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始まり①主人公na俺の話。

 裸。

 自己顕示欲が強い冒険者の戦闘スタイルにおいて、最高のパフォーマンスとなる状態を示す言葉である。全裸と言う意味では無い。効果的な武器防具を装備せずに魔物、魔獣に立ち向かう事を俗に裸と言う。


 そして俺は裸。


 決して剣を振るうと岩がチーズの様に裂ける訳では無い。俺の手が痛いだけ。

 決して俺がひと蹴り地面を駆け出すと大地が歪み、大きなクレータを作る訳では無い。足の腱に靴擦れが出来るくらいだ。


 俺は弱い最弱だ。しかし裸。


 何故そんな俺が裸かというと。

 戦闘において武器は命。俺の武器いのちはショートソード。誰もが憧れるクールなソードアクション。指や腕、体の周りをクルクルさせて、俺、達人ですよーっ的なアピールるするアレだ。それの練習している最中に手を滑らせた俺は武器いのちを「カランカラン」と軽い音を奏でさせ断崖絶壁の谷底に落とした。



「……ああ……俺の命が……地の果てに……」


 その時俺は今の自分の命の重さや価値を計り知る事が出来た気がした。


 着ている服はペラペラで薄茶色の布の服。枝でも引っ掛ければ破れそうなぐらいな薄さ。至る所が破れ、それ隠す為に俺は10枚100ギルお徳用ワッペンを大人買いして、破れた箇所にピンクの可愛い兎さんを所狭しと縫い付けている。


 ルンルンと笑顔を浮かべ鏡の前でクルクル回っていた俺だったのだが。



「んだよ!テメェーら!チラチラ俺を見るんじゃねーよ!ファッションじゃねーよっ!応急処置に決ってんだろっ!文句あんのか!ゴルァーーーッ!」


 そんな服を着る俺を、痛々しい目で見る冒険者達に気付かされた。



 もうピンッときたであろうか?

 そう俺にはお金が無い。新しい武器、防具を買うギルが無い。


 ギルとはこの世界の通貨であり、ギルを稼ぐ為に冒険者になる奴も多い。


 だから俺は裸。そして俺は冒険者。


 少し普通の冒険者とは違い、冒険に出る為に必要な物資武具や娯楽に充てるギルは無いが、食住にはこと困り無い、かなり恵まれた環境に身を置く冒険者。それが俺だ。



 今そんな俺の前には顔の彫が深い緑色の小人が佇む。そいつの名をゴブリンと皆は呼ぶ。

 ゴブリンも勿論裸。たまに空気を読めないゴブリンが武器を所持している事があるが、そんな奴は俺は無視する。男は素手で語り合うもんだろ?


 武器を失ってからの俺の戦いは全て素手。

 優越感に浸り、ゴブリンとの戦いを舐めてる的な事を言っている感じに聞こえなくもないが決してこれは遊びでは無い。俺達冒険者は命のやり取りをしている。


 そうこれは命のやり取り。


 だから素手の俺は床に転がっている石を全力で投げる。安全マージンをシッカリ取り俺はゴブリンに適度な大きさの石を投げ、戦いを通して熱く語り合う。


 しかし、戦士として誇り高きゴブリンは何故か石は投げない。

 ゴブリンも石を拾う素振りは見せたりもするが、歯を食い縛り、目を充血させ、涙目で、力強く握った石を床に叩きつけるのだ……

 プライドで命を捨てる行為は馬鹿がする事だと俺は思うが、そんなゴブリンだからこそ裸の俺でもゴブリンに勝てる。


「グァハハハッ!ザコがぁーーーっ!」


 そう叫び。俺は一心不乱に石を投げ続けるのだ。


 聞いてくれ……これは命のやり取り……死ねばそれだけだ……卑怯では無い……そう言ってくれと俺は……言葉を石に乗せ、ミルミル悲惨な顔に変形するゴブリンに語りかける。


 これはパーティー戦では地雷と呼ばれる攻略方法で、ソロの俺には神技であり、その証拠に今俺はこの戦い方でゴブリンを倒した。


 ゴブリンはそんな俺をフッと鼻で笑い、見下すと、体から黒い煙を立ち上げその姿を変える。俺はいつものように戦闘でやるせない気持ちに苛まれ、こうして今回の戦闘でも命を繋ぎ止める事が出来た。



