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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第5章 黒い目玉
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01 魔具師

第5章開始です。


01 魔具師



・・・58日目・・・



「おはようございます」

 ドアを開けて入ってきたミュゼリアはいつもの笑顔で朝の挨拶をする。

「おはようミュゼ」

 ソファーから挨拶をした功助もすっかり部屋の主となっていた。

「それでは朝食のご用意させていただきます」

 ミュゼリアはいつものようにテキパキと朝食の準備をする。テーブルにはハムエッグと色とりどりの野菜、コーンスープからは湯気が立ち上りそれだけで食欲をそそられる。そして小さな篭に盛られたパンからはおいしそうな香りが鼻孔に届き功助はたまらず手を合わせた。

「それじゃいただきます」

「はい、どうぞごゆっくり」

 ミュゼリアは壁際まで下がるとこの部屋の主がおいしそうに食事をする風景をニコニコしながら見ていた。


 食後のお茶を飲みながらミュゼリアと雑談をしているとドアをノックする音がした。

「おはようございますコースケ様」

 入ってきたのはバスティーアだった。

「おはようございます。どうしたんですか?」

「はい。昨日言っておりました魔具に精通している者と連絡を取り登城するように連絡いたしました。しかし何分多忙な者で本日の昼なら時間がとれると申しておりまして。コースケ様もご多忙とは存じますが本日午前の魔法師隊の訓練後の昼休憩になりますが面会よろしいでしょうか?」

「昼の休憩にですか?はい。かまいませんよ。昼休憩もけっこう余裕がありますので」

「ありがとうございます。それではそのように準備させていただきます」

 と一礼をする。

「はい。よろしくお願いします」


「へえ、これがダーリンの元の世界の道具なの、へえ?」

「こんなに見た目は薄いのにいろいろな機能があるのですか?」

 魔法師隊控室でスマホを見せるとシャリーナもラナーシアもトントン叩いたりひっくり返したりしてバッテリーの切れたスマホに興味津々だ。

「そうですね。復活したらの話ですけどね」

 しかしこちらの世界で使える機能はあまりないだろう。スマホはインターネットに接続してこそその機能をいかんなく発揮できるのだから。

「もし仕えるようになったらあたしにも使わせてね。ね、いいでしょダーリン」

「ちょっと隊長、このような高価なものを隊長が触ったら壊してしまいますよ」

「ふん!そんなことないもん!大切に使うもんっ!ふんっだ!」

 口を尖らせて悪化んべぇをするシャリーナ。

「子供ですか」

 と肩を竦めるラナーシア。

「ははは。大丈夫ですよラナーシア副隊長。ねえシャリーナさん」

「そうそう。やっぱりダーリン。私のことを一番わかってるのはダーリンだけよ~!いつでも襲いにきてね~。うふっ!」

 パコッ!

「あ痛っ!また叩くぅ」

 と涙目のシャリーナ。

「だから言ったでしょう、破廉恥な言動は慎みなさいと」

 叩いた手が痛かったのか右の掌を摩るラナーシア。

「さ、さあ、そろそろ訓練を開始しましょうか。行きましょうシャリーナさん、ラナーシア副隊長」

 功助はそそくさと外に出て行った。

「うふ。さあ、お二人ともコースケ様が先に行ってしまわれましたよ」

 ミュゼリアが笑いながら二人に声をかける。

「あっ!ダーリン!待ってよぉ~!」

「コースケ隊長申し訳ありません!」

 二人はあわてて功助を追いかけて行った。


 昼食後、ミュゼリアと雑談をしながら来客を待つ功助。

「もうそろそろですよ」

 ミュゼリアがそう言った時、ドアをノックする音が聞こえた。

「コースケ様。魔具師が参りました。部屋を用意してありますのでこちらへどうぞ」

 バスティーアに連れられ魔具師の待つ部屋に向かった。

「バスティーアです。入ります」

 そう声をかけてドアを開くとそこには一人の若い男が窓際に立っていた。男は功助たちに気付くと深々と頭を下げた。

「はじめましてコースケ様。私は魔具師のリペアと申します。以後よろしくお願いいたします」

 そういうともう一度深々と頭を下げる魔具師のリペア。そして顔を上げたリペアを見て功助は少し感動した。

「も、もしかしてエルフの方ですか?」

「はい。そうです。もしかしてエルフに会われるのは初めてですか?」

「え、はい。へえ、やっぱり耳が細長いんだ」

 ニコニコ笑うリペアの側頭部にはエルフの証の笹のように細長い耳があった。

「あっ、俺は功助。今日は忙しいところ俺のために登城してもらってありがとうございます」

 功助がそう言うとリペアは眼を見開いて驚いている。

「な、なんと!私にそのような謝罪など無用でございます!登城したのも珍しい魔具があると、それも異世界の魔具があるとのことで喜び勇んでこうして参ったのでございます。こちらこそ私めなどにお声をかけていただき感謝の極みでございます」

 リペアはまた叩頭するとニコニコと笑った。

「さあコースケ様。さっそくそのスマホとやらをリペアにお見せください」

 バスティーアに促されソファーに座ると功助は懐からバッテリー切れのスマホを取り出してテーブルに置いた。

「ほお。これが異世界の魔具でございますか…?」

「はい」

 功助はスマホの保護カバーをはずし本体をリペアに手渡す。

「は、はい。失礼いたします」

 恐る恐るスマホを受け取ったリペアの顔がだんだんと紅潮してきた。そして興奮した声を出した。

「す、すばらしい!こ、これが異世界の魔具か!なんとすばらしい!これを私が!うーん!感動です!」

 とスマホに顔を近づけて見たりひっくり返したり匂いをかいだりとまるで子供のように楽しそうだ。

「それでそれでそれでコースケ様!これはどのようにして使用するものなのでしょうか!?」

 功助は苦笑しながら説明する。

「はい。これはこの横の細長いところを押して…」

 功助はスマホの簡単な使用方法を説明した。リペアはそれを一言も聞き逃さないぞとばかりメモをとりながら功助の話を真剣に聞いていた。

「そうですか。その電池が切れてるということなのですね。わかりました。それでこのスマホはお預かりしてもよろしいのでしょうか?」

「はい。そのようにお願いします。それでもし調べても動かなかったり、そのせいで壊れてしまってもなんら気にしなくて大丈夫です」

 と言うとバスティーアが続けた。

「コースケ様のおっしゃるとおりもしそのスマホが壊れてもあなたにはいっさい処罰はくだらないので安心してください。本来なら極刑になるところですがコースケ様の温情に感謝するのですよ」

