06 シオンと真依
06 シオンと真依
「そうですか。妹気味のマイ様とお話できたのですか……」
スマホで元の世界の妹と話をしたことを言うとなぜかシオンベールは少しさみしそうな目をして俯いた。
「どうしたシオン?」
「あ、いえ。なんでもありません」
とシオンベール。
「それと、真依がシオンと話したいって言ってるんだけど、大丈夫か?」
「マイ様が私とですか?はい。かまいません。ぜひお話したいです」
少しうれしそうに微笑んだ。
「無茶なお願いして悪いな」
「いえ、とんでもありません」
「ありがとうシオン。それでこれからまた電話するから一緒に俺の部屋にきてほしいんだけどいいかな?」
「はい。問題ありません。コースケ様のお部屋に参ります。でも、コースケ様のご両親様ともお話をすることになるのですよね」
「あ、うん。たぶんそうなると思う」
それを聞いたシオンベールは一瞬目を伏せたが無理やり元気な声を出した。
「わかりました、私、頑張ります。さ、参りましょうコースケ様。ライラ行きますよ」
「はい、姫様」
ライラはお辞儀をすると悲し気にシオンベールを見た。
「それじゃ、よろしく」
功助は気づくこともなくシオンベールとともに自室に向かった。
部屋に入るとシャリーナとラナーシアがソファーに座りミュゼリアがお茶を出していた。そして壁際にはバスティーアが微動だにせず立っていた。
「みんなありがとう」
そう言うと功助はあまり使ってなかった大きな机の前に立った。
「失礼いたします」
続いて入ってきたシオンベールは功助の横に立った。
「それじゃ妹の真依に電話をかけます」
そう言ってスマホを捜査した。
トゥルル……。
『はい!お兄ちゃん。ちゃんとかけてきてくれたんだね』
一回の発信音が鳴り終る前に電話を受けた真依はうれしそうに応答した。
「ああ。ちゃんとつながったな」
それから功助はこの場にいる者を順番に紹介した。
「それじゃ最後。今いる中じゃ最後の紹介だ。俺がこちらの世界に来て一番最初に出会った女性。ここ竜帝国の王女シオンベール・ティー・アスタット姫だ」
スマホをシオンベールに向ける功助。
「はじめましてマイ様。父は竜帝国国王トパークス・ティー・アスタット、母は竜帝国王妃ルルサ・ティー・アスタット。その娘シオンベール・ティー・アスタットと申します。コースケ様にはわたくしの人竜球が破壊された後ご自分の命を懸けてわたくしを救っていただきました。わたくしの命の恩人でございます」
『うわっうわっ、本物のお姫様や!なんて綺麗な金色の目と髪。うっわああ、とても素敵!めっちゃテンションあがるやんかもう!』
「おい真依、興奮しすぎ。王女様にちょっと失礼だな。お前オヤジになってるぞ。ちゃんと挨拶しろよ」
『あっ、ごめんお兄ちゃん。えーと、コホン。シオンベール王女様。兄の功助が大変お世話になっております。あたし、じゃなかった私、功助の妹の真依と申します』
「いえいえ、良いのですよ。マイ様、お気になさらず」
そう言ったシオンベールの微笑みに真依のテンションがまたまた上がった。
『いやあ、綺麗なお姫様にそう言ってもらえるとなんかうれしいです』
「ふふふ。マイ様もとてもお美しいですよ」
「美しいだなんて、ありがとうございます王女様」
と少し照れる真依。
「あの、マイ様、それから、コースケ様はいつもお元気で過ごされています。ご安心ください」
『そうですか。そりゃこんなきれいな人たちと一緒だと元気にもなりますよ。ねえお兄ちゃん』
「おい、真依。変なこというなよぉ」
功助は苦笑する。
「でも正解よマイちゃーん!」
その時シャリーナがシオンベールの横からニュウっと顔を出した。
『ですよねえ。隊長さんもとてもチャー民具だし、ナイスバディだし。よかったねえお兄ちゃん』
「おいおい」
ますます苦笑する功助。
「チャーミングだってぇ。うふふ」
真依の言葉を聞いて喜ぶシャリーナ。
『でもお兄ちゃん』
「なんだ?」
『とてもいい人ばかりみたいだね。よかったね。楽しいでしょ?』
「あ、うん。とても楽しいよ」
と功助はちょっと照れくさそうだ。
『それで、誰といい仲なの?いるんでしょこの中にさ。ねえねえお兄ちゃんってば』
真依はニヤニヤしながら功助を見ている。そして功助の横で少し頬を紅くするシオンベールをチラッと見た。
