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異世界人と竜の姫  作者: アデュスタム
第3章 婚姻承諾の儀
27/73

01 ベルクリット動く

第3章開始です。

 01 ベルクリット動く



 ・・・38日目・・・


「コースケ!」

「うわっ、びっくりした!」

 急に横から大きな声で呼ばれ思わず一歩飛ぶように後退した。誰かと思い声の主を見ると青の騎士団団長のベルクリットが回りを気にしながら声をかけてきた。

「ベルクリットさん。驚かさないでくださいよ。ほんとにもう」

「わ、悪いコースケ。しかし声をかけるのは今しかないと思ってな」

 と頬をかくベルクリット。

「へ?そんなのいつでも声かけてくださいよ。俺ならいつでもOKですよ」

 というと、

「あ、いや。コースケが一人でいることがなかなかないもんでな。一人になるのを待っていたのだ」

 とすこし目が泳いでいた。

 功助は一人で魔法師隊訓練のため詰所に向かうところだ。いつもはミュゼリアが一緒だが今日はいつも頑張ってくれているので休暇をとってもらっていた。なので鼻歌を歌いながら廊下を詰所に向かい歩いていると急に声をかけられたのだった。

「俺が一人になるのを待ってたと。なぜですか?」

「ああ。実は……」

「はい」

「……」

 周囲をきょろきょろして誰もいないことを確認すると小さな声で言った。

「ちょっ、ちょっ、ちょっと……、あ、あの…」

「はい。なんですか?」

 と耳を近づける。

「ミュミュミュ、ミュゼリアのことで……」

 と一気に顔を赤くするベルクリット。

「へ?ミュゼの?」

「ああ」

「ミュゼがどうしまし……。あっ!」

「うわっ、びっくりした。コースケ、あまり大きな声を出さんでくれるか」

 と周囲をきょろきょろ。

「……。元気ですよ。それで?」

 と少しいじわるな功助。

「あ、そ、そうか。それならいいんだが…」

「……。ベルクリットさん」

「な、なんだ」

 功助はベルクリットの目をじーっと見た。

「な、なんだ…」

 と言い半歩下がるベルクリット。

「あっはい、すみません。で、ミュゼがどうしたんですか?」

「ミュミュミュミュゼリアは元気かなと、あははは」

「えっ、はい。さっきも言いましたけど元気ですよ」

 と少し苦笑する功助。

「そそそそうか。で、コースケにちょっとたたたたた頼みがあるのだが聞いてはくれまいか?」

「頼みですか?はい、いいですよ俺にできることであればですけど」

「そそそそうか。感謝する、うん感謝するぞ。ふう、はあ」

 肩で息をするベルクリット。かなり緊張しているようで感染しそうだなと苦笑する功助。

「で、頼みってなんですか?」

「う、いや、あの、その前にだな…」

 と目はキョロキョロ、頭をボリボリ。おまけに立ったまま器用に右足を貧乏ゆすりをしている。

「何もないなら俺魔法師隊詰所に行きますね」

 功助が歩き出そうとした時。

「わ、わ、わかった。言う、言うからちょっと待ってくれ」

 と功助の腕をむんずと掴む。が、少し痛かったりする。我慢してベルクリットを見る。

「た、た、頼むコースケ!ミュ、ミュゼリアに俺のことをどう思っているか聞いてくれないかっ!」

 と功助の両肩をガバッと掴み顔を近づけてくる。その強面の顔が至近距離に。

「わっわっわっ、ち、近い、近いですよ!」

 とその顔から少しでも離れようとのけぞる功助。

「す、すまない。で、どうだろうか聞いてはくれまいか?」

「いいですよ」

「そうか。やっぱりダメか。自分で聞くしかないのかな…。いいですよなんて言ってくれたけど……。ん?いいですよ…?えっ!いいのか!本当にいいのかコースケ!ミュゼリアに聞いてくれるのか本当に!」

「本当ですよ。でも」

「でも。なんだコースケ」

「あっ、いや。わかりました。ミュゼにちゃんと聞きますので安心してください」

 聞くまでもないといいたいところだが。そう思いながらベルクリットの必至の形相を見て苦笑いをする功助。


「…ということなんです」

 今功助は青の騎士団詰所の副隊長室にいる。

「ふう。ようやくベルクのヤツ重い腰を上げたか」

 椅子の背もたれでぐっと背中を伸ばすとハンスは少しホッとした顔をする。

「みたいです」

 と功助も苦笑した。

「で、コースケからみてミュゼリアはベルクのことをどう思ってると感じる?」

「そうですね。おそらくミュゼもベルクリットさんのことは特別だと感じていると思います」

「ほお。それは?」

「はい。これまでミュゼと行動していて何度もベルクリットさんと会ったりすれ違ったりしましたが、ミュゼはよくベルクリットさんをじーっと見つめていましたよ。話をする時もなんか力が入っているようでぎこちない様子です。遠くにベルクリットさんを見つけてもじーっと見て俺が声かけても生返事で」

