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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第6章 何故
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03 笑顔の二人

 03 笑顔の二人



「シャリーナさん!大丈夫ですかシャリーナさん!」

 功助はあわててシャリーナを介抱する。

「効くかどうかわからないけど」

 と言いながら掌から白い治癒の光をシャリーナに放った。

「…う、…ううっ…」

 ゆっくりと目を開くシャリーナ。

「気が付きましたか?」

「…ダーリン…。へ?な、名に?あたしどうしちゃったの?」

「えっ、あ、いえ。どうしたのか聞きたいのはこっちの方で…」

 と功助。

「シャリーナ隊長、大丈夫ですか?」

 ラナーシアもまだボーッとしてるシャリーナを覗き込んだ。

「スマホを見て失神されたようですよ」

 とミュゼリアが説明するとシャリーナは「あっ!」と言い両手で口を押えた。

「そそそそそうよそうよ!何よあのスマホ!あんなことができるだなんて!す、すごいわよダーリン!」

 とまた興奮し始めた。

「落ち着いてくださいねシャリーナさん。それと、すみません。驚かしすぎました」

 と謝罪する功助。

「あ、ううん。ダーリンが謝ることじゃないわよ。でも、そのスマホ利用価値は星の数ほどあるわね…」

 と功助の手の中にあるスマホを指さすシャリーナ。

「えっ、ま、まあ。そうかもしれません」

「しれませんじゃなくてそうなのよ。そのスマホがあれば…。うふふふふ」

 なぜか上目遣いで功助を見ると自分の唇を赤い舌でペロッと舐めた。

「あ…、あの…」

 功助が本能的な恐怖で上半身を後ろにそらせた。

「そう!そのスマホがあればあたしの動いてる姿を撮っていつまでもダーリンに見せてあげることができるのよ!あたしの!あたしのかわいい笑顔や、あたしの入浴シーンや、あたしのあんな姿やこんな姿!そしてあたしとダーリンが愛し合い合体した姿とかぁぁぁぁぁぁ!」

 絶叫するシャリーナ。

 ドバッコーーーーーーン!!

「この無限大エロ糞究極淫乱色欲最低女ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ラナーシアの超ド級回し下痢がショッキングピンク目のシャリーナを蹴り飛ばした。

「うぎゃああああああああああ!グボッ!バギャ!」

 勢いよく壁に飛んでいくシャリーナ。思いっきりぶつかると壁にめり込んだまま床に落ちて顔面を強打した。

「あが……、あががががが…、ひでぶー…」

 ぴくぴくと全身を引き攣らせるシャリーナ。

「ぜえぜえぜえ!ほんっとあなたという人は!」

 肩で息をするラナーシア。功助とミュゼリアは呆然とその後継を見つめ、リペアはその恐怖で失神していた。


「あ~ぁ、ひどい目に合った」

 首を左右にコキコキするとふうとため息をつくシャリーナ。

「自業自得です」

 じとっと横目で睨むラナーシア。

「ふんっ!」

 シャリーナはギロッと睨み返すと口を尖らせプイッと横を向いた。

「まあまあ」

 苦笑しながら功助が間に入ってなだめると二人同時にため息。

「……ダーリンが言うならもういいわよ」

「そうですね」

 そう言ってお茶を呑む魔法師隊隊長と副隊長。仲がいいのか悪いのかと功助は苦笑した。

「で、ミュゼ。リペアさんの様子はどうだ?」

「あ、はい。先ほどお目覚めになられまして、今お茶をお運びしたところです」

「そうか。またあとで呼んできてもらうと思うから」

「はい」

 ミュゼリアは元気に返事をした。

「ところでダーリン」

「なんですかシャリーナさん」

「さっきはあんなことを言ったけど、実際あのスマホって星の数ほどの使い方があるわよ。ほんと、はっきり言って恐ろしい道具だわ」

 テーブルの上に置いてあるスマホを指さして真剣な目を向けた。

「へ……。ま、まあそうかもしれません…」

 功助もスマホを見つめた。

「あのコースケ隊長」

「あ、はい。ラナーシア副隊長」

「そのスマホは他にはどのような使い方があるのですか?」

「そうですね…」

 功助はスマホを持った。

 ネットにもつながってなく当然圏外なので電話やメール、マップなどは使えない。使えるとしたらアラームやタイマー、さっきも撮った写真や動画、それに元の世界でダウンロードしてあった音楽やPCから取り込んだ音楽程度だ。

