す。だが見た目変わったところはない。

 ミュゼリアの部屋にはバスティーアとミーシェスカの二人しか入っておらずほぼそのままの状態だった。

「うーん…」

 何かを考えているシャリーナ。

「どうしたんですかシャリーナさん。中に入らないんですか?」

 一歩だけ部屋に入ったシャリーナはキョロキョロとするだけでそれ以上中に入らない。

「ねえダーリン」

「はい?」

 なーんか変な感じがするのよねえこの部屋」

「変な感じ?」

 そう。ねえダーリン。魔力の感知はあたしよりダーリンの方がすごいからこの部屋の中をよーく感じてみてくれない?なーんかひっかかるのよねえ」

 とふかふかのカーペットを見つめるシャリーナ。

「へ?はい、わかりました」

 そういうと功助はシャリーナの横に立って神経を研ぎ澄ませる。

 どんな小さな違和感も捉えられるよう集中する。

「ん?これは……」

「何かわかったのダーリン。

「んー、ちょっと待ってくださいね」

 功助はそう言うとゆっくりと本棚に向かっていく。それを黙ってみているシャリーナたち。

 本棚の横に立つとそこでしゃがみカーペットの上をミュゼリアの寝室の方に向かい視線を動かした。

「うん。ここに違和感を感じる」

 そう呟くと三人を手招きする。

「どう?ダーリン」

 ここ、ここに微かに魔力を感じます。寝室の方に向かって一直線にその魔力が続いてる」

 功助は寝室のドアと本棚の前を視線で結ぶ。

「そう。で、この本棚には?」

「えと、周りは何も感じませんが…」

 と上を見る。

「よし」

 功助は自分の周囲に薄く風を纏うとゆっくりと身体を浮かせた。

 そして本棚の天板の上を確認する。

「あっ!これは……」

 本棚の上に薄っすらと積もっている埃、だが何本かの線がその上にあった。

「これはこの上を何かが通った跡だな。うーん…」

 呟くと下から声をかけられた。

「ダーリン、なんかあった?」

「あ、はい。本棚の天板の上の埃に何本かの細い筋がありました。たぶん何かが転がった……、そうだ、これ、何か小さなボールみたいなのが転がった跡だ。たぶんそうだ」

「小さなボールが転がった跡?」

 ハンスが不思議そうに功助を見上げる。

「なんなのでしょう?」

 ラナーシアも宙に浮いている功助を見て首を傾げた。


 カーペットに降りた功助はそのまま寝室に向かう。何かが通った跡をなるべく踏まないようドアの前に来るとゆっくりとドアを開けた。

「ダーリン、まだ入らないでね」

「あ、はい。わかってます」

 ドアを全開にし中を診る。

 ベッドの掛け布団はこんもりとしていて中に誰かがいるように見えるが、ただふくらんでいるだけで中にいるはずの部屋の主の姿はない。

「あれどう思う?」

「そうですね。あれじゃまるで寝ていたミュゼだけをテレポートさせて連れて行ったようにみえます」

「そうよね。お布団から引きずり出したりしてないわよね、これじゃ」

 そして寝室を見渡す功助とシャリーナ。

「どう?」

「はい。本棚から転がってきた’何か’はどういう魔法を使ったのか寝室のドアを開けてこの部屋に侵入。そしてそこで留まった」

 寝室に入りほんの一メートルほどのところでその’何か’の痕跡も消えている。

「それと」

 功助は寝室をもう一度見渡す。

「この部屋にほんの少し、集中しなけりゃわからない程度の魔力の残滓があります。そうとう集中しないとわからないですよシャリーナさん」

 目を瞑り感じようとしたシャリーナに功助がそう付け加える。

「あらそう。ま、今ちょっと集中してみたけどあたしにはわからなかったわ。やっぱりすごいわねダーリンは」

 とうれしそうに功助を見上げた。

「ま、まあ。でもわかったのはそれだけですけど……。ん?」

 功助が寝室の南側にある窓に何か違和感を持った。

「なんだろこれ」

 窓のガラスに何かが付いているのに気づいた。

 ガラスは貴重で窓にはめ込まれているのは珍しい。だが、国王家族の部屋やその家族が使う食堂や談話室に、そして魔法師隊や青の騎士団の管理職の部屋にも窓にガラスがはめ込まれている。当然功助の部屋の窓にもガラスがはめ込まれている。

