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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第5章 黒い目玉
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02 黄金の美少女 VS 白銀の美少女

 02 黄金の美少女 VS 白銀の美少女



 魔法師隊の訓練も終え自室に帰るとシャワーを浴びくつろぐ功助。

「コースケ様。あと三十分ほどで会食の時間となります。そろそろご用意願います」

「ん、ああ。もうそんな時間か。わかった用意しよう」

 そして三十分後、功助は会食のため国王の食堂に向かった。

「失礼します」

 ミュゼの開けたドアをくぐるといつもの笑顔が功助を迎えた。

「コースケ様、お待ちしていました」

「お待たせシオン」

 功助は自分の席に座ると対面のシオンベールの顔をうれしそうに見た。

「はい?」

 じっと見つめられ顔を赤くしたシオンが小首を傾げる。

「あっ、ごめんごめん。ちょっとうれしいことがあってさ。聞いてくれるかな」

「はい。ぜひ聞かせてください」

 シオンベールは満面の笑みで功助を見つめる。

「あのさ。最初にシオンに黙ってたことを謝るよ。ごめんシオン。シオンに黙って俺がこっちの世界について目覚めた場所に行ってきたんだ」

「コースケ様がこちらの世界で目覚めた場所…ですか?もしかして人竜球の壊れた私と初めてお会いしたあの草原でしょうか?」

「うん。そうだよ。あの時は驚いたな。金色のドラゴンが俺の目の前に現れたんだから」

 功助が苦笑するとシオンベールは恥ずかしそうにしていた。

「そしてその近くの草叢にさ、元の世界で俺が使ってた道具を見つけたんだ」

「えっ、元の世界の道具ですか?!」

 シオンベールは目を真ん丸にして驚いた。

「うん。でも何十日も放ってたから使えなくなってたんだけど」

「はい。そうでしょうね。コースケ様がこちらの世界に来られてもう二ヶ月近くになるのですから」

「そうなんだよ。でもバスティーアさんが優秀な魔具師を紹介してくれてさ、もしかしたら使えるようになるかもしれないんだ」

「そうですか。それはよかったです。もしその道具が直ったらぜひ私にも見せてくださいますか?」

「ああ、もちろんだよ。その時は一緒にそれを使ってみよう」

 功助はうれしそうにシオンベールを見つめた。

「は、…はい」

 シオンベールは功助の笑顔にどう答えていいかほんの少し悩んだ。しかしそれを察した者は誰もいない。

「失礼しま~す!」

「失礼いたします」

 食堂のドアを開けて入ってきたのは二人の女性だった。

「えっ?!」

 功助は入ってきた二人を見ると固まった。

「も、もしかして…、シャリーナさんと、カレット…なのか?」

 いつもは下ろされている白銀の髪は頭の上に結い上げられ赤いリボンで飾られている。一方のカレットも同じようにグレーの髪を綺麗に結い上げられておりいつもはおっとりとした印象だが今日は貴婦人のようにも見える。なので一見すればシャリーナの姉のようにも見えた

 。そして二人はいつもの黒いローブではなくシャリーナは薄い青を基調とした膝上のドレス、それも胸元が強調され深い谷間が覗いている。カレットはシャリーナとは違いおとなしめで緑を基調としたロングドレスを着ていた。

「どう?似合うダーリン?」

 シャリーナはニコっと笑うとその場でくるっと一回転。ふわっとスカートが浮き上がり白い太腿がちらっと見えた。

「うふっ。可愛いでしょ?」

「え、ええ。か、可愛いですシャリーナさん。それにカレットもよく似合ってるよ」

「ありがとダーリン」

「、あ…ああありがとうございます」

 シャリーナは満面の笑顔で、カレットは恥ずかしそうに頬を赤らめて一礼をした。

「今日はシャリーナ隊長ですか?」

 その時シオンの棒読みの声が聞こえた。功助は少しビクッとなり自分の向かいの席の方を見ると笑顔なのだが目があまり笑っていないシオンベールがシャリーナを見ていた。

「ふふ。そうですよ姫様。やっとこの日が参りました。ダ・ー・リ・ンにあたしのドレス姿を見せることができる日が」

「それはそれは、よ・う・や・く願いが叶いよかったですね、シャリーナ隊長」

 ニコニコのシオンベール。

「はい。ダ・-・リ・ンとはよくあんなことやこんなことはしてたのですがまだ悩殺的なドレスを見せたことがなかったもので。ふふふ」

 と二の腕を寄せ胸を強調させほんの少し口の端を上げシオンベールをみる銀色の瞳。

「そ、そうですか。そ、それはそれは。わ・た・しのコースケ様にですか?でもわ・た・しのコースケ様は紳士でお優しいのでわ・た・し・以・外のど・な・たにでも気さくなのですよ。よかったですねうふふ」