「そうですか。しかし写真と動画だけでも使えるのはとても素晴らしいです」

 とラナーシア。

「そうね。でも、その写真と動画だけでもこの世界じゃ国をゆるがすほどの機能なんだけどね」

 とシャリーナ。

「……それはどういう……?」

 功助が首をひねるとシャリーナは苦笑して説明を始めた。

「例えばどこかに行って地図を作るとするでしょ。たいていは空を飛べる竜族や有翼人が空から見てそれを羊皮紙なんかに描くのよね。これがけっこう時間がかかるしめんどいのよね。飛びながらじゃうまく地図を描けないし、地上に降りてからだと忘れてることもあるのよね。だから精密な地図なんてなかなか手に入らないのよ。でもそのスマホがあれば、ね、わかるでしょ」

「あ、はい。写真に撮れば一度飛ぶだけでいいですからね」

「そう。動画にしてもそうよ。相手の攻撃を動画で撮っておけば弱点なんかもゆっくりと検討できるしね」

「そう…ですね…」

 そう言うと功助は手に持ったスマホをじっと見た。

「だから、そのスマホの存在は外部に漏れちゃダメなのよ。あの魔具師のエルフにも外部には漏らさないようにって言っておかないとね。第一級の国家機密よそのスマホ」

 と微小するシャリーナ。

「…はい。そうですね。わかりました」

 功助は再びスマホに目をやった。

「まあ内輪で使う分にはいいんじゃない。ということで、ちょっとあたしにも使わせて!」

 テーブルをピョンと飛び越えると功助に抱き着きスマホを覗き込むシャリーナ。

「わっ!わ、わかりましたから!ちょ、ちょっと離れて!」

 と功助が文句を言う。

「んもう、そんなに恥ずかしがらなくても~。うふっ」

 ペチン!

「あいた!またぶつぅ」

 ラナーシアに叩かれた頭を摩るシャリーナ。

「ほんとにもう…、あなたって人は……」

 叩いた手をプラプラさせて肩を竦めるラナーシア。


「魔具師のリペア様をお連れいたしました」

 ミュゼリアが魔具師のリペアを連れて功助たちのいる部屋に入ってきた。

「失礼いたします」

 入ってきたリペアが部屋の中を見てラナーシアと目があったとたん。

「あ、……。う、…」

 少し顔色が蒼くなった。それに気づいたシャリーナ。

「あはは。ラナーシア、あんた怖がられてるわよ。いひひひ」

 リペアを指さしラナーシアに顔を向けると爆笑した。

「…シャリーナ隊長……。ふう。リペア殿」

「は、はいぃっ!」

 気を付けをして微動だにせずにラナーシアを見るリペア。頬にたらりと一筋の汗。

「あ、うん。さっきのことは忘れてくれるとうれしいのだが。忘れてくれないか……な?」

 リペアを優しく見つめるラナーシア。だがリペアは蛇に睨まれた蛙のように身動き一つせずに返事をした。

「は、はいぃっ!わ、わ、わ、忘れました!」

「あ、うん。そうか。それなら安心だ」

 と苦笑して少し寂しそうなラナーシア。

「えと。あのリペアさん」

「は、はいっコースケ様」

「そんなに緊張しなくても。ま、まあいいか。それでリペアさん。このスマホのことなんだけど」

 手に持ったスマホを見る功助。

「はい」

「このスマホの存在を外部に漏らしたくないんだ。決して外部に漏らさないようにしてください。絶対にスマホのことは秘密にしてもらえますか?」

「は、はい?」

 少し意味がわからないようなリペア。

「えーと、どう言えばいいのかな」

 と頭をかく功助。するとシャリーナがあのねと話し出した。

「あのね、理由はわかってもわからなくてもいいからさ、このスマホのことは絶対に他言してもらいたくないわけなのよ。もしスマホの情報が外部に漏れたら大変なことになるからさ。だからあなたも決してスマホのことは秘密にしてちょうだい。これはお願いじゃなく命令よ。それもあなたとあなたの家族、そしてあなたの親戚から知り合い。あなたに関係する人全員の命をかけてもらう命令なの。わかった?」