 と苦笑するとハンスも笑みをこぼした。

「そうか。ミュゼは侍女としてはなかなかのものだと思うけど、こういうことにはなかなか積極的になれないヤツでな。兄としてはなかなか歯がゆいんだ」

 となかなかを連発していた。

「なあコースケ。俺は二人には幸せになって欲しいと思ってるんだ」

「俺もそう思います。お似合いだと思いますよあの二人」

「そうだな。そこでだ」

「はい」

 と周りには誰もいないのにひそひそ話をする男二人。

「-というのでどうだ?」

 と、さもいい考えだとキラッと白い歯を輝かせるハンス。

「ははは、はい。いいんじゃないでしょうか」

 功助は少し苦笑するがハンスの楽しそうな笑顔にまあいいかと思い表情には出さないようにした。そしてその内容とは三文芝居のような、ものだった。

「よしっ。決行は明日の昼前。城下の中央公園。いいなコースケ」

「あ、はい。ちゃんとミュゼを連れて行きます」

「ああ。俺もベルクを連れ出す。そしてそのあとは。イヒヒヒヒ」

 と小悪党のように笑うハンス。まったく、いたずら好きのガキ大将みたいだと苦笑してしまう功助。




 ・・・39日目・・・



「ここで何があるんですかコースケ様」

「ん?まあ、そのうちわかるから、もうちょっと待ってて」

 功助は今ミュゼリアとともに城下の中央公園にいる。あのトリシア母子たちと出会った公園だ。この間と同じベンチに座っている。何気なくを装い周りをきょろきょろ見渡すと不自然な男たちが不自然にウロウロしているのが確認できた。

