04 にぎやかな会食
04 にぎやかな会食
午後からの訓練も終え、シャワーで軽く汗を流し会食のために食堂へ向かう功助とミュゼリア。
「失礼します」
ミュゼリアが開いたドアをくぐるとそこにはすでにルルサ王妃とシオンベール王女が座って談笑していた。
「あっ、コースケ様!」
とうれしそうなシオンベール。
「コーちゃんこんばんは。疲れたでしょう。ささ、座って座って」
と親戚のおばちゃんのようなルルサ王妃が席を勧める。
「はい。失礼します」
一礼をしてミュゼのひいてくれた椅子に腰かける功助。
「んもう。相変わらず生真面目ねえコーちゃんは。いちいち頭なんか下げなくてもいいのよ。コーちゃんは特別な人なんだから。特にシオンにはね。ねえシオン」
とニコニコクスクスの王妃。やはり親戚のおばちゃんだと思う功助。
「えっ、あ、あの…お、お母様、恥ずかしいことを言わないでください」
とたんに頬を赤くするシオンベール。それを見てちょっとドキドキする功助。
「あ、えと、あの…。コホン。そうだ、今日のゲストはどなたが来られるんですか?」
話をそらそうと空いている右側の席を見る功助。今日は二つの席が用意してあった。
「ん?ああ、今日のゲストはね可愛らしい人たちよ。にぎやかになるわよお」
と嬉しそうなルルサ王妃。
「そうなのですかお母様。どなたが来るのでしょう。楽しみですねコースケ様」
と嬉しそうなシオンベール。
「そうだな。可愛らしい人か。女の子かな?」
と首を捻ると、
「もう、コースケ様」
シオンベールがほんの少し口を尖らす。
「えっ?あっ!あはは。い、いや、あははは」
「コーちゃん笑ってごまかさないの。それにシオン、嫉妬は恥ずかしいわよ。コーちゃんを信じなさい」
口元を押さえながら笑うルルサ王妃。
「は、はあ。すみません」
「も、もうお母様。また恥ずかしいことを…」
功助とシオンベールの頬が少し紅くなった。それを見てまたクスクス笑う王妃。
その時食堂の扉がノックされ二つの影がゆっくりと入ってきた。
「失礼します」
「しちゅれいしましゅ!」
「ちょっとまた噛んだ、失礼よ」
「あっ、失礼します」
食堂の扉を開けて入って着ていつものやり取りをしている少女二人。
「あれ?このボケツッコミは…」
功助が扉の方に向くと最近見慣れた二人が小声でひそひそ言い争いをしていた。が、少しずつそのボリュームが大きくなっていく。おそらく当人たちは気づいていないだろうと功助。
「ちょっと!噛まずにしゃべりなさいよ」
「きき緊張してて」
「それでも噛まないの!」
「だってぇ」
「これ以上失礼なことしたらあんたのデザート全部もらうからね」
「そんなぁ、デザート楽しみにしてるのにぃ」
「なら噛まないでしゃべりなさいよね」
「でもでもでも」
とヒートアップしてきた。
「おいモーザ、イリス。だんだん声がでかくなってきてるぞ」
と苦笑しながら二人に声をかける。
「あっ!ももも申し訳ありません!コースケ隊長!!」
「しゅしゅしゅしゅみましぇん!」
二人はペコペコと頭を下げると
互いを肘で突っつきはじめた。
「あんたのせいよ!」
「だって、モーザがいじわる言うから」
「いじわるじゃないわよ、注意よ注意」
「でもでも!」
とまたまたヒートアップしそうになった。
「ふう。もういいから早く座って。今日のゲストなんだろ二人とも」
と少し肩を竦める功助。
「はいっ、申し訳ございません!失礼します!!」
ピシッと気を付けをし最敬礼するモーザ。
「は、はいっ!しゅみません。えと、あの、えと、し、失礼するざます!」
イリスはやはりイリスだった。
「待たせたな」
悪い悪いといいながら国王が食堂に入り全員がそろったのはモーザとイリスが着席してすぐだった。
「今日は魔法師隊の二人か?」
国王が功助の横に並んでいる二人を見て微笑む。
「は、はい!私は魔法師隊見習いのモーザと申します。このような席にお招きいただきこの上ない感謝と末代まで誇る名誉と喜んでおります。不束者でございますがよろしくお願いいたします」