「な、名にを言い出すんだお前は。い、いい仲ってなあ。そんな……」
『いいじゃない、教えてよお兄ちゃん。ミュゼリアさん?…はないか結婚決まってるんだもんね。それじゃ真っ赤な髪のラナーシアさん?ピシッとしてて素敵よねえ。それともシャリーナ隊長さん?お兄ちゃん好みの爆乳だもんねえ。それともそれとも……』
そう言いながら真依は功助の横で少し俯き床を見つめているシオンベールをチラット見た。
「お、おい真依。そんなことよりだな、えと、あっ、そうそう親父たちはどうした親父たちは?もう帰ってきてるんじゃないのか?なあ真依」
『あっ、はぐらかすんだ。まあいいけどさ。えーと、父さんたちはもうそろそろ帰ってくると思うよ。でもさ、メールに添付してくれた写メもムービーも転送したんだけどさ、全然信じてくれないのよ。それどころか、特撮の仕事をしているんじゃないかってさ。本物だって言ってるのに全然聞いてくれないのよ』
「はは。仕方ないよ。手放しで信じろって言っても無理だろうな。それより真依は信じてくれたんだよな?」
『うん。これだけいろいろなもの見せられて信じないわけにはいかないよ。でもお兄ちゃん、いつ帰って来られるの?』
「あ、うん。いつになるかは……」
「それについてご説明いたします」
何かを言いかけた功助に被せるようにシオンベールが口を挟む。
「シ、シオン……」
「あのマイ様。コースケ様はもうすぐ元の世界に、マイ様のおられる元の世界にお戻りになられます。なぜならばわたくしがコースケ様のご帰還をお手伝いさせていただくからです。ご安心くださいマイ様。あと数日でコースケ様は…、コースケ様は……。こちらの世界からお戻りになられます」
そう一気に言うと数歩後退り顔を伏せ床を見つめた。
「シ、シオン。何を…」
何かを言おうとする功助、しかし真依の言葉がそれを遮った。
『そうなんだ。王女様が手伝ってくれるんだ』
ディスプレイに映る功助のその後ろ、壁際まで下がったシオンベールが俯き床を見つめているのが見えた。そしてその細い肩をライラが優しく抱き耳元で何かささやいているようだった。
「ねえお兄ちゃん。よかったね優しい人ばかりで。お兄ちゃんとても楽しそうだし。ちょっとうらやましいかも』
「あ、うん。みんな優しくてとてもいい人たちばかりだよ。出会えてよかったと思ってる。本当に出会えてよかったよ」
その言葉を少し離れたところで聞いていたシオンベール。
「…コースケ様…」
誰にも聞こえないような小さな声でそう言うとうれしそうに功助を見て、そして目を潤ませていた。
『功助ぇぇぇぇぇ!』
『ちょっとあなた!私の前をチョロチョロしないでどいてちょうだい!』
『な、なにを言う!邪魔なんは友紀や!』
『うっさいわね!功助が待ってるのよ!』
『わかっとるわい!』
男女の言い争う声がスマホから聞こえてきた。
『あはは。お兄ちゃん、帰ってきたみたい。ドタドタとうるさいな』
苦笑する真依。
『ちょっと呼んでくるね。それまでもう一人の可愛いヤツを見てて』
真依はそう言うと自分のスマホを床の上に立てたのだった。
すると画面にはちぎれんばかりにシッポを振るもう一匹の家族がいた。
ワンワンワン!ウゥーー、ワン!
「あっ、ディー!ディー!だな。おーいディー!」
スマホにはワンワン吠える短足胴長のディーがとてもうれしそうにシッポを振っている。
「ディー!こっちだぞディー!」
ワンワンワン!
気づいたようでディーも嬉しそうにシッポを振っている。
「キャー!可愛い!」
女性陣からスマホに映った功助の飼い犬ディーの愛らしさに黄色い声があがった。
「コースケ様。このワンちゃんがディーくんなのですか?」
とスマホを食い入るように見るミュゼリア。
「そうだよ。ディーだよ。ほんと懐かしいな。ディー!俺のことがわかるか?」
わんわん!ウー、わん!
とその時ミュゼリアがはてと首を傾げた。
「あのコースケ様。なんかディーくんですけど」
「ん?なんだミュゼ。ディーがどうしたって?」
「あ、はい。なぜか私には’どこ行ってたんだ功助兄’って言ってるように聞こえるんですが…」
「へ?なんだそれ?」
とポカンとミュゼリアを見る。
「あ、はい……あっ」
わんわんわわん!