「はあ」

 と小さくため息をつく。

「どうしたんですかコースケ様?」

 隣に座るミュゼリアが小さなため息に気付いたようだ。

「あっ、いや。なんでもないよ。それより悪かったな、忙しいだろうにこんなとこに連れてきて」

「いえいえ、そんなことないです!」

 ときれいな薄紫の瞳を真ん丸にして手をブンブン振る。

「私の仕事はコースケ様に使えること。コースケ様が行かれるところなら喜んでご一緒させていただきます」

 とベンチから立つと功助に頭を下げる。

「あっ、いや。そんな頭なんか下げなくていいから。な、ミュゼ。座ってくれ」

「は、はい」

 と再びベンチに腰を下ろすミュゼリア。

「それにしても」

「ん?それにしても、なんだミュゼ」

「はい。ここの公園ですが、今日はやたらに体格のいいお方ばかりで不思議だなと」

「うっ。ま、そ、そうかなあ。前に来た時もこんなんだったと思うけど」

「そうでしたっけ?」

 と小首を傾げて周りを見る。相変わらず不自然なごつい男たちが不自然にウロウロしている。

 功助はばれないか大丈夫かと思った時、公園の入口から女性二人と男の子が入ってきた。

「コースケ様、あれ?トリシアさんたちじゃないですか?」

 と公園の入口を指さす。

「へ?あ、ああ、そうだなトリシアさんたちだな。どどどうしたんだろ」

 トリシア母子たちは功助たちを見て驚いたような顔をして軽く会釈をした。でも少しぎこちないかなと功助。

「お姉ちゃ~ん!」

 テトが手を振りこっちに走ってきた。

「こんにちはテトくん」

 ベンチから立つとミュゼリアはテトに笑顔でお辞儀をした。テトもミュゼリアの前までくるとペコッと頭を下げた。

「こんにちはお姉ちゃん。こんにちはコースケ様」

「あ、ああこんにちはテト」

 功助も挨拶をする。

「コースケ様ぁ、こんにちはですぅ」

「コースケ様。あ、えーと、こんにちは」

 リンリンは元気よく、トリシアはぎこちなくそして功助と目が合うと「ははは」と不自然に笑った。

「お散歩ですかトリシアさん」

 とミュゼリア。

「あ、はい。ちょっと公園にでもと思いまして」

「そうなんですぅ。たまには公園もいいものですぅ」

 とニコニコのリンリン。

「ん?」

 と首を傾げるテト。

「どうしたのテトくん」

「母さんが公園に行ったらお姉ちゃんがい……」

「ああ!テト。久しぶりに会ったんだからこのミュゼに、お姉ちゃんに魔法見せてもらったらどうだっ!」

 と何故かテトの言葉をさえぎって功助は声を大きくした。

「えっ、なんですかテトくん?」

「ま、まあまあ、いいからいいから。なあミュゼテトに魔法見せてやったらどうだっ。なあテト、魔法見たいよなあ。なあテト」

 とテトの両肩をパシパシ叩く俺。

「う、うん。ねえお姉ちゃん魔法見せて」

 と笑顔でミュゼリアにキラキラとした瞳を向ける。

「は、はあ、いいですけど。コースケ様?」

「な、なんだミュゼ。俺なら大丈夫だから、テトに魔法見せてやって。なっ」

「は、はあ。わかりました。それじゃテトくん。魔法見せてあげますね。ちょっと公園の端っこに行きましょうか」

 と頭を撫でるとテトと手をつないで端の方に行く。

「ふ、ふう。疲れた…」

 と功助。

「ふふふ。大変ですねコースケ様」

 と苦笑するトリシア。

「さあコースケ様ぁ。行きましょうかぁ」

 と功助の左手を引っ張るとどんどんと公園の外に連れていくリンリン。ミュゼリアは功助に背中を向けているので気付いていないようだ。

 功助は外にでるとチラッと後ろを振り返る。水魔法で噴水を吹き上げているところだった。テトは手を叩いて喜んでいる。

「それでそれでぇ、このあとはどうなるんですかぁ」

「あ、ああ。確か通り魔が偶然通りかかって…」

 と言ってると公園の方から怒声が聞こえてきた。

「おらぁ邪魔だ!どけどけえ!」

 ドドドドドドと地響きにも似た足音をたてて二足歩行の大トカゲが走ってきた。その後からは緑の騎士が数人追いかけてきた。

 そしてその大トカゲはあろうことか前方でテトに魔法を見せているミュゼリアにぶつかるとその小柄な体を数メートル吹っ飛ばした。叫び声を出す暇もなくミュゼリアはゴロゴロと転がるとうつ伏せで倒れた。

「ちっ!」

 大トカゲもバランスを崩し転びかけたがなんとか姿勢を戻すと今度は倒れて身動きのできないミュゼリアをそのゴツゴツした腕で抱えると緑の騎士に向かい叫んだ。

「おらぁ、近づくな!近づいてみろ、この女をぶち殺すぞ。いいか!動くなよ!」

「くそっ」

 功助はその光景を見て唇を噛む。

 テトも大トカゲのしっぽにでもぶつかったのだろうゴロゴロと転がったが周りにいた不自然な男たちにすぐさま助け出されていた。

「テ、テトっ!」

 それを見たトリシアも真っ青な顔をしてテトの下に行こうとしている。

「ちょっと待ってください。今行くのは危険です!」

 とトリシアを止める功助。

「コースケ様ぁ。あ、あれはどういうことなんですっ!」

 とリンリンも拳を強く握り大トカゲを睨んでいる。

「あ、あれは違うと思う。ハンスさんの計画にはあんな奴いなかった」

「ということは、偶然なんですねコースケ様」

「あ、ああ。でもどうすれば…」

 と公園の中に入った功助とトリシアとリンリンだが大トカゲはまた叫んだ。

「動くなっつってるだろうが!いいか、全員うごくなよ」

 その大トカゲは自分の鋭い鉤爪を気絶しているミュゼリアの首筋に当てている。

 すると緑の騎士の後ろから地を這うような怒りの声が響いた。

「その女を離せ」

 おそらくこの場にいる者全てはその一声を聞いただけで背筋に悪寒にも似た振るえが走っただろう。大トカゲも恐ろしかったのだろう一歩後退ってしまった。その時、首筋に当てていた鉤爪で気絶しているミュゼリアの首の皮を薄く切ってしまい赤い血が一筋流れた。