 それを聞くと少し蒼白になったリペアだがソファーから立つと床に片膝を付け叩頭する。

「寛大なるお心、感謝の極み。コースケ様。このリペア全身全霊をもって必ずやこの魔具を復活させましょうぞ。それまで今しばらくおまちください!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 ミュゼリアと顔を見合わせて苦笑するのだった。

 柔らかそうな布の下には、布団にすれば何十万もするのではないかというような美しく柔らかい羽毛が敷き詰められ、とても頑丈そうな箱にスマホを丁寧に入れるとそれを両手で大切そうにしっかりと抱えたリペアが退室した。

 そして功助とミュゼリアは午後の魔法師隊の訓練に戻って行った。


「お疲れダーリン」

「お疲れ様ですコースケ隊長」

 魔法師隊のトップ二人がミュゼリアを伴って控え室に入ってきた功助を出迎えた。

「お疲れ様です」

「で、どうだったスマホ」

「はい」

 先ほどの魔具師のエルフとのやり取りを話をすると当然というような表情の二人。

「そりゃ恭しくもなるわよ。ダーリンの偉業を知ってる者なら当然よ」

「そうですよコースケ隊長。フェンリルを倒し魔族をも討伐したのですよ。そのエルフもその名跡は存じているでしょう」

「そんなもんですかね」

 と頬をかく。

「コースケ様」

 ミュゼリアがため息交じりに功助を見る。

「なんだミュゼ?」

「以前にも言いましたが、コースケ様はご自分のことを過小評価しすぎです。もっとご自分を客観的にご覧になってください」

「あ、えと、はい」

 苦笑いする功助。それを見てまたミュゼリアは小さくため息をついてこちらも苦笑した。

「それでいつごろ直るのかしらね」

「さあどうでしょう。直るかもしれないし、直らないかもしれないし。なんせ文明が違いすぎますからねこっちとあっちでは」

「まあ、そうかもしれないけど。でもねダーリン。こっちの世界には魔法ってものがあるのよ。何度かダーリンからそっちの世界のことを聞いたけど、そっちの世界じゃ何をするのも何かの道具を使わないといけないのよね。例えば」

 そういうとシャリーナは机の上に置いてあったペンを持つとプラプラさせた。

「このペンをこの部屋の天井に逆さに立ててって言ったらダーリンの元の世界だったらどうやってする?」

 と天井を見上げる。

 ここの部屋の天井は高く五メートルはあるだろう。功助は少し考えるとそのペンを受け取り眺めた。

「いくつか考えられるけど。このペンの先に強力な接着剤をつけて勢いよく天井に投げて付けるとか、ハシゴに上って両面テープで留めるとかかなあ」

 とペンと天井を交互に見る。

「まあそうでしょうね。でもこっちの世界じゃ…」

 と功助からペンを受け取ると反対の掌の上に置いた。

「それっ!」

 手首をひょいっと返すとペンは天井まで一直線に上がって行きその先端を天井にくっつけた。ペンはそのままの状態で落ちてもこない。

「ね。これは今あたしがあのペンに魔法をかけて天井にくっついたまま落ちるなって念じたのよ。わかる?便利でしょ魔法。そして不思議でしょ魔法。どんなことでもってことは言わないけど、たいていのことなら魔法でなんとかできるのよ。だからダーリンのスマホも必ず使えるようになるわよ」

 天井に逆さに立ったまま落ちてこないペンとシャリーナを交互に見ると功助は頷いた。

「はい。期待して待ってます。直ったらいろいろと遊べるので一緒に遊びましょうシャリーナさん」

 それを聞いてシャリーナは飛び上がった。

「やった!スマホでダーリンと遊べる!」

 とまるで子供のようにはしゃいでいた。

「ところでコースケ隊長」

 シャリーナを見て苦笑していたラナーシアが功助に向くと尋ねてきた。

「なんですか?」

「そのスマホはどのようなことができるのですか?」

 と興味津々に聞いてきた。

「あ、はい。スマホの機能としてはですね…」

 功助はスマホ単体でもいくつか使えることを教えた。写真やアラーム、それに計算や音声の録音などのことを話しした。

「とても興味深いです。ぜひ私にも見せてください」

 といつものラナーシアらしからぬ目をキラキラさせて功助に頼んでいた。

「はい。一緒にやりましょう」

 ラナーシアとシャリーナを見て微笑んだ。

「あの、コースケ様!」

 すると後ろからムスッとした声がした。

「な、なんだミュゼ?」

「私は仲間に入れてもらえないのですか?」

 ととても不機嫌そうに功助を上目遣いで見つめた。

「あ、いや、そ、そんなことはないぞ。俺がミュゼを仲間はずれになんかしないって。スマホが治ったら先崎にミュゼに見せるから安心してくれ。な」

 とミュゼリアの頭をポンポンと叩いた。

「ありがとうございますコースケ様!」

 するとミュゼリアはさっきとは別人のように満面の笑顔となった。


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