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「……あん? んだ、急に鬼共の勢いが減りやがったな」

 そう言いながら目の前の鬼の首をへし折ったのは近衛竜馬だった。彼は妙に思いながらも、次々と立ち向かってくる鬼共の身体を全て素手でグチャグチャにしていた。


 よく鍛えられた身体だった。柔軟な筋肉がバランスよく全身についている。しかし、だからといって先程からやっているように、素手で人間を遥かに凌駕する身体能力を誇る鬼の身体を、まるで粘土でも千切るかのようにグチャグチャに出来る理由にはならない。人であるはずなのに、人一人が持つにはあまりにも強大過ぎる戦闘能力だった。


 そうした姿は、通り過ぎる間に鬼の首を華麗に刈り取る久遠を想起させたが、その画は対照的だ。竜馬は肉叩きでミンチにするように、久遠は切れ味の良い包丁で肉の筋だけを切り取るように。同じ戦闘だというのに、二人の風景にはこれだけの違いがあった。


「竜馬殿! この場の鬼を退治すれば、此度の戦は我々の勝利です! 既に東西方面の鬼は退治済みとの事。もうじきこちらにも援軍が来る手はずです!」

 暴れ狂う竜馬になんとか着いてきていた槍兵の一人が隙を見つけて竜馬に伝えた。


「援軍だあ? いらねえよ、んなもん。これぐらいの数俺一人で十分だ」

 竜馬がこれぐらい、と言った数はざっと見ても百に近い数だった。戦闘となると、真っ先に中心地に向かう竜馬からすれば確かにこれぐらいなのかもしれないが、そうでない普通の兵からしてみれば、この数はともすれば撤退を考慮する程度には多いと感じられた。


「しかし!」

「うるせえ! 信長にも言っとけ、後は俺が片付けるから飯の準備でもしとけってな」

 尚も食い下がる槍兵に竜馬は鬱陶しそうに言い放つ。

「……わかりました」


 槍兵は馬に乗り、追いついてきた他の兵と共に集団を組みその場を去っていった。

 それを確認した竜馬は両の手をポキポキと鳴らしながら鬼共の集団にその身を埋めていった。


   ○


 きっちりとスーツを着こなした、黒いハットを被った初老の男性が椅子に座りながらこちらを観察するように見ている。男性の表情は顔の前で組んだ手に隠れて伺えない。

テーブルに置かれたコーヒーの湯気にチラリと目をやると、不意に男性は口を開く。


「あまねく世界に煌めきを」

 男性は仰々しく言うと、更に言葉を続ける。

「扉は開かれた。この世界がどのような結末を辿るのか、私は楽しみでならない。ささやかながら、君の力になるだろう協力者を託した。彼女をどう使うかは君に一任する」


言葉の意味について考えていると、視界が白み始めた。

「残念ながら、今宵はここまでのようだ。では、ご機嫌よう……」


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