「ザコがぁ……そんな目で……俺を……俺を見ないでよ……」



 魔物、魔獣を倒すと『魔石』か『ドロップアイテム』を落とす。ドロップアイテムの出現はかなり低いらしい。


 だが俺場合は殆どがドロップアイテムになる。


 この世界の全ての生きる者は14歳になると神の加護の洗礼を受け、自分に合ったスキルを1つ得られるのだが、皆が『身体能力向上』とか『魔法効果増加』になる中、俺だけが『ドロップアイテム率上昇』とかふざけたスキルを授かった。


 そして倒したゴブリンもドロップアイテムを吐き出した。


 それは『ゴブリンの皮』。完全体だ。


 中身の無いスコスコのゴブリンを貰ってどうしろというのであろうか?誰がこれを貰って喜ぶのであろうか?ギルド組合に持って行っても、嫌な顔をされるだけで引き取ってもくれないだろう。ハッキリ言って出されても困るドロップアイテム。


 仕方がない……資源を大切にする星に優しい俺は、勿体無いので首の部分で2つに分けてゴブリンの顔を被ってみた。


 ふむ、肌に良いかもしれない。潤いは感じないものの密着感が半端ない。顔が引き締まる感じだ。


 顔がゴブリンになった俺。ダンジョンの水溜りで今の容姿を確認すると。


「おおっ!まんまゴブリンだ!」


 ちょっと感動した。

 しかし、完全主義の俺は服を着ているのが気に入らなかった。ゴブリンは大事な部分だけを隠し後は裸だ。だから俺はパンツだけを残して服を脱いだ。


「おおっ!とても良い感じ!」


 ちょっとテンションが上がってきた。

 顔と体の肌の色の違いはあるものの、寛大な俺はそれを無視した。


 そうやって水溜りを覗き遊んでいると、俺の肩をポンポンと誰が叩く。


 俺は肩をワナワナ震わせ。


「テメェーーっ!俺の邪魔をするとは万死に値する行為だぞ!」


 振り返るとゴブリンが3匹いた。


「やべぇーーーっ、ちょっと漏れたかも……」


 色々と大切なものを消失するピンチである。もう既に半分は失ったのかもしれない。


 しかもゴブリンは武器を持っている。

 ここは一先ず逃げなくては、俺は間違い無く死んでしまうだろう。取り敢えず戦う構えを見せて相手の隙を見て逃げる事にしよう。俺は戦う姿勢を見せ、ゴブリンの動きに神経を注ぐ。


 するとゴブリンは何を思ったのか武器を持たない俺の前に武器を投げた。

 それは刃先がボロボロのナイフであったが無いよりは数倍マシであり、それを俺は拾うとゴブリン達は腕を組み。ウンウンと頷いて、親指を天に向かい突き立てたのだ。


「なっ!……おっ、俺にくれるのか!?」


 ゴブリン達は無言で俺の肩をポンとひと叩きして笑顔をくれた。

 その時、俺は理解する。


 俺達は仲間ともだちになったんだってな。


 言葉はどうも通じないみたいだったが、それでも俺達には言葉を超える何かで繋がっている。

 そんな俺達は自然と肩を組み、足を高々と交互に上げ、それぞれが全く異なる歌をダンジョンに響かせるのは、歌は万事共通の心を豊かにさせるエンターテインメントだという事だろう。


 それはそうと、そうここはダンジョン。初心者から中級者の冒険者が徘徊するダンジョンの1階層。

 1階層という事は、全ての冒険者がこの道を通るという事で、当然物陰から。



『ファイアボール』



 ゴブリンの俺達は普通に冒険者から攻撃されるのは当然のライフイベントだった。


「ジョッ!ジョバンニーーーッ!」


 俺が勝手に付けたゴブリンのリーダー的存在。ドン・ジョバンニが炎に包まれ、成す術を持たなく茫然と佇む俺達の目の前で、その何処か尖ったように見える姿を、角々の魔石に変えた。