 こちらも口の端をほんの少し上げてシャリーナを見る。

「ふふふふ」

「うふふふふ」

 互いの視線がぶつかったのを功助は見た。

「あ、あの、二人とも…」

 功助がようやく声を出すが、

「何ダーリン!」

「なんでしょうかコースケ様!」

 二人の鋭い視線に何も言えない功助。カレットもおろおろ、周りの侍女たちも一触即発の様相をじっとりと汗をかいて見ていた。

「あらあら、どうしたのお二人さん。そんな怖い目をしてどうしたのシオン?それにシャリーナ隊長もなんで突っ立ったままなの?座ってちょうだいね」

 その時ルルサ王妃がニコニコと食堂に入ってきた。

「あっ、お母様。なんでもないんですよ。ねえシャリーナ隊長」

「はい姫様。えと王妃様、今日はお招きありがとうございます。さあカレット座るわよ」

 何事もなかったように功助の左側にシャリーナが座り右側にカレットが座った。それを見たシオンベールがシャリーナをチラッと見るとカレットに声をかける。

「あなたの名はカレットでしたね」

 急に声をかけられたカレットはビクッとなりあわてて返事をする。

「は、はははいっ!カカカカカレットです。まま魔法師隊新入隊員のカレットともうしみゃす。ききき今日はああありがとうこざいます!」

 緊張しているようでカレットも噛んでしまった。

「うふふ。そんなに緊張しなくてもよろしいのですよ。それでカレット、ちょっと頼みたいことがあるのですがよろしいですか?」

「へ?わ、私にですか?」

「ええ。難しいことは何もないのです。よろしいですか?」

「は、はい!このカレットシオンベール王女様のためならどのようなことでもお受けいたします!」

 と右拳を左胸に当てて頭を下げるカレット。

「うふふふ。そんなたいそうなことじゃないのよ。ただあなたの席と私の席と変わっていただきたいだけなのですよ。よろしいですかカレット?」

「へ?」

 素っ頓狂な声を上げてシオンベールを見るカレット。

「あらあら。なかなか積極的ねえシオン。ねえカレットさん。シオンと席を代わってあげてくれるかしら?」

 横からルルサ王妃が満面のニコニコ顔でカレットに微笑む。 二人に言われて拒否することなどまったくできるはずのないカレット。

「は、はい」

 と言うのがようやくだった。

「ポーラ、お願いします」

 シオンベールは給仕の班長猫の亜人のポーラにカレットと蹠を変えるように指示する。

「は、はい。わかりました王女様」

 ポーラは一礼するとテキパキと侍女を動かす。そしてシオンベールは席を立つと一度シャリーナに顔を向けるとニコリと薄笑いをした。それにニヤリと返礼するシャリーナ。

 シオンベールは功助の右側に座ると満面の笑みで功助を見る。

「コースケ様。私隣に座っちゃいました。てへっ!」

 なんかキャラ変わってないかと隣に座るシオンベールを見る功助。

「あ、ああ。いらっしゃい」

 ずっこけるようなことを言う功助。

 功助の肩越しにシャリーナと目が合うとニコリとするシオンベール。シャリーナもニタリと不気味な笑みを返した。

 それをルルサはニコニコとうれしそうに見ているがその横に座ったカレットは居心地悪そうにもじもじとしていた。

「待たせたな。ってシオンどうしたんだ今日は。コースケの隣に座って」

 食堂に入ってきたトパークス国王がニヤリと笑う。

「あっ、お父様。えと、あのこれはですね」

「よいよい。ふむ、今日はシャリーナ隊長とえーーと、ルーの横に座っているのは…。すまん、名はなんと言う?」

「はいっ!」

 カレットはその場に立つと国王に向かいスカートを少し持ち上げると淑女の礼をした。

「わわわ私は魔法師隊所属の新入魔法師のカレットと申します。本日はこのような…」

「あ、ああ。わかったわかった。そんなに堅苦しくならんでもいいぞカレット。今日は楽しんでいってくれ」

 とカレットの細い肩をポンポン叩き苦笑した。

「ひゃ、ひゃい!ありがとうござます」

 とスカートを持ち上げてまた礼をしたが、少しスカートを持ち上げ過ぎて膝の上までめくれてしまった。

「ふふ。眼福眼福」

 あわててスカートを降ろすカレット。顔はもう真っ赤だ。

「あなた」

 その冷ややかな言葉で一時停止する国王。ギギギと油切れのロボットのようにルルサ王妃に視線を移すと微笑んでいる顔があった。

「ル…、ルー…。あはは。じ、冗談だ冗談。さ、さあ食事を始めようじゃないか」

 国王は汗を拭きながら席に着いた。


 ニコニコ微笑みながら王妃は目の前の三人を見ている。

 功助の左側ではシャリーナがこれおいしいよと前の皿から人参を勧め、右側のシオンベールも負けじと功助が頬に付けてしまったソースをナプキンでそっと拭きとっている。二人の少女は功助を甲斐甲斐しく世話をしているのだった。

「な、なあルー、これはいったいどういうことなのだ?」

 チラチラと功助たちを見ながら小声で王妃にこの状況説明を願う国王。王妃の向こう側ではカレットが我関せずとおいしそうに食事をしている。ある意味カレットが一番度胸が据わっているのかもしれない。

