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プロローグ

『東京で鬼の骨発掘か?』


 記事の見出しはこうだった。曰く、東京都千代田区で学生が発見したとの事だ。

当初は誰もが懐疑的で、お茶の間を賑わすフェイクニュースの類だと考えられ、バラエティ番組などで僅かにネタとして組み込まれる程度だった。しかし、時が経ち、専門家による本格的な検証が進んだ結果、どうやらそれは本物である可能性が非常に高いと結論付けられた。


 人骨では到底及ばない骨密度、異様に発達した犬歯を始めとしたもはや牙と呼んでも差し支えない程の歯、そして何より、人にはあり得ない角。


 それからの展開というものは目を見張るものがあった。本物である可能性が高いと発表されてから掌を返したようにテレビでは特集が組まれ、連日連夜その話題で持ち切りだった。胡散臭い専門家の果てまで登場した。


 加えて、今まで一度としてそんなものは発掘されてこなかったというのに、せきを切ったように全国各地で大量に出土し始めたという不可思議な事実も、人々の興味を引くのには十分過ぎた。


 そんな中、発掘団の一員である父に連れられ、織田(おだ)慶一郎(けいいちろう)は射殺さんばかりに照りつける夏の日差しの中最初に鬼の骨が発掘された現場にいた。


「ったく、父さんもわざわざ夏休みを満喫してる大学生を家から引っ張り出す事もないだろうに……」

「やかましい! お前はこうでもせんと家から出ようとしないだろ!」


 慶一郎の独り言は、少し離れた位置で作業していた慶一郎の父の耳に届いていたようだ。


「それは偏見だよ。俺だって友達に誘われたら家から出るさ」


 慶一郎は半ばふてくされながらザクザクとつまらなさそうに手にしたスコップで土をほじくる。すると、ガツンと何か金属同士がぶつかる音がした。


「父さん! なんかあった!」

「でかした! 慎重に掘れ。可能な限りスコップは使わずに手で土をかき分けるんだ。俺もこっちの作業が終わったらそっちを手伝いにいくから」

「はいよー」


 父に言われた通り、慎重に土を手でかき分けていくと、蒼色をベースに金色のラインで装飾された柄のような出てきた。


「これは、刀かな?」


 更に掘り進めていくと、予想通り一振りの刀が出土した。


 その刀を一言で表すならば土に塗れてなお「美しい」。ただこの一言に尽きた。処女の肌の如き艶やかな白の鞘に全てを包み込むかのような金色の鍔。


 相当な年月土に埋もれていたはずなのに、それは今尚素晴らしい輝きを放っていた。


 確実に美しいだろう刀身が見たくてたまらない。ただ一つの思いの元、慶一郎は吸い込まれるように刀を鞘から抜き放った。その時だった!


 突如として慶一郎を襲う浮遊感。身体が何処かへと移動しているのがわかる。酩酊しそうな程の間をジッと耐えていると、不意に光が溢れた。出口だ! 根拠のない考えはしかし見事に的中した。

 


先の話ですが、勘違いパートは別視点で描きます。

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