「あの、今度は’散歩連れてってよ’と言ってるように聞こえるんですが……」
と困惑のミュゼリア。
「へ?」
そう言うとわんわん吠えているディーとミュゼリアを交互に見つめた。
「あっ、また’おやつもちょうだい’って。あのコースケ様」
「もしかしてそれってディーの言葉がわかるってことかミュゼ」
「あ、あの…、たぶん…」
少しおろおろするミュゼリア。
功助はシャリーナたちを見つめるが全員無言で首を傾げたり横に振ったりしていた。
「あ、あの……。もしかして私にだけそう聞こえるのでしょうか……?」
少しおどおどするも功助の言葉に少し驚いた。
「よっしゃ!いいぞミュゼ!ディーと話ができそうだ。ありがとうミュゼ!」
功助はそう言うとミュゼリアの両手をギュッと握るとうれしそうに笑った。
「は、はあ。いえ、コースケ様に喜んでもらえたならうれしいです……。でも、なんで言葉がわかったんでしょう?」
と首を捻るミュゼリアだった。
『『功助!』』
ようやく功助の両親がスマホのおいてある部屋、つまり真依の部屋に入ってきた。
父の進は床でうれしそうにシッポを振ってワンワン吠えているディーの目の前にあったスマホを拾うと叫んだ。
『功助!お前何しとんじゃあ!』
急にどなられビクッとなる功助。
「わっ、びっくりした。父さん、そんなに大声出したら声がわれてるからよくわからないよ」
とスマホを見て苦笑する。
『あっ、そうか。こりゃすまん。って功助今までどうしてたんや!なんで連絡せえへんかったんや!』
「うん。真依には言ったんだけど」
『あ、そうやった。真依から聞いたで。でもなそんなん信じられるわけないやろが!』
『そうよ功助』
と母の友紀もディスプレイに移った。
「あっ、母さん。ごめん連絡できずに」
『ほんと心配かけるんだからあなたは。いったい何してたのよ!』
と母も激怒している。
「あ、うん、ごめん。真依から…」
『そうね。真依からは聞いたわ。でもね功助……。ってあなたの後ろにいるのは?』
「あっ、うん。この方はミュゼリア・デルフレックさん。こっちの世界で俺が世話になってる侍女だよ」
「あ、は、はじめまして。私コースケ様の専属侍女を拝命しておりますミュゼリア・デルフレックと申します。こうしてお目にかかれ大変うれしく思っております」
と頭を下げるミュゼリア。
『あらあら。ご丁寧にありがとうございます。そうですか、功助の専属侍女の、ミュ、ミュ…?』
「ミュゼリアだよ母さん。ミュゼって呼んでやってくれる」
『ミュゼちゃんね。はいはい。よろしくねミュゼちゃん』
「はい。よろしくお願いいたします奥様』
「あらやだ。奥様だなんてぇ。んもう功助ったらほんと手が早いんだからぁ』
「ちょっと母さん。違うって。ただの専属侍女だよ。でもとっても優秀なんだよ。それにミュゼは今度結婚することになったんだから」
『あらそうなの?おめでとうミュゼちゃん。あなたならきっと幸せになれるわよ』
「ありがとうございます奥様。はい、幸せになれればうれしいです」
『ううん。なれればじゃなくてあなたなら必ず幸せになれるわよ。あたしわかるわよ。あなたがどれだけ人のことを大切に思っているのかわね。あなたの笑顔を診ればわかるわよ。まあ、女の感のところもあるけどね』
「あ、ありがとうございます」
ミュゼリアはとてもうれしそうに功助の母の友紀に微笑んだ。
『おい友紀、俺にもその可愛い侍女さんと話をさせてくれぇ』
『あなた……。なんですって?』
『あ、いや。功助が世話になってるなら挨拶しとかなあかんやろ。な、な、功助』
「父さん、俺にふらないでくれよ」
苦笑する功助。と、スマホの向こうで両親が言い争いを始めてしまった。
「こりゃ収拾がつかないな。真依」
『なあにお兄ちゃん?』
「二人はほっとこうか」
『そうだね。まだ言い争ってるよ。ほんと困った親だわね』
「そうだな」
苦笑する兄妹。
『そうそうお兄ちゃん、さっきのお願い聞いてくれる?』
「さっきのお願い?なんだったっけ?」
『忘れたの?まあいいけど。あのさ、お兄ちゃんの後ろの方の壁の方にいる王女様と二人きりで話がしたいんだけど』
功助が振り向いた先には真依が言ったとおり壁の前でライラと並び下を向いているシオンベールがいた。
「あ、ああ、言ってたな。二人っきりでか?」