「チキショウーーーッ!よくもジョバンニをやりやがったな!待ってろジョバンニ。仇は必ず俺が取ってやる!」


 しかし.............。



『ファイアボール』



「ロッ!ロックスターーーッ!」


 甲高い声のゴブリン。ロックスターが炎に包まれ、何処か惹かれるカリスマ性を持つ姿を、チリチリの魔石に姿を変えた。


「ロックじゃなくてッ、レゲエかよッ!」


 それよりも……


「チキショウなんだってんだよ!?俺達が何したっていうんだよ!出てこいよ!姿をみせろよ」


 俺の声を聞いたであろう冒険者達が。


「えっ!?ルル!お前ルルなのか!?」


「誰だよ。隠れてないで姿を見せやがれ!この卑怯者!」


 ギャーギャー騒ぐ俺の前に冒険者達は柱の影から姿を見せた。


「あれ?何だ。キース達かよ。ビックリするじゃないか。心臓に悪いぞお前ら」


 その冒険者達は俺のよく知る冒険者。キース、グラム、アイリ、リア。



 キースは片手剣とバックラーを持つ男剣士。

 急所となる部分に簡単なアイアン製の鎧を纏う、ヒューマン。


 グラムは大剣を持つ男戦士。

 アイアン製のフルヘルム、上半身獣の毛を羽織る、ハーフドワーフ。


 アイリは攻撃特化の女魔法使い。

 ローブに尖がりハットのハーフエルフ。


 そして最後にリアは回復・支援役の女信仰系魔法使い。

 法衣を纏う、ハーフシルフ。



 俺とキース達の前で立ち塞がる、踊りが得意なゴブリンのジャクソン。こいつは一体どんな魔石になるんだ?と大変興味をそそられる所だが、グッと我慢した大人の俺は、ジャクソンを背後からおもいっきり殴りつけると。


「いけっ!逃げろジャクソン。お前は死ぬべきではない。お前だけは……俺の為にも生きてくれっ!」


 ジャクソンは殴られた頬を手で押さえ暫く”鬼渡”のピン子的に無表情な冷え切った顔を作るが、俺の言っている意味を理解したのであろう。俺にペコリと深く頭を下げてその場を立ち去り奥に駆け出した。


 何度も俺の方に振り返り手を上げ、別れを惜しむ可愛いジャクソン。ウンウンと後ろ姿を見送りっていると。



『ファイアボール』



 と違う冒険者に倒されたジャクソンの魔石は、地面に落ちると共に「Pooow!!」と音が鳴った気がした。



 キース・グラム・アイリ・リアはそこそこ有名な同じギルドに所属している。俺の同期で、駆け出し冒険者の狩場であるこのダンジョンの顔馴染み。

 で、俺はというと創立したての最弱ギルドに所属しギルド長含め冒険者数たったの2人しか居ない侘しいギルドである。


 今居る俺を含めて5人にはギルドに所属している証明の刺青が入っている。

 俺とキースは貧民出身で、残り3人は元奴隷。ギルドに所属と同時に、奴隷の者は奴隷の印の上からギルドのシンボルの刺青を入れて、そうでない者もギルドの刺青を入れる。元奴隷であった事を隠す為であった。


 冒険者の世界は完全能力主義、奴隷だろうが、貴族だろうが、身分に関係無く上下関係は能力で決まる。奴隷が冒険者を目指すのは当たり前の事であり、奴隷には種族間ハーフが多く、普通の人間より基礎能力が長ける者が多かった。


 冒険者の8割が奴隷出身と言われており、次に貧民、物好きな貴族、一般の村人となるらしい。輝かしい功績を挙げた奴隷が貴族となり、元奴隷である事を隠す為に、奴隷の印の上に刺青を入れた事が始まりとなるそうだ。




 やっと俺に出来た3人の仲間ともだちを失い泣きそうなボッチ俺にキースが。


「なっ、なぁー。ルルその顔なんだ?」


「ん?なんだよかたきがぁぁ、気安く俺に話しかけてんじゃねーよっ!俺の顔が何だってんだよっ!ざけんなよコラぁぁああーーーっ!」


「ふざけてるのはお前だろ?……お前の……顔ゴブリンじゃん」


「テメェー!ゴラルぁぁああーーーッ!誰がゴブリンだって?ざけんなよ。テメェーーーッ!あんな下等な化け物と一緒にするんじゃねーよ!俺にだってな男の譲れないプライドがあんだよ!顔がゴブリンだって?ウググググっ」


 ムキーっとなる俺はキースをポカポカと殴って、「キースが俺の事をザコと同類視するよっ」メンタルの弱い半泣きの俺はリアの豊満な胸に「グへへへッ!それを俺によこせっ!」と、泣き付こうとしたら逃げられた。

 泣きそうな俺の横目で、何かを警戒しソワソワしながらペッタンコの胸を腕で隠すアイリを俺は無視した。


「ホント意味わからんなお前は。水溜まりで自分の顔見てみろよ」


 グラムが、リアに拒絶され物陰に座り地面にモジモジとリアの胸の絵を描く俺の肩をポンと叩いて、水溜まりを指差した。


 俺は涙を拭いながら水溜まりの場所へと足を進め。


「けっ……なんだてんだよ……ゴブリンって……ちょっと……ちょっと可愛いじゃないかよ」


 鼻下を擦り、色眼鏡全開の自分が大好きな俺はゴブリンを見直すしかなかった。そう割り切ってニヤニヤして色々とポージングを決めている俺に。


「ルルさん!せめて服着てくださいよ!」


 リアが美しい顔を俺から逸らしプーッと頬を赤く染め膨らませていた。


「どうしたんだよリア?そんな怒るなよ。俺の体締まっていい感じだろ?ホラッここの腹直筋いいラインしてるだろ?いや、やっぱりお勧めは腹斜筋かな?まぁ一部の俺のファンには腹横筋に一筋もいるけどな」