 ミュゼリアの寝室の窓にもガラスがはめ込まれている。その透明なガラスに何か黒いものが付いている。

「汚れ?いや、綺麗好きで真面目なミュゼが窓ガラスの汚れをそのままにしておくなんて考えられない……。ということはこの黒い汚れは……」

 窓に近づき顔を寄せた。

「あっ、この汚れから魔力を感じる。これだとシャリーナさんもわかりますよ」

「どれどれ」

 功助の横から顔を近づける。

「おっ、ほんとだ。感じるわね魔力。ラナーシア、あんたも見てみて」

「はい。ああ、わかります。でもこの魔力、どこかで感じたことがあるような……」

 じっとその黒い汚れを見つめるラナーシア。

「感じたことがあるって?」

 もう一度シャリーナはその黒い汚れに顔を寄せる。

「……あ、ああっ!」

「わっ!びっくりした」

 とラナーシアが急に大きな声を出したシャリーナから離れた。

「驚いてる場合じゃないわよラナーシア。わかったわよこれの正体」

 とその黒いものを指さす。

「これ、あの黒い目玉よ。その残滓」

 それを聞いて功助とラナーシアが声をあげる。

「「あっ!」」

 もう一度その黒い残滓を見る二人。

「そうだそうだ。あの林の空間の裂け目から出てきたあの黒い靄のような目玉だ」

「はい。そうですよ。不気味な黒い靄の目玉……。もしかしてあの目玉が転がってきてミュゼリアを誘拐したのでしょうか?」

「ううん、それはちょっと違うかも。第一あんな大きい目玉が転がって細い魔力の跡はできないでしょ」

 シャリーナの言葉にそうですねと頷くラナーシア。

「なあ、こうは考えられんか?」

 ハンスが窓際の三人に問いかける。

「あの黒い靄のような目玉の小さいのがこの部屋に潜んでたとか。そいつがミュゼリアをなんらかの方法で連れ去った」

「うーん、そう考えられるわよね」

 ハンスの意見にシャリーナも功助、ラナーシアも頷く。

 今度功助は窓自体を調べ始めた。

「あの…、シャリーナさん、聞きたいことがあるんですけど」

「なあに?」

 この世界には物質を通り抜けることができる魔法ってありますか?」

「何よ唐突に。…ってもしかしてこの窓を?」

「はい。そう考えられるんです。このガラス自体に俺が集中しないとわからないほどの魔力の残滓が含まれているみたいなんです」

「そうなの……。そうそう、物質を通り抜ける魔法ねえ……。うーん、うーん……。あっ!あったあった。でもあたしたちじゃ使えない魔法だったわよそれ。……そう、魔族にしか使えない魔法があったわ」