モーザが席の横に立つと国王に向かい左胸に右拳を当てた。
「うむ。見習いとな。粉骨砕身を怠ることなく励むように」
「はい。ありがとうございます」
モーザは深く一礼し着席した。そして右側のイリスの太腿をトントンと叩いた。
「は、はいっ!わ、わ、わたわたわた私はイリスと申しましゅ。モモモモモモーザと一緒にょみらないです。じゃなくて見習いです。陛下と王妃しゃまと姫ちゃまと、あの、えとえと、コーシュケー隊長…、じゃなくてコースケ隊長と、えと、あの、一緒にご飯が食べられるのがうれしくて楽しみで、あの…。えーと、よ、よろしゅうお願いするでござる」
わたわたしながらイリスは左胸に拳を当てた。が、ちょっと強すぎたようでゴホゴホとむせていた。
「ちょっ、ちょっとイリスっ!いくらなんでも噛みすぎよ!王妃しゃまって失礼よ、姫様にも姫ちゃまだなんて、それにコースケ隊長をコーシュケーだなんて不吉なものに間違えてさ!あんた不敬罪で首が跳ぶわよ!」
モーザは真っ赤になってイリスの肩をバシバシ叩く。
「ごめんなさいごめんなさい。私首が跳ぶの!?そんなことになったらもうデザート食べられないよぉ」
真っ青な顔で下を向き小さく縮こまり震えているイリス。
「おいおい、首が跳ぶだなんてことはないから安心しろイリス。モーザもちょっと言い過ぎ」
苦笑する功助。
「そうよイリスさんモーザさん。そんなことで不敬罪になったりしないから安心していいのよ」
とルルサ王妃。
「そうですよイリス。そんなことで怒ったりしないから安心して。さ、顔をあげてあげて。楽しくお食事しましょう。ね、モーザ、イリス」
シオンベールも優しく声をかける。
「は、はい。申し訳ございません」
モーザが再び起立すると頭を深く下げる。
「イリス。あんたも謝罪しなさい!」
「は、はい!申し訳ございませんでしたぁ」
イリスも起立するとペコリと頭を下げた。そして、
ゴンッ!
「あ痛っ!」
テーブルに額をぶつけた。額を摩るイリス。ほんとにもうあんたってとその頭をこづくモーザ。
それを見ていた国王はくくくと咽喉を鳴らすとたまらんと口を開く。
「うわははは。なかなか面白い見習いだな。イリスとか言ったな。モーザとともに今日は楽しんでいってくれ」
とうれしそうな国王。
王妃がクスクス笑うとシオンもうふふと笑う。
「二人がすみません」
と功助が頭を下げるがすぐに笑い出した。それがだんだんと広がり食堂内にいたミュゼリアやシオンベールの専属侍女ライラ、そしてたくさんの給仕たちもたまらず笑い出した。
キョロキョロと周りを見て亜全となるモーザとイリス。
「ど、どうしようイリス」
「私に言われても…。まあ、いいんじゃない」
今の会話を聞き功助はいざとなればイリスの方がどっしりと構えているのかもしれないなと思った。
会食はにぎやかに過ぎて行った。途中デザートの取り合いとなったモーザとイリスに国王が仕方ない追加を持ってきてやれと楽しそうに笑っていた。
「本日はごちそうさまでした。それではお先に失礼いたします」
「ごちそうさまでした。おいしかったでしゅ」
「イリスったら最後にまた噛んだ」
「あっ、えと、おいしかったです」
と最後までボケツッコミのイリスとモーザ。仲良く食堂を後に下。
「楽しいお二人だったわね」
とうれしそうなルルサ王妃。
「そうですね。私もお母様もあんなに笑ったのは久しぶりです。うふふ」
シオンベールはモーザとイリスのボケツッコミを思い出したのだろうクスクスと笑いだすと王妃も同じように笑い出した。
「ほんと面白い二人ですけど当の二人は普通にしてるつもりなんですよ。まあ、天然ってやつですね。でも訓練に関しては真面目に取り組んでてけっこう実力はあるんですが。なんせあの二人を一緒にすると…。ははは、すみません」
と苦笑する功助。
「しかしあの二人はけしからんな」
と国王。