 と、リアの目の前で頭の後ろで腕を組み腰をグリグリしていると、アイリも、もの欲しそうに俺を見ていたのでチップ狙いでケツを引き締めアイリとリアの前を行ったり来たりしていると……


「「キャアアアアーーーーーーッ!ケダモノおおおーーーーーっ!!!」」


 リアとアイリに顔が大きく変形する程の往復ビンタを何度も喰らった。


 魔法を得意とする2人。非力である筈の2人なのだが、ステータスの低い俺にはリアとアイリのビンタは1発1発がヘビィ級のパンチ。


 キースもグラムも俺がか弱い冒険者だと知っているのにリアとアイリを止めてくれない。キースに縋ろうと近寄るも足でゲシゲシ蹴られ、グラムには近寄るなと顔に唾を吐かれた。


 キースとグラムが俺を見る瞳は完全に冷え切っており、壮絶なダメージを受け、力が抜け身動き取れなくなって、瞼が腫れ視界が狭まる中そんな2人は俺にニヤニヤと笑顔を振り撒いている様に見えた。


 暫くして、リアとアイリは測ったように死人一歩手前の所で攻撃を中止。気が済んだのだろうか……


 コホンと緩む顔は引き締めキースが……


「でルル。この後どうする?俺達と一緒に行くか?」


 死人一歩手前に俺を虐めのように誘ってくれたのだが……


「いや、もう帰る。多分後一発で俺は御陀仏する」


 リアをガン見してそう断った。

 腫れた眼で、じぃーっとリアを見ていると、呆れた顔をしてリアが。


「はぁーっ。分かりましたよ。ルルさん顔貸して」


 テクテクとリアの元に近付くとリアは俺の顔に手を添えて。


『ヒール』


 みるみる俺の傷が塞がった。流石はリア、こう何度も回復されていると俺に惚れてんじゃないのかと勘違いしてしまいそうだ。


「うふふふっ。でも、今日もルルを助けたね。ラッキーだったよ」


 俺の隠れファンであるアイリが、俺を半殺しにしたアイリが微笑みながらそう言った。

 

「ああ、今日もいい事ありそうだな」


 俺の顔に唾を吐いたグラムも俺を見て失笑気味にそう言った。


 誰が広めたのか?駆け出し冒険者の中で囁かれる噂がある。俺を助けると御利益があるんだとか。

 甘えている訳ではないのだが、非常に有難い噂だった。



「ルルさん。本当に私達と一緒に行かないんですか?」


「ああ、今日はもう帰るよ。誘ってくれてありがとうな」


「そっ……そうですか……絶対に真っ直ぐ帰って下さいね!寄り道したらダメですよ!ルルさんにはソロは無理なんですからね!」


 リアは始めは少し残念そうな顔をしていたのだが、直ぐに諫めるような表情を浮かべ俺に注意を促す。


「ああ、分かってるよ。リア。心配ありがとうな。俺は真っ直ぐ帰るよ」


「ねっ、ねぇールルさん。悪い事言わないですから、私達と同じギルドに移籍しないですか?……その内本当に死んじゃいますよ!ねっ!そうしましょうよ」


 そう言ったリアは挙動は不自然だった。眼は泳ぎ、手は落ち着きなく、足をクネクネ動かす。


「ああ、その内な……」


 俺の言葉にガックシと肩を落とすリア。それをニヤニヤしなから見るキースとグラムとアイリ。

 アイリがリアの肩に手を置き叩き耳元でゴニャゴニャと何かを呟くと。


「ちっ!違いますよーーーっ!」


 顔を真っ赤にしてポカポカとアイリの体を軽く叩いていた。



 リアの申し出は凄い有難い事なのだが俺は不合格の烙印を押された冒険者であって、所属を許可してくれたのが今のギルドだけで、悲しい事に移籍したくても出来ない........ってのが本音。