 その窓ガラスを睨むシャリーナ。

「やっぱりありましたか。魔族が……。ということはミュゼを連れ去ったのは、魔族」

 功助も窓ガラスを睨む。

「く、くそっ!ミュゼリアを、ミュゼリアをどうするつもりだっ!くそっ!」

 ハンスが怒りをあらわにする。

「ハンス副隊長、落ち着いてください」

 とラナーシアがハンスの背中をやさしく摩る。

「あ、うん、すまん」

 ハンスはありがとうと言うと窓ガラスを睨んだ。

「魔族か…。魔族の魔力の残滓を見つけるのはあたしじゃ難しいわね。…ということでねえダーリン、他にはなんか感じない?」

 そうですねと功助は部屋をゆっくりと見渡す。

「いえ、特におかしく感じるところもないです」

 そう言って窓の外を見る。

「あの、窓、開けますね」

 功助は寝室の窓を開け外に意識を向ける。

 外をうかがうが特に何もない。功助は少し首を右に向ける。その向こうにはあのマピツ山が見えた。

「あっ、ああっ!!」

「どうしたのダーリン?」

「コースケ隊長?」

「どうしたコースケ」

「あ、あれ、あれ、あれ!」

「あれって、マピツ山?あれがどうしたの?」

「はい、マピツ山の方からミュゼの、ミュゼの魔力を微かに感じます!」

「えっ!」

「なんと!」

「何?!本当か!」

 シャリーナ、ラナーシアに続きハンスも窓から首を出しマピツ山に意識を向ける。

「うーん。わからないわねえ」

 とがっかりする。

「私も感じません」

 とラナーシア。

「んー、わからん。俺にもわからん。でも確かなのだろうコースケ」

「はい」

 そう返事をすると眉間を寄せる。

「ミュゼはあそこにいます、マピツ山に!」

 功助は南にある小高い山、マピツ山を指さした。


「ねえハンス副団長」

「なんだシャリーナ隊長」

「あのさ、まずはマピツ山に斥候を向かわせるのがいいと思うの。いきなり向かうのは愚策だと思うからさ」

「そうだな。わかった。斥候か、それならやっぱりあの三人組だな」

「あのって、もしかしてあの超三人組ですか?」

 と功助。

「そうだ。あいつらちょっと変な奴らだけど腕だけはいいからな。こんな仕事にはもってこいの三人だ」

「そうですか。それとハンスさん」

「なんだ?」

「白竜城の中を一斉に調査した方がいいと思うんですけど。あの黒い目玉がまだ潜んでるかもしれませんし

「ふむ。そうだな。さっきの話じゃけっこう小さな球のようだし大勢で捜す方がいいな、うん。それじゃ青の騎士団と緑の騎士団、あとは侍女たちにも参加してもらおう。男が捜査しにくいところもあるしな。……ん?…そうか、そんなところは魔法師隊にしてもらえればいいか。なあ、魔法師隊も捜査に加わってくれるか?」

「了解、もちろんよ。ねえラナーシア、魔法師隊のことよろしくね」

「はい。了解しました。見習いにも捜査させます」

「うん。そうしてちょうだい。特に本棚とか食器棚の上のような高いところを入念にね」

 とシャリーナ。

「それじゃ俺はこのことをベルクに、ベルクリット団長に知らせてくる」

 そういうとハンスは部屋を出て行った。

「さあ、あたしたちは諜報部の三人組が戻ってくるまで城内の目玉の捜索を開始しましょう。ラナーシア、魔法師隊に連絡!」

「はい。了解しました」

 ラナーシアは敬礼すると部屋を飛び出していった。

「さあダーリン。あたしたちも行くわよ」

「わかりました」

 功助とシャリーナもミュゼリアの部屋を飛び出していった。

 それから間もなく超三人組はあの円盤に乗り秘密裏にマピツ山に向かった。

 そして青の騎士団をはじめ緑の騎士と魔法師隊そして侍女たちとともに黒い目玉の捜索が開始された。


「いないね目ん玉」

「そうね、そっちはどうフランサ」

「こっちも同じじゃ。転がった跡さえ見当たらんぞ」

「こっちも見当たりませんわ。ほんとにいるのでしょうか?」

 見習い魔法師のイリス、モーザ、フランサ、メリアは今使用人の休憩室を捜索している。食器棚の上、簡易キッチンの下、壁際の棚の上や窓の上の絵画の裏など小さな目玉が潜り込めそうなところをあてもなく捜している。

「文句言っちゃダメだよメリア。ラナーシア副隊長の命令なんだししゃ」

「そうですね。ふふふ。まさかイリスに注意されるとは思いませんでしたわ」

「そうじゃの。珍しいこともあるもんじゃ」

 笑うメリアとフランサ。

「私だって注意することぐらいあるんだかりゃ」

「そうよね、たま~にね」

 とモーザが苦笑する。

「あはは、ま、そうだけどしゃ。そんなことより目ん玉捜そうよ」

 元気なイリスに三人はそうねとまた黒い目玉の捜索を続ける。



「どうぞお入りくださいコースケ様」

「うん、失礼します」

 シオンベールの部屋は白を基調としていて落ち着いた雰囲気の部屋だ。壁の棚には女の子らしく美しい人形や動物を模した彫刻が並んでいる。

「さてと。悪いけど調べさせてもらうねシオン」

 功助がシオンベールの部屋に来たのはなにもシオンベールに合うためではない。あの黒い靄のような目玉を捜索するためだ。

「はい。お願いいたします」

 と少し不安そうなシオンベール。

「あのコースケ様。その黒い目玉が潜んでいるのかもと言うのは真でございますか?」

 シオンベールの後ろで控えていたライラ副侍女長が心配そうに尋ねた。

「わかりません。いるのかどうかはわかりませんがこの白竜城に最低でも昨夜から今朝にかけて潜んでいたのは確かです。その痕跡があるかもしれないし、もしかしたらそのものがあるかもしれません」