『そう。二人っきりで』
どうしたもんかとスマホの中の真依とシオンベールを交互に見る功助。
『いいでしょお兄ちゃん』
「……うん。でもシオンに聞いてみないと」
『ありがとお兄ちゃん。王女様呼んでくれる?』
「あ、うん。おーいシオン」
「あ、はいコースケ様」
急に名前を呼ばれてドキッとするシオンベール。
「あのさ、真依がさ、シオンと二人で話がしたいんだって。いいかな?」
「マイ様が私とですか?」
「うん。どうだろうか?」
少し考えるシオンベール。しかしためらっていたのはほんの少しの間だけだった。
「わかりました。お話させていただきます」
とシオンベールは功助の近くにやってきた。
「ありがとうシオン。真依」
「なに?」
「シオンが話するって。それじゃ場所を移動するよ」
『了解』
「コースケ様、場所を移るとは?」
「あ、うん。なんかさ真依がシオンと二人きりで話がしたいんだって。だからシオンには悪いけど別の部屋に行ってもらおうと思って」
「そうでしたか。それではどこに移動しましょうか?」
その一連の話を真横で聞いていたミュゼリア。
「あの、コースケ様。よければ私のお部屋でどうでしょうか?姫様がよければですが」
それが聞こえたライラ。
「ミュゼリア!なんてことを言うのですか!姫様を侍女の部屋になどお入りいただけるわけないでしょう!」
「あっ、申し訳ございません。出過ぎたマネをしてしまいました。どうかお許しください姫様」
ミュゼリアは顔を蒼くさせあわててシオンベールに謝罪し頭を深く下げた。
「んもう、ライラ!私がミュゼリアの部屋に入ることを嫌がるわけないでしょう!私とミュゼリアは戦友なのですよ!わかりました、私、ミュゼリアの部屋を借りることにします。いいですね!」
「でも姫様…」
「ミュゼリアの部屋を借ります!」
「は、はい。わかりました。ミュゼリア、きちんと掃除はしてあるんでしょうね?」
「あ、はい。お掃除は毎日してあります。はい、大丈夫です」
「わかりました。では姫様。ミュゼリアの部屋をお借りしてください」
「ありがとうライラ」
とライラとミュゼリアに微笑んだ。
「それではコースケ様。ミュゼリアの部屋をお借りしましょう。ミュゼリア」
「はい、姫様。どうぞこちらへ」
ミュゼリアはドアを開け自室に功助とシオンベールを案内した。
ミュゼリアの部屋に着くと功助はシオンベールをソファーに座らせた。そしてスマホの向こうの真依に話かけた。
「真依。それじゃ二人で話してくれ」
『わかった。ありがとうお兄ちゃん』
「シオン、それじゃこれを」
功助がソファーに座るシオンベールにスマホを手渡した。
「はい。ありがとうございますコースケ様」
「それじゃ俺は部屋に戻ってるから」
「わかりました。お話が終わればまたお部屋に戻ります」
その返事を聞いて功助はミュゼリアの部屋を出た。
廊下にはミュゼリアとライラが待っていた。
「二人はどうします?俺の部屋に戻りますか」
「私はここで姫様をお待ちします。ミュゼリアはコースケ様とともに戻ってなさい」
「あ、はい。それじゃこれお部屋の鍵です」
「わかりました。きちんとかけておきますので安心してください」
「はい」
そして功助とミュゼリアは部屋に戻って行った。
「あの、マイ様。なんのお話なのでしょうか?」
突然二人きりで話がしたいと言われたシオンベールはわけもわからずスマホの向こうの真依に尋ねた。
『うーん、その前に王女様って今いくつなんですか?』
「わたくしの歳ですか?わたくしは今十七歳ですが」
『そうなんだ、十七歳か。ねえ、十七歳だとそっちの世界では結婚とかどうなってるの?』
「結婚ですか?えーと、こちらの世界では十五歳が成人で、貴族などの淑女たちはだいたい十六歳か十七歳で輿入れいたします」
『そうなんだ。えーと、ちなみに王女様は輿入れはないんですか?』
「わたくしですか……?わたくしは一人娘なので婿をとることになると思います」
と言ったシオンベールに真依はほんの少し陰りが見えたような気がした。
『そうなんだ。あっ、そうそう、人に歳尋ねといて自分が言わないなんて失礼でした、すみません。私は今二十四歳になります。まあ、この年だとこっちでも嫁に行く人は多いですけど、けっこう晩婚も多いんですよ』
と苦笑する。