「じゃーな。頑張れよ」


 俺は体を出口に向け歩き始めると。


「おい!ルルーっ!服、服、忘れてるぞーっ!」


 グラムはそう俺を呼び止め服を投げてくれた。


「サンキューな。グラム」


「こいつもお前さんのだろ?ホラよっ!」


 と『ゴブリンの皮』首から下を俺に投げた。それらを受け取り出口に歩き出した俺にキースが。


「ルルーーっ!今日もいつもの酒場で待ってるからなっ!」


 俺は歩みを止めず軽く手を振りそれに答えた。



 ・

 ・

 ・

 ・



 ギルド組合。

 ギルド組合は魔獣・魔物を倒した際の魔石・ドロップアイテムをこの世界の通過で換金してくれたり、クエストの斡旋をしてくれる場所でもある。

 人気の冒険者やギルドはギルド組合を通さず直接ギルドに依頼するのだが、人気の無い冒険者やギルドは主にこのギルド組合の斡旋するクエストを受け名を世間に売る事になる。


 「これはこれは、ルル様今日はどういった御冗談を?」


 こんな事を言うギルド組合受付嬢のライラ。猫耳の彼女は俺を馬鹿にするのが趣味らしい。いや、このギルド組合にいる全員かもしれない。俺はギルドで軽いイジメを受けている。


 何と言えばいいのだろうか?俺は既に冗談をかましているつもりなのだが……いや、待てよ。ふとギルド組合に着くまでの道のりを思い出す。


 ギルド組合に着くまでの道のり、ここまで俺は4組の冒険者パーティーとすれ違い、門兵、街の人々に出会い此処まで来たのだが..............。


 俺の顔は今ゴブリン。体はパン一。なのにも関わらず何故皆は俺の顔を見て瞬時に。


 冒険者達は。


「ん?……ああっ!……やぁルル。もう帰るのか?余裕だな。たくお前はホント恵まれてるよな?羨ましいよ」


 門兵のオヤジは。


「え?……ああっ!……やぁルル君。今日も早いね。一番乗りだよ。いいねぇー俺もそんな生活してみたいもんだ」


 街の人々は。


「うん?……あーーーーっ!ヒモのルルだ!何か奢っておくれよ」


 そしてギルド組合ではこんな調子だ。


 おいっ!お前らっ!ちょっと待てっ!一体お前らは俺のどこをどう見て俺だと判断しているのだ?おかしいだろ?ちょっとその辺詳しく聞かせろと……


「……なぁライラ。一つ聞くが……お前は俺のどこを見て俺だと判断しているんだ?」


 と聞いたら、俺から目を背けて。


「……私忙しいんですから用がないなら帰って下さい」


 そう言って客の前で肘をつき、接客に評判の良いライラが手で顔を支えペラペラと雑誌をめくり始めやがった。


「……いや、だから、ちょっと聞きたいだけなんだけど。教えてくれよ。みんな俺のどこを見て俺と判断しているんだ?」


「……あぁんっ……チィッ……能天気な三下がぁぁ…………警備兵呼びますよ……」


 微かに耳に届く、非常に小さい声だった。


「……えっ!?ちょっ、おまっ……何言ってんの?」


「ああぁぁん、警備兵呼ぶっつてんだろうがーーーっ!このド変態野郎がーーーっ!人が大人しくしてたら。あーーーっ!なんつったテメェー?俺のどこを見て俺と判断してるかって?言えるかよそんな事っ!悟れよっ!お前もっと自分自身を諫めろよっ!甘えんなよぁあっ!人生舐めてるんじゃねーよっ!人に聞いてんじゃねぇーよっ!用が無いならもう帰れよっ!」


 どうやら地雷ポイントらしい。意味が分からない。何故こんなにキレるんだ?と、ドキドキしながら。


「……あのーーっ。ホントすみませんでした。もうそれはいいので……大変お手数ですが……これ換金して貰っていいですか?」


 俺は恐る恐る今回のダンジョン攻略の戦闘報酬の『ゴブリンの耳』×3『ゴブリンの牙』×1『バットの羽』×4をギルド組合受付嬢のライラに提出する。すると……


「はい。確かに受け取りました。では……えっと……こうなりますね」


 先程のやり取りが嘘の様に接客態度を変えるライラ、そして受け取る報酬45ギル。


 ビール1杯の価格が300ギル。一般稼業での収入平均が1日1万ギルのご時世。俺が今日命懸けで戦った成果が、この様な残念な結果になるって変じゃねぇーと思うのだが……これが現実だった……