「うふふ。見ての通りですわあなた。いいわねえ。青春よねえ。うふふふ。修羅場よねえ」

 うれしそうなルルサ王妃に国王はあははと乾いた笑いを返すしかなかった。

「コースケ様。これをどうぞ召し上がれ」

 するとシオンベールが手を添えて差し出したのはフォークに刺さったおいしそうなステーキ。

「さあ、お口を開けてくださいな。あ~ん」

 嬉しそうなその顔は、しかし頬を赤く染めていた。

「あ、ああ」

 コースケは、目を丸くして見ている国王と、口に手を当てて微笑んでいる王妃の方をチラッと見るとシオンベールの差し出したステーキに口を開けた。

「おいしいですかコースケ様」

 シオンベールの顔はもう真っ赤だ。そしてとても幸せそうだ。

「むう。あたしのも食べてダーリン!」

 今度は反対側のシャリーナが私も負けじとこれまたおいしそうなポテトをフォークに突き刺して功助に差し出した。

「ダーリン、あ~ん」

「あっ、いや。それ大きすぎますよシャリーナさん。とても一口では…」

「もう、いいから食べて。ねえダーリン。あ~んして、あ~ん」

 と口の前にゴルフボール大のほくほくのポテトをグイッと突き出した。

「あ、いや、でも…」

「食~べ~て~。あ~ん。うふっ」

 それを見ていたシオンベール。

「おやめくださいそんな大きなポテトはコースケ様の口に入りませんよシャリーナ隊長。ご自分でお食べになればよろしいのではないですか?おそらくそのポテトも一口に入ると思いますよ。うふふ」

 ギロリ!バチバチバチッ!

 二人の視線が功助を挟みぶつかった。その時功助は聞いた。互いの視線がぶつかり火花を散らす音を。

「ふん。それじゃこれならどう!」

 シャリーナはフォークに刺さったポテトを手首のスナップをきかせ真上に放り投げるとその指先から無数の風の刃をポテトめがけ放った。

 シュタシュタシュタシュタシュタ!

 風の刃はポテトをきれいに六等分した。そして重力に従い切断されたポテトは落下してきた。それを迎え撃つのは右手のフォーク。そのすべてをしゃくしゃくしゃくと突き刺すシャリーナ。

「はいダーリン。切れたわよ。あ~ん」

 と再び功助の口の前に持っていくとニコッと微笑んだ。

「あ、はい」

 功助はまるで条件反射のように口を開けてポテトを口の中に収めた。

 シャリーナはチラッとシオンベールを見るとニタリと笑む。シオンベールは負けてなるかとニヤリと笑い返した。

「(な、なんか怖い)」

 真ん中に挟まれた功助は眼を右に左に自分を挟んで座っている美少女を見るとはははと乾いた笑いをこぼすのだった。


「お疲れ様でしたコースケ様」

 いつものようにテーブルにティーセットを置いてミュゼリアがおいしいお茶を淹れてくれる。それを一口飲むと功助はふうと溜息をついた。

「なんか疲れたぁ」

 ソファーに深くもたれると首を左右にコキコキさせてまた大きなため息をつく功助。

「ふふふ。今日の姫様もシャリーナ隊長もお互い対抗心むき出しでしたし。モテル男は辛いですねコースケ様」

 と少し冷やかすミュゼリア。

「あはは」

 苦笑する功助。

「でもどうしたんだろう二人とも」

 頭の後ろで手を組んで天井を見上げる。

「慕ってくれるのはうれしいけど、いつもの二人じゃなかったな。なんか二人とも攻撃的で…。どうしたんだろ…?」

「でも、私、なんとなくわかります」

「へ?」

 驚いてミュゼリアに顔を向けると功助専属侍女は複雑な表情をしていた。

「一応の予定では、コースケ様が姫様の牙を使って元の世界にご帰還されるまで二週間ほどです」

「い、いや、シオンの牙を使うかどうかは…」

「わかってます。わかっているんです。姫様もシャリーナ隊長もコースケ様が姫様の牙を使わないんじゃないかと、そう思っているんです。こちらの世界にいてくれる、そう思いたいのです。でもやっぱりコースケ様は元の世界にご帰還される方がいい、お二人ともそうも思っているんです。恐らく無意識にコースケ様と、…あの、…お別れするのが辛いのだと思います。それがあのような行動になったのだと思うんです。お二人ともコースケ様を本当に慕っておられますから」

「……」

 功助は寂しそうなミュゼリアの目を見ていた。

「あっ、でも、わかりませんよ。単に嫉妬同士がぶつかっただけかもしれませんし。今のは私の想像にすぎませんので。す、すみません」

 両手をパタパタさせて頭をペコペコ下げてどうしようどうしようという雰囲気のミュゼリア。

「ははは。ありがとうミュゼ。いろいろと考えてみるよ」

 功助は残ったお茶をグイッと一息に飲むとカチャリとソーサーに戻して手の甲で口を拭いた。



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