「おいリザードマン。よくもその女に傷をつけてくれたな。もう許さん。覚悟しろよ」

 とその男は腰の剣の柄に手を乗せた。

「動くな!剣から手を離せ!」

 と大トカゲ。しかしその身体は細かく震えている。

「ちっ」

 その男は剣の柄から手を離すと再び大トカゲ、リザードマンを睨んだ。睨まれたリザードマンは震える声で言った。

「き、貴様何者だっ!」

 リザードマンはその男の眼光に腰がひけているようだ。それもそうだあの目に睨まれて平然としてる奴なんてそうはいないだろう。

「俺か?俺は白竜城青の騎士団団長、ベルクリット・ラウディーだ」

「ちなみに俺は副団長だ」

 とベルクリットの横でハンスも同じくリザードマンを睨んでいた。

 とその時、

「う、うぅ」

 気絶していたミュゼリアが目を開いた。状況判断ができないようでその薄紫の瞳をきょろきょろさせていたがようやくじぶんに起こったことを理解したようだ。

「これは…」

「安心しろミュゼリア。今助けてやるからな」

 とベルクリット。

「はい。ベルクリット様。それよりもテトくんは、テトくんは大丈夫でしょうか?」

 鉤爪で切られた首が痛むだろうがミュゼリアは辺りをキョロキョロすると、緑の騎士に助けられたテトがトリシアさんに抱かれている姿を見た。

「よかった」

 ミュゼリアはベルクリットを見つめると安心したように微笑んだ。

「や、やかましい!静かにしろこの(あま)!それから団長さんよぉ、それ以上近づくんじゃねえぞ。いいか、わかったらここから離れろ!」

「ふふ。何をバカなことを言ってるんだリザードマン。もうお前は逃げられん。おとなしく投降しろ」

「うるせぇ!いいから離れろ!」

 その時功助は見た。あのゴツゴツした腕で捉えられているミュゼリアの右手の先がほのかに輝いているのを。そしてその指先を気づかれないようにリザードマンの方にゆっくりと向けていくのを。

「わかったわかった。離れてやるからそんな怖い顔しなくてもいいぞ」

 とベルクリット。ハンスもその言葉に続いてこう言った。

「ゆっくりと下がるから落ち着けよリザードマン。いいか下がるぞ。五、四、三、二、一」

 カウントダウンをするハンス。そして、

「ゼロ」

 そう言った瞬間ミュゼリアの手の先から勢いよく水が発射された。

 ウギャァッ!」

 ジェット水流のようなその水はリザードマンの下顎にぶち当たるとその巨体をのけぞらせた。

「うおりゃああああああああぁっ!」

 その瞬間ベルクリットは目にもとまらぬ速さでリザードマンに近づくとその顔面に重いストレートパンチをお見舞いした。

「グヘッ!

 しかしさすがはリザードマンだ。少し体制を崩したがそれだけだった。しかしそれだけで充分。ベルクリットはリザードマンに拘束されていたミュゼリアをその一瞬で助けるとそのたくましい両腕でミュゼリアを抱きかかえた。

 体制を戻しかけたリザードマンに次はハンスが強烈な左フックをそして間髪入れずに右掌底を下顎にお見舞いする。よろめくリザードマン。そしてこれで最後だというようにハンスは右回し蹴りをそのどてっ腹にめり込ませた。

「うぐぐぐぐっ!」

 強烈な蹴りを受けたリザードマンはうめき声とともに地に伏した。

 ベルクリットは少し離れた位置からリザードマンを倒すハンスをみていた。しかもその両腕にミュゼをお姫様抱っこで抱いたまま。

「あの隊長さんかっこいいですぅ。それにお姫様抱っこされてるミュゼがぁ、とても幸せそうですぅ。うぅ、うらやましいですぅ」

 と胸の前で手をグーにしてリンリンが少し頬をふくらませていた。

「よかったぁ」

 とホッと息をつく功助。


 功助はベルクリットにお姫様抱っこされてるミュゼリアのもとに急いだ。

「ミュゼ、大丈夫か!」

「あっ、コースケ様。はい。私は大丈夫です。ちょっとケガさせられてしまいましたが問題ありません。ご心配おかけいたしました。それよりコースケ様はおケガはありませんか?」

 と功助のことを心配するミュゼリア。

「あ、ああ。まったく問題ないよ。それよりその首の傷直しておこうか。ちょっと失礼」

 と言ってミュゼリアの首筋に手を近づけて治癒魔法の光を当てた。

「これで大丈夫」

「ありがとうございますコースケ様」

 と笑顔のミュゼリア。

 するとベルクリットはすまなさそうにつぶやいた。

「もうちょっと早く来られてたらミュゼリアにケガなどさせなかったものを。すまないミュゼリア許してくれ」

 と腕の中のミュゼの首元を見て頭を下げるベルクリット。

「そそそそんな私なんかに頭をお下げにならないでくださいベルクリット様。こうやって助けていただいたのです。とてもうれしいです。ありがとうございます」

 と微笑んだ。

「そうか。そう言ってくれると俺もうれしい」

 とベルクリットも微笑む。

「(二人の世界に入ってるなこれは。そっと離れるが吉だな)