「ぷぷぷぷぷっ……本当に…ぷぷっ…笑わせて…ぷぷぷっ…くれますね……ガキの駄賃以下じゃーないですか……ぷぷぷぷぷっ」


 そう言って必死に笑いを堪えるライラ。


「ああ、いいセンスしてるだろ?」


 俺は冷たい目で、腹を抱えるライラの問いに答えた。


 ゴブリンを倒すと殆どの冒険者が魔石を手に入れる。その価値約1000ギル。バットと言う最弱の魔物ですら魔石だと約500ギルの報酬を受け取れる。

 なのに俺は全てがドロップアイテムとなり、価値の無いゴブリンとバットの戦闘報酬が1匹につき、10ギルか5ギルになる。


「━━━」


 潤む瞳……


「また、笑わせて下さいねーーーっ」


 俺の不幸を楽しみ大変満足されたのだろうか、満面の笑みを俺に見せるライラ。

 笑えるならそれでいいかとそれを消化して、そうそうに気持ちを切り替え、ライラの言葉を背に軽く手を振り、それに答えて、自分が所属するギルド拠点に足を進めた。




 この世界はマジックアイテムで成り立っている。マジックアイテムは魔力を込めれば使えるのだが、燃費が悪く、中々なMP:マジックポイントを消費する。

 その魔力に代わる燃料が魔石になる。

 魔素の塊である魔石はこの世界の主燃料であり、生活には欠かせない物、幾らあっても困らない物、魔石の価値が高い理由はこういった背景がある。


 また魔石の供給を絶やさない為に冒険者は色々と破格の優遇されていのであった。


 例えば街の通行料は無料。一般だと100ギル~1000ギルは必要らしい。魔石のギルへの換金の際の手数料も無料。一般だと6割の手数料が必要になるとの事だ。

 その他色々とあるのだが、冒険者は好待遇なのはこの世界の常識の一つであった。




 駆け出し冒険者のダンジョンとこの街は隣接して、そこそこ大きい街、名を『オルガ』と言う。

 オルガの街はレンガ作りの家が殆どで、暮らしは裕福な方。貿易が盛んに行われており、駆け出しから中堅の冒険者が街を徘徊している。


 ここを拠点として、各街に冒険者を派遣するギルドが殆どで、有名なギルドだとこの街に支部を2、3軒構えている程だ。

 暮らしも平和そのもので、街には笑顔の人々や笑い声が何処かしら聞こえてくる穏やかな街。


 街の奥ばった所に古めかしい一軒家があり、看板には『愚か者フール』と書かれたギルドがある。

 これが俺の所属するギルド。

 肩を落として、家のドアを引き中に入と。


「あっ!お帰りなさいルルさん。今日もお疲れ様です」


 ドアを開けると目の前にカウンターが設置されており、カウンターの中に一人佇む女性が俺を笑顔で迎え入れてくれた。


 名をジルと言い。

 肩までの黄金色のフンワリした髪で、「えっ?!もしかして俺にゾッコン?」と勘違いする甘い笑顔と仕草を振りまく悪魔的な女性。何人もの男を惑わせている為にギルドのカウンターはいつも綺麗な花で埋もれ偶にジルが見えない時がある程だ。

 本人に自覚が無いのが本当にヤラシイ。このギルドの受付嬢である。


「ああ、ただいま。ジル。一つ聞いていいかな?」


「どうしたんですか?かしこまって……」


 俺にニッコリ微笑むジル。俺は頭をボリボリ掻きながら。


「実はさぁーっ。どうしてこの姿を見て俺だと分かるんだ?俺はそれが不思議でさぁーっ」


「え!?……いや……その……それはちょっと……私の口からは……」


 とジルは顔を伏せた。そんなジルに迫り俺は……


「頼むよジル。教えてくれよっ!どうして俺って分かるんだっ!?だって変だろっ!?俺今ゴブリンじゃん。でもみんな、俺の事ルルって言うんだよ!なぁーっどうしてなんだ!?どうして俺の体を張った渾身のギャグを誰も笑ってくれないんだっ!?」


 もう意地になっていた俺。ウケると思いダンジョンからここまでゴブリンの顔とパンツ一丁の姿勢を続けたのだが、誰も何も突っ込んでもくれないし、クスリとも笑ってくれない。今の格好を崩すのが逆に怖くなり始め、その怒りの矛先を心優しいジルに思わずぶつけてしまったのだった。

 