何か気に障ったのかと功助もシオンベールも王妃も国王を見つめた。
「へ、陛下、何か二人が失礼なことを…」
と功助が恐る恐る国王に尋ねると。
「うむ。この国王である俺が涙を流すほどの愉快で痛快な話をするとは。思い出すだけでまた涙がでそうだ」
と嬉しそうに笑った。それを見てホットし国王とともに笑う三人。いや、食堂内の侍女たちもクスクスと口に手を当てて笑っていた。
「そしてしばらく談笑し功助は例のことを国王に尋ねた。
「あの陛下。今日シャリーナさんから聞いたのですが、フログス伯爵がシオンに謝罪したいと伝言を受けたと。でもなぜ俺に…?」
「えっ、コースケ様、それは本当のことなのですか?フログス伯爵が私に?」
驚いて功助を見るシオンベール。王妃も同様に功助を見た。
「ああ、そのことか。俺もバスティーアから聞いたが。シャリーナ隊長の言うとおりだ。コースケにまかせる」
「お父様、コースケ様に任せるとはどういうことですか?」
と怪訝そうに国王を見る。
「ん。ああ、フログスがシオンに謝罪したいと俺に聞いてきたのだが俺はどっちでもいいと言っておいた。なので俺ではなくコースケに聞いてみろと。シオンのことはコースケに任せたのでな」
それを聞いて一番驚いたのは功助だった。
「へ、陛下!俺そんなこと聞いてませんよ。なんで俺がシオンのことを任せられるのか」
「ほお。ということはコースケはシオンのことを任されたくないと?シオンのことはどうでもいいというのだな」
冷ややかな目で功助を見る。
「あ、いえ、そんなことは思ってません!でも…」
「思ってないのならシオンのことを任せても問題あるまい。これからシオンのことはコースケに一任することが増えると考えておいてくれ。それでいいだろうシオン」
と急に振られたシオンはおろおろと国王と口を半開きにした功助の顔を見る。
「あ、あの、私は…、あの」
「ほらシオン。はっきりしなさい!ほらどうなの、コーちゃんに任せるの任せないの、どっちなの?」
と王妃はシオンベールの背中をパシッと叩いた。
「えっ、あ、あのお母様…。あの、私…」
「あの王妃様…」
功助が王妃に声をかけるが、
「コーちゃんは黙ってて!」
「は、はい」
小さくなる功助。
「さあ、どうなのシオン。コーちゃんのことを信じられないのそれとも信じるの!」
「あ、あの…」
シオンベールは俯きチラチラッと功助を見て王妃と国王の顔を見た。
「わ、私…私のことは…、コ…、コースケ様にお任せいたします」
「シオン!」
「コースケ様!よろしくお願いいたします!」
シオンベールはその場で立つと功助に向かい王女の礼をした。
「シ、シオン…」
とまだ困惑の功助。
「な。コースケに任せたぞ。シオンのことを頼む」
「お願いねコーちゃん。シオンのことお任せいたします」
国王はニヤッと功助を見、王妃は頭を下げた。
「も、もう…。仕方ない…か…。わかりました。シオンのこと、任されました。でも陛下、陛下と王妃様への相談くらいはさせてください」
「うむ。相談くらいはしてやろう」
「わかったわ。いつでも相談に来てねコーちゃん。うふっ」
なんとなく二人はうれしそうだなと苦笑する功助。
「それじゃあシオン。フログス伯爵からの謝罪なんだけど」
「はい」
「受けてあげてくれないか。伯爵は以前の伯爵じゃないと思うんだ。バスティーアさんたちが言っていたとおり本当は心おだやかで優しい人なんだと俺は思う。だから会うだけでも会ってあげて欲しいんだ。どうだろうシオン」
「はい。わかりました。コースケ様のおっしゃるとおりだと私も思います。なのでよろしくお願いいたします」
頭を下げるシオンベール。
「わかった。んじゃ日程調節するからシオンの都合のいい日を教えてくれ。あっ、あとでいいからさ」
「わかりました。あとでライラに頼むことにします」
「わかった」
そのやり取りを見ていた国王と王妃。うれしそうな楽しそうな笑みをこぼしていた。