「それであのマイ様、わたくしと話がしたいとのことでしたが……」
『そうでしたね。なんて言うか、女として話がしたくて。あっ、そうそう、王女様、その’マイ様’って言うのはやめていただけますか?できれば真依ちゃんとか真依さんとか真依とか』
「はい?しかしコースケ様の妹君でもあるお方を、わたくしより年上のマイ様を気安く名前で呼ぶなどと…」
『いいからいいから。名前を呼んでくださいませんか?』
「でも……」
少し悩むシオンベールだがスマホに移る真依はニコリと微笑んでいる。それを見てシオンベールは自分も小さく微笑んだ。
「わかりました。ではマイさんと。ならばわたくしのこともシオンと敬称無しで呼んでいただけますか?」
『わかった。それじゃシオン、よろしくね』
「はい。よろしくお願いいたしますマイさん」
微笑む二人。
『それでさシオン』
「はい」
『兄とはどこまでいった?』
「はい?どこまでと言うと…」
『うーん。手は握ってもらった?ギュッて抱擁してもらった?それともチューした?』
「あわっ……」
思ってもみなかったことを言われ顔を赤くするシオンベール。それを見て真依はニヤリ。
『どうなのシオン』
「あ、あああ、あの……、手はににに握ってもらいました……。えと、抱擁も……。でもチチチチューって……、接……吻……は……」
首元まで真っ赤になるシオンベール。
『そっかそっかぁ。でもよかったね抱擁してもらったんだ』
「……マイさん…」
小さく真依を上目づかいで睨むが真依は涼しい顔。
『シオン。あなた兄貴のことどう思ってる?』
「えっ。コースケ様を……?」
『そう。あたしの兄貴の功助のことをどう思ってるのシオン』
しばし見つめ合う二人。
「……な、なぜ…そのようなことを聞くのですか…?」
少し寂しそうに真依を見る。
『うーん。シオンのさっきの様子がちょっと気になってね』
「さっきの私?」
』そう』
微笑み頷く真依。
『さっきさ、兄貴がみんな優しくていい人ばかりで出会えてよかったっていってたよね。その時にさ、シオン、兄貴の名前を呟いて目を潤ませてたから』
「…う……」
何も言えず画面の向こうの真依の真剣な顔を見つめるシオンベール。
『シオンさ、……兄貴はシオンのことどう思ってるのか知ってる?』
「…私の…ことを……?」
『うん』
「……」
真依から目をそらし自分の膝に視線を落とした。
『シオン』
自分の名を呼ぶ優し気な真依の声。
『兄貴はさ、自分の気持ちを偽ることがよくあってね。今までもそうだったんだ。女の子に気軽に声をかけるんだけどそこまでなんだ。可愛いねとか綺麗だねとか言うくせに、いざとなったら俺なんかが好きになったら相手が可哀そうだとか俺なんかを好きになってくれる人なんていないから、なんて言うのよ。ほんっと嫌な男でしょ。女としたらなんかさバカにされてるんじゃないかって思っちゃうもの。たぶんシオンにも言ってたんじゃない?シオン可愛いねとか、綺麗になったねとか。ほんっととっても臆病なのよね。腹立つよねほんと』
真依の話を聞いているシオンベールは少し苦笑している。まさに真依の言ったとおりのことを功助は自分に言ってたのだから。
『でもね、そんなこと言うくせに好きな子が大変な時とか助けがいる時とか、そんな時にはさ真っ先に駆けつけて助けてあげるんだ。自分が傷ついてもね。それを目の前で見せられたら女の子なんて惚れるわよね。それを男友達にもするから兄貴って友達がけっこう多いんだよ』
「そうなのですか。やはりコースケ様はとてもお優しいお方なのですね」
うれしそうなシオンベール。
『そうなのよねえ。シオンもそれにやられたね』
「あ、……はい」
また顔を赤くした。
『ふふふ。可愛いねシオンって』
「マイさん…」
『シオンの気持ち、よくわかったよ。兄貴がこっちの世界に戻ってくるのはもうちょっと後でいいからね』
「えっ、でも……」
『大丈夫大丈夫。あたしにまかせなさい。兄貴にも両親にもあたしが言ってあげるからさ』
「しかし……」
『いいからいいから。さ、シオン、さっきの部屋に戻ろう』
「えっ、もういいのですか?」
『いいよ。戻って兄貴に電話代わってくれるかなシオン』
「は、はあ。…わかりました。コースケ様のお部屋に戻ります」
シオンベールはソファーから立つとミュゼリアの部屋を出た。