 鬼気迫る俺に委縮するジルは……


「……ポタッ……ポタッ……ポタッポタッ……」


 あろう事か涙を流し始めた。


「えっ!お前泣いてんの?……いや、ごめん、ジル。そんなつもりではなかったんだ。ホントごめん……もう泣かないでくれよ。もう聞かないから。ホントごめんな……」


「いえ、私の方こそ取り乱して本当にすみませんでした。でも、もうこれ以上は……」


 涙を拭い俺の方を見ようとしないジル。


「あっ……ああ、お前にはもう聞かねぇーよ……なんか……ホントにごめんな……」


 しんみりする空気……俺が全面的に悪いのだが、心優しいジルは気丈に振舞い、俺と目を合わせ、拭い切れていない涙を見尻に溜め、瞳が潤んだまま俺の方に振り返り、ニッコリ微笑み……微笑む拍子に目尻の涙が頬を伝わせ……


「ハイ!もう私にプライベートな話では、話しかけないで下さい」


 と、元気よく、軽く俺をイジメてきた。


「えっ!私語禁止っ!?……あっ、うっ、うん……どっ、努力するね……」


「それと……仕事の話は出来れば紙か何かで伝えて欲しいんですけど……」


 そんな言葉も聞こえた気がしたが、俺は聞かなかった事にして……  


「ところでギルド長は?」


「奥で、お客様にお会いになられてますよ」


「そっか、じゃあ俺は風呂入ってくるよ」


 肩をポキポキ鳴らし風呂場に足を進め様とした時。


「あっ!ルルさん、今日のお客さんはクエストの依頼かと……」


「あっそ、じゃあ風呂入って……ん?ジル……お前……今なんつった?」


「うふっ、クエスト依頼ですよ。ルルさん」


 俺はゆっくり足を戻してジルの元迄バックする。ジルの方にゆっくり顔を向けて。


「もう一度言ってくれ……今なんつった?」


「ふふふっ、クエスト依頼です。ルルさん」


 そう答えたジルの笑顔がいつも以上に眩しくて、俺の目が一気に乾き、目の潤いを取り戻す為に、俺は仕方なく涙腺を開いたんだ。この涙はジルの所為なんだ……優しい……ジルがいけないんだ……


「うっ……うう……いっ、今……ううっ……なっ、なんつった?」


「クエスト依頼ですよ。ルルさん」


「ううっ……あ、ありがとう。ジ、ジル。ううっ……ろ、録音するマジックアイテムないか?ううっ……めっ、目覚ましにする……」


「うふふふふっ、そんな事しなくても、毎日言ってあげますよ」


 ダメだ……この子……眩し過ぎる……ホンマ天使やわぁーっ。

 とカウンターに両肘を乗せ、手の上に顔をチョコンと乗せてジルの顔をジロジロ舐め回すようにガン見して、ホッコリしていると、奥のドアがバタンと勢いよく開き。


「こらーーっ!ルル、帰って来たんなら、さっさとコッチへ来なさいっ!この役立たずっっ」


 と、悪魔の声がした。

 悪魔の声をシカトして、この世の天使を血走る眼を見開きガン見を続ける俺に天使ジルが……


「ルルさん。早く行かないと、後が怖いですよ」


 「はぁーっ」と溜息を零し、ジルの言う通り逆らうと後で何をされるか分かったもんじゃないと、俺はジルに目を据えたままギルド長が居る部屋へと足を進めた。


 そして疑問に思う。ギルド長も今の俺を見て直ぐに俺だと判断するのであろうか?ゴクリと喉を鳴らし俺は足音を立てずに声がする部屋へと足を進めたのだが……


 空気を読めないギルド長が一部始終を視覚し、腕を組み俺に睨みをきかせ佇んでいた。


「キララ。お前はホントにダメダメだな。俺、足音消した意味ねーじゃん。空気読めよ。空気を……」


 呆れた態度でそう言った俺にイラっしたのであろうか?ギルド長:キララは。


「この唐変木は何言っているんだい?ホントに意味不明だよ君は!」


 と直ぐに俺と理解して馬鹿にした。



 ギルド『愚か者フール』のギルド長:キララ。

 透き通る白い肌。黒髮ロン毛の胸ペッタンコ。初めて会った時はその美貌にドキドキしたが、性格を知って、ゲンナリ現在進行中。


 数々の輝かしい実績の持ち主で、俺より年下の少女。過去に類を見ない頭脳の持ち主。王国第一魔法学園を飛級で、通常10年掛かる花の学園生活を3年で終わらせた可哀想な存在である。


 貧乏貴族出身のキララは、学費を全て国に負担させて、自分の能力を国の為に使う誓約を交わしたのにも関わらず、それを逃れる為に、優遇措置がなされている冒険者への道を余儀なく進む。