 それを聞いたリペア。青い顔から蒼白の顔に変化した。

「……わ、わわわわわわかりました!このリペア、決してスマホのことは他言しません。情報を外部に決して漏らしません。この命に代えても」

 リペアはガタガタと震えながら平伏した。

「よかった。ありがとうリペア」

 とふうとため息をつくシャリーナ。

「よかった。ありがとうございましたシャリーナさん。で、リペアさん。このスマホのことなんですが」

「は、はい。なんでしょうかコースケ様」

「このスマホの充電はどのようにして成功したんですか?」

「ああ、それですか。実は……」

 とスマホを持ち帰り試行錯誤したことを話だした。

 リペアは持ち帰ってすぐに内部構造を調べた。といっても分解したわけではない。数年前にリペア自身が開発した魔具で行なったのだ。それはかなり大きな魔具でリペアの説明によると四頭立ての大型馬車ほどの大きさがあるらしい。

 もともとその魔具は古代文明が残した遺産を調べるために作ったものだ。発掘された遺産を破壊することなく内部を調べるためにリペアが執念ともいえる技術で開発したリペアの最高傑作の魔具なのだった。

 その名も’ナカミエール’という。元の世界でいう非破壊検査を行うことのできる魔具だ。

 そのナカミエールでスマホの内部を観察したのだが精密機器の存在がわかっただけで他にはまったくわからなかった。まるで理解の範疇を超えた部品ばかりでリペアは途方に暮れたのだ。

 しかしたった一つだけわかったことがあった。それは内臓バッテリーが魔力に反応したことだった。リペアが魔力を当てながらナカミエールをかけるとバッテリーが共鳴したのだった。

「共鳴?」

「はい、コースケ様。私が’ナカミエール’で観ながら魔力を注いでみたのです。以前遺跡から発掘された封印された壺の中身をそうやってつきとめたことがありましたので、はい」

「そうですか。それで?」

「はい。私は弱いですが光と土の属性を持っているのですが、その際には光属性の魔力を注ぎながら中を見てみたのです。そうしたらスマホの中にある四角く薄い板が魔力に反応し共鳴したのです」

 そして監察しながら魔力を当て続けた。するとその共鳴が少しずつ小さくなっていることに気づいた。不思議に思いナカミエールの検査台からスマホを取り出し電源スイッチをいれてみたところなんとディスプレイが光ったのだという。そして異世界の数字が確認できた。

 功助に異世界の数字の表記法を聞いていたリペアはスマホの数字と照らし合わせその数字が「8」であることがわかった。つまりスマホの充電が8パーセントになっていたのだった。

