リリィとの買い物
「まったく、私が嫁になったからっていつでも求めていい訳じゃないんです!私じゃなければ愛想つかされちゃいますよ!」
そうぷりぷりと怒っているリリィも可愛いなぁ、とくだらないとかを考えながら俺は口を開く。
「私じゃなければってことはリリィは嫌じゃないんだな」
俺が意地悪な顔でそう聞くと、リリィは恥ずかしそうに顔を赤らめながら答える。
「まぁ、ずっとお慕いしていた人ですから…」
危ない、危ない、また朝っぱらから行為に及ぶところだった。
だがそんなにふざけている時間もない。
子爵様のパーティーは来週、それまでにリリィのドレスや装飾品、それと貴族のパーティーでの礼儀を詰め込まなければならない。
「まあ、とりあえず今日はリリィの服を買いに行くぞ」
「ということは…デートですね!」
嬉し恥ずかしそうに言うリリィを見て、自分を律するの膨大な精神力を使うのだった。
♢
「えぇぇ⁉︎こ、ここで服を買うんですか⁉︎」
貴族街へと続く大きく整備された道にリリィの驚きの声が響く。
そのせいで周りの目を集めたことに気がついたのか、顔を赤くする。
うーん、やはり可愛い。
「まあ、この街の領主様に会いに行くんだからな、それなりの格好をして行かなきゃならないんだ」
「まぁ、それはわかりますけど…」
リリィが驚くのも無理はない。なぜなら俺たちの前にある店がこの街一番、貴族御用達の服屋なのだから。
「「いらっしゃいませ」」
店に入ると若い女の店員が二人と荷物持ちであろう男が一人。
特に荷物は持っていなかったのでそのまま店員に話しかける。
「商人のユータだ。今日は彼女のドレスを作ってもらいに来た」
すると奥から一人の男、店主が出てくる。
俺も前にここに服を作りに来たので顔を覚えられていたのだろう。
「これはこれは、ユータ様。直ちに採寸させますので、お連れ様をどうぞこちらに」
そう言ってリリィはなぜか緊張しながら若い店員に連れて行かれる。
「して、ご予算の方は…」
リリィが離れたからだろう、店主が値段の話をする。
値段で女を恐縮させないようにと気を使っているのだろう。さすが高級店だな。
「領主様の目に入るものだ。金に上限は設けない。我が商会として恥ずかしくないものを頼む」
その言葉を聞くと店主の頰が緩む。
「わかりました、急いで作らせますので来週の始めくらいには完成してあるでしょう。送り届けますか?」
「ああ、頼んだ」
そう言うと店主は離れ、採寸が終わったリリィが戻ってきたのでそのまま店を出る。
「これからどちらに向かわれますか?」
少し歩いたところでリリィが聞いてくる。
俺もデートということで、少し調べて来た。
「そこの角に、美味しいスイーツ屋があるらしいぞ。寄ってくか?」
「ほんとですか!」
そう言って顔をほころばせるリリィを見ると本当に彼女を妻にしてよかったと思える。
だがしかし、パーティーも間近に迫っているのでなかなか遊べないだろう。
あとは貴族に対する礼儀や常識を教えてくれる人だけだが…あいつしかいないか…