 功助がそう答えると少し顔を青くするシオンベールとライラ副侍女長。

「さて。それじゃまず最初に一番怪しいところを調べるか」

 功助はそういうと部屋の隅にある立派な彫刻されている本棚に近づいた。

 功助は自分の周りに風を集めるとそのままふわりと浮かんだ。

「コースケ様、かなり器用に風を操ることができるようになったのですね」

 風魔法で浮かんだ功助を見てシオンベールはうれしそうだ。

「はは、まあな」

 少し照れながらそう言うと功助は本棚の天板を覗き込んだ。

「くそっ。ここにもいたのか」

 本棚の上には何本もの細い筋が走っていた。

 床に降り立った功助。今度はふかふかの絨毯の上に意識を向ける。

「うーん。気配はないか……。本棚の上の細い筋は昨日今日の痕跡じゃないみたいだし、カーペットにも痕跡はないし」

 そう言うと、今度は部屋の中に意識を向けて集中した。

「うーん。気配も魔力も感じない。シオン」

「はい」

「残念ながらこの部屋にいたようだ。でも機能今日じゃなく何日も前のことみたいだ。魔力の残滓が薄くなりすぎてるから。それともうこの部屋にはいないから安心してくれ」

 それを聞いてホッとするシオンベールとライラ。

「コースケ様。ミュゼリアは、ミュゼリアは大丈夫なのでしょうか?私心配で……」

「あ、うん。俺も心配だ。でも今あの諜報部が調べにいってるから、帰ってきたらすぐミュゼを助けにいく。安心してくれ、どんなことがあっても必ず助ける」

「はい」

 功助の目を見て安堵するシオンベール。

「それじゃ次、会食の食堂に行こうか」

「はい」

 功助はシオンベールを連れていつも国王と会食をする部屋に向かった。


「くそっくそっくそっ!ミュゼリアに何かあってみろ、俺が地獄より恐ろしい目に合わせてやる!」

 青の騎士団控室で団長のベルクリットは怒りの様相で部屋の中をうろうろしていた。

「おい、落ち着けベルク」

「これが落ち着いていられるかっ!」

 ボゴッ!

 ゴミ箱を蹴飛ばし怒りを露わにする。

「ふう。なあ、今お前があせっても仕方ないんだぞ。諜報部が戻るまで落ち着いて待てベルク」

「わ、わかってる!だが、だがな……、うっ………」

 怒りの目をハンスに向けたベルクリットだがそのハンスの目が自分のそれより恐ろしいのに気づいた。

「ハンス……。あ、ああ、悪かった。青の騎士団団長の俺が冷静にならんとな」

「わかってくれればいい。落ち着いて報告を待とう」

「ああ」

 ベルクリットは椅子に腰かけると残っていた事務作業を再開した。


「もうこんな時間か…」

 ミーシェスカ・グランス侍女長とともにルルサ王妃の自室を調べていた功助は壁に掛かった立派な装飾の時計を見た。

「はい。もう五時ですねコースケ様。本日はそろそろ終了にいたしましょうか?」

「そうですねミーシェスカ侍女長。それじゃ最後にこの部屋の魔力の残滓を調べます」

 功助は意識を集中し部屋の中のあの黒い目玉の魔力の残滓を調べた。

「王妃様。ご安心ください。魔力の残滓はありません」

「そう、よかったわ。でも、ミュゼリアさんのこと心配だわ。無事でいてくれたら…。あ、ううん、きっと無事よ。そう、コーちゃんやベルクリット団長が助けに来るのを待っているわ。コーちゃん」

「はい」

「必ずミュゼリアさんを助けてあげて!お願いね」

 そういうとルルサ王妃は功助の両手を握った。

「はい。必ず助けます」

 功助は大きく頷くのだった。



 青の騎士団控室。

 主要な責任者全員が座ると同時にシャリーナ魔法師隊隊長がいつもと違い真剣に質問した。

「諜報部からの連絡はあったの?」

「定期連絡はあった。が、何か超高度の隠蔽の魔法がかかっているようでなかなか侵入できないようだ」

「ということは、マピツ山に何かがあるのは確かのようね」

「そうだな」

 大きく頷くベルクリット。

「あと、城内の黒い目玉の発見報告はなかった。だが明日以降も捜索を続ける。いいな」

「だが侵入してたのは確かのようだ」

 とハンス副団長が続く。

「シオンベール王女様の自室、ミュゼリア・デルフレックの部屋、そして食糧庫の扉前の絵画の額の上、武器庫の前にある見張り番のテーブルの下。それから各騎士団の控室の棚の上。その他トイレや風呂、掃除箱の仲にも痕跡があった」

「おそらく偵察してたんでしょうね。でかい目玉は全部壊したから。たぶんあの時でかいのにまぎれて侵入したんじゃないかしらね」

 と神妙なシャリーナ。

「とりあえずはあの黒い目玉の捜索と、……マピツ山からの連絡を待つこととなる」

 ハンスは眉間を寄せて宙を睨んだ。

 そして細々したことを報告し会議は終了した。


 読んでいただきありがとうございます。

 第6章終わりです。

次週は第7章を投稿します。

よろしくお願いします。


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