 このことに気をよくしたリペアはこれは光属性の魔力で充電できるのではと思い魔力を当て続けたのだった。

 そして光属性の魔力を当て続けること三日。

「はい。昨夜その数字が’八十’となったので本日持って参りました」

「そうでしたか。いろいろありがとうございますリペアさん」

「はっ。ありがたきお言葉極みいります」

 リペアは膝まづくと頭を下げた。

「ということはこのスマホは光属性の魔力で充電できるってことでいいのかしら?」

 シャリーナが膝まづいているリペアに尋ねるとリペアはうれしそうに、そして満足そうに返事をした。

「はい。そのとおりでございます」

 胸を張るリペア。功助たちは少し苦笑したが顔には出さなかった。

「ありがとうリペアさん。ミュゼ、これをリペアさんに」

 功助は内ポケットから巾着を出すとミュゼリアに手渡した。

「はい。コースケ様」

 ミュゼリアはそれを受け取るとリペアの前に立った。

「リペア様、これを」

 その巾着を両手でリペアに手渡した。リペアは頭を下げ両手を真っすぐに出しそれを受け取った。

「今回のリペア様への報酬です。コースケ様からのお心遣いでございます。金貨が三枚入っています。ご確認ください」

「ありがたき幸せ」

 リペアは中身を確認すると深々と功助たちに頭を下げた。


 リペアとの面会を終えると功助はまっすぐシオンベールの部屋に向かった。部屋の前の衛兵も功助には敬礼をし部屋の中に入れてくれた。

「な、なんという船名で美しい絵なんでしょう!あんな一瞬で……、この絵を…。す、素晴らしいですコースケ様!」

 功助が撮影した自分の写真を瞬きもせずに驚き観ているシオンベール。

「そうだろ。それよりさシオン。口が開きっぱなしだぞ」

「あっ!す、すみません。はしたないところをお見せして」

 あわてて口を押えて謝罪するシオンベール。真っ赤な顔をしている。

「あはは。そうやって恥ずかしがるシオンも可愛いな」

 と笑う功助。

「も、もうコースケ様っ……」

 赤い顔をより一層赤くして功助の肩をぽかぽか叩くシオンベール。

「あはは。ごめんごめん。でも、すごいだろこれ」

 ともう一度スマホのディスプレイをシオンベールに見せる功助。

「は、はい。驚きました」

 とシオンベール。

「それにしても見事です。姫様の髪の一本一本までも鮮明に描かれています」

 シオンベールのお世話役副侍女長ライラもスマホを覗き込み感嘆の声をあげた。

「そうなんですよライラ副侍女長。私もさっき撮っていただいたのですがもう驚きを超えて唖然でした」

「あなたもスマホで撮っていただいたのですか?」

「はい」

 うれしそうにミュゼリアがそう言うとライラはスマホを持つ功助をチラッチラッと見た。

「あ、あのライラ副侍女長、よかったら写真撮らせてもらえますか?」

 功助は苦笑しながらライラにそう言った。

「えっ、そ、そうですか。わ、私も撮っていただけるのですかコースケ様」

 と半歩功助に近づくライラ。

「あっ、は、はい。そ、それじゃそこに立ってください」

「は、はいっコースケ様」

 うれしそうに真っすぐに立つと髪を手串で整えたり侍女服の皺を伸ばしたりしてニコリと功助のスマホに笑顔を向けた。

「と、撮ります」

 カシャッというシャッター音をさせて撮影した。

「ライラ副侍女長、見てください」

 スマホを操作してたった今撮影したライラの写真を呼び出してみんなが見えるようにディスプレイを見せた。

「へえ、私ってこんな風に見えてるのですねえ」

 スマホを見るライラはとてもうれしそうだ。

「あのコースケ様。あの…、えと……」

「ん?なんだシオン」

 目をキョロキョロさせてもじもじしているシオンベール。だがチラチラとスマホを見てそして功助を見る。

「あの、その、あの、スマホで……。コースケ様を撮ってさしあげたいなと……」

「あ、ああ。うん。そっかそっかありがとうシオン。それじゃ使い方教えるよ」

 功助は苦笑しながらシオンベールにスマホの使い方をレクチャーした。

「あはは。ドアップだな」

 と苦笑してシオンベールが撮った写真を見た。

「あの、コースケ様」

 今度はミュゼリアだ。

「ん?」

「あの、よければ私がコースケ様と姫様のご一緒の、えと、お二人が並んだ写真をお撮りしましょうか?」

「え、あ、ああ。俺とシオンのツーショットか……」

 功助がシオンベールをチラッと見るとその少し頬が赤かった。

「姫様。コースケ様とご一緒の写真をどうですか?」

 ミュゼリアがもう一度シオンベールに言った。

「そ、そうですね。撮っていただきましょう。ね、コースケ様」

 赤い頬に手をやり功助を見るシオンベール。

「あ、うん。いいね。じゃミュゼにも操作を教えるね」

 功助はミュゼリアにもスマホの操作を教えた。

「さあさあ、お二人とも、もうちょっと近づいてください。あっ、姫様、下を向いちゃダメですよ。コースケ様、もっと姫様にくっついてください。姫様、コースケ様と腕を組んでください。お二人ともこっちを向いてください。そうそう。それじゃ撮りますよ」

 パシャッという音をさせて功助とシオンベールのツーショット写真はスマホのメモリーに刻み込まれた。

 その写真には少し照れる功助とはにかむシオンベールの笑顔があった。



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