 とゆっくりとその場を離れハンスの許へ行く功助。

「ハンスさん」

「おうコースケ。ベルクとミュゼリアはいい雰囲気じゃないか。よかったよかった」

「はい。で、あのリザードマンはいったいなんだったんですか?あの計画にはあんな獣人はいませんでしたよね」

 と拘束されて身動きのできないリザードマンを見る。

「ああ。今緑の騎士から聞いたんだがあのリザードマンは食い逃げをしたらしい」

 と苦笑した。

「へ?食い逃げ?それだけですか?」

「ああ。でもその量がな。特性ランチを二〇人前食ったそうだ」

「二〇人前?まあ、それくらい食べそうな体格してますけど」

 と功助も苦笑した。

 そして、功助とハンスはリザードマンに吹っ飛ばされたテトとテトを優しく抱きしめるトリシアの傍に行く。

「大丈夫かテト」

 と功助はトリシアに抱きしめられているテトを見る。

「うん。僕は大丈夫だよ。ちょっとあっちこっち擦りむいたけど」

「そっか。痛かっただろ。今治してやるからな。ちょっとこっち来てくれるか」

 と功助はテトを手招きする。

「はい」

 テトはそういうとトリシアの腕から離れるとトコトコと功助の前に来た。

 テトの言うとおりあっちこっちに擦りむいた傷がありところどころ血が滲んでいるところもあった。

「ごめんなこんなケガさせて。さあ、治すぞ」

 功助は掌から治癒の光を出すとテトの身体を魔力で包んだ。そして数秒。光は消え傷も完治した。

「うわあ、すごい。コースケ様すごい!ケガがみんな治っちゃった!」

 と興奮している。

「コースケ様。ありがとうございます」

 トリシアが功助に頭を下げてきた。

「いえ、もともと俺たちのせいでテトを危険なめに合わせたんです。ほんとすみませんでした」

 と功助も頭を下げる。

「あ、いえ。そんな、私たちに頭などお下げにならないでください」

 と両手をパタパタさせておろおろとしている。

「いや、それでも誤らせてください」

 と横からハンス。

「本当に申し訳ない」

 とハンスも頭を下げた。

「あ、あ、あ、い、いえ…」

 とトリシアはもうパニック寸前だ。それもそうだろうここ城竜城の精鋭の中の精鋭の青の騎士団の副団長が自分に頭を下げているのだ。どうしていいかわからずおろおろとしているトリシア。

「この埋め合わせは必ずさせてもらいますので」

 とにっこり笑顔のハンス。

「は、…はい。い、いえ、お気になさらないでください!ほんとに、ほんとに、お気になさらず!」

 とトリシアはほとんど放心状態だ。おまけに少し顔が赤かったりする。

 トリシアたちと話をしているとベルクリットがミュゼリアを抱いたままこちらに歩いてきた。

「テトくん、ごめんね。怖い思いさせてしまって」

 とミュゼリア。

「ううん。大丈夫だよお姉ちゃん。でも、また魔法見せてね。今度はもっと凄いの」

「はい。今度はじっくりと見せてあげますからね」

 と笑顔のミュゼリア。

「それから、兄上。ありがとうございました」

「ん?ああ。こんなことは日常茶飯事だ。気にするな。それよりベルク」

「なんだ」

 とハンスを見る。

「なあ、言いたくはないんだが…。お前いつまでミュゼリアを抱いたままでいるんだ。それにミュゼリア。お前いつになったらそこから降りるんだ?」

 とニヤニヤ顔で二人を見るハンス。功助も二人を見る。

 トリシアもテトも、そして周りにいる騎士たちも二人を見る。

「はぎゃああああああああっ!」

「ふにゃああああああああっ!」

 となんとも言えない奇声を発しあわててミュゼリアを下ろすベルクリット。サッと降りたミュゼリアはうずくまり両手で顔を覆っていた。

「いいねえ二人とも。はははははは!」

 とハンスは指を差して大笑いをしている。

「ははははは」

 功助も笑う。

 トリシアたちも微笑ましそうに二人を見ていた。

 その横でリンリンは、

「いいなあ、いいなあ」

 と二人を指を咥えて見ていた。


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