 ただでは転ばず、王国の役人の相談料で生計を立て、ギルドの税金を免除される待遇を、遺憾無く発揮させる知恵者。ギルをかなり貯め込んでいる。


 実力も備わり、ギルド長の資格ランクBを持つ。

 ギルドの運営条件に冒険者を1人所属させる項目があり、ひょんな出来事で知り合い。その白羽の矢がたまたま俺だったと言う訳であった。


 そう俺は冒険者として認められ、このギルドに所属している訳ではなく。ただの条件合わせの為にこのギルドに要るキララ同様可哀想な奴である。それを聞いた時、俺は人知れず泣いた。




「いつもながらお早いお着きだね。ルル!どうせ他の冒険者達が増えてきたから尻尾巻いて逃げて来たんだろ?」


 ドキっ!そう俺はあの恥ずかしい神技投石戦法を見られたく無い。

 冒険者なりたての頃は何とも思わなかったが、ちょこちょこと最近では俺より後輩の冒険者達が姿を見せ始め、先輩としての威厳を保つ為に、俺は誰よりも先にダンジョンに潜り、誰よりも早くダンジョンでの魔物、魔獣狩りを切り上げ、ギルドに帰ってくる日課を過ごしていた。


「そっ、そうですねー……」


「早く帰って来たのはいいが、ギルド組合が開いていないから、三角座りして約1時間前からギルド組合が開くの待ってたんだろ?」


 ドキっ!そう俺は三角座りしてギルド組合のドアが開くの待っていた。

 順番を抜かされない様に、誰も居ない後ろをかなりの頻度でキョロキョロと振り返り、目を見開き、目が合った街人に睨みをきかせ、威嚇して、僅かに聞こえるロック解除「カチャ」の音に神経を研ぎ澄ませていた。

 「まだかな?まだかな?」と偶に鍵穴も覗いていた俺の背後に周囲の人々から蔑む視線が突き刺さりながら……


「そっ、そうですねー……」


「ルル。君はこの街で何て言われているのか知っているのかい?」


「あっ、はい……キララさんのヒモ男と呼ばれています」


 キララは腕を組み俺を見下して。


「はぁーっ……知っていたんだね……で?君はそれを聞いてどう思っているんだい?」


 俺は淡々とした口調で正直に答えた。


「あっはい、『うらやましいだろ?ザマァーーーっ』と思って……」


「ドカアァァァーーーーンッ!」


 俺の言葉途中にキララの拳が壁に喰い込んだ……絶大な効果音を響かせ、どデカい蜘蛛の巣を壁に描いたキララは笑顔ながらも額に一杯の青筋をおっ立てていた。


「ヒッヒィーーーーっ!」


 思わず挙げた悲鳴。どうやら俺は答えを間違えたみたいだ。キララの笑顔の引き攣り方が半端ない。


「いいいえ、ちっ!違いますよっ『俺のキララさんは凄いだろ?』と思っています」


 ピクリとキララは反応するものの、未だ答えは違うらしい。


「いいいいいえ、ちちちっ違いますよっ『誰も到達しえない叡智の領域に踏み込んだ才覚に溢れ、雑草しか生えない色褪せたこの世界で唯一無二の麗しい真紅の薔薇の様に可憐で、この宇宙を所狭しと言わんばかりに行き届いた心遣い、才色兼備なキララ様の果てが無い底知れない温情により、このペット以下の存在の俺は生かされています』と日々感謝しています」


 ふむ、どうやら正解らしい。キララの顔の緩みが半端ない。

 キララは垂れた顔のまま。


「そっ、そんな答えが欲しかった訳ではないんだけどね……まぁいっか!しかし!何だい?その顔は?ゴブリンだよね?……まぁザコキャラのルルにはピッタリだけど」


 なるほど。ゴブリンの被り物しようが俺は所詮はザコキャラ。違和感ないのか……


「それに、何だい?パンツに貼り付いてるピンクの兎さんのワッペン?ふんっ。かっ、可愛いね。それ何処で売ってたんだい?僕にも教えてくれよ」


 俺のモッコリした部分にもの凄く喰いつきを見せるキララ。嬉しくなった俺は。


「だろ!?やっぱお前しかいねーよ。この兎ちゃんのワッペンの良さが分かるのは。俺買い占めたからよ。後で分けてやるよ」


 キララは顔をパァーッと明るくして、俺のモッコリを色んな角度から食い入る様に見ていた。


「もう……もう……いいでしょ?……キララのエッチ……」


 赤面し、瞼をトロンと落とし、気恥ずかしく、内股気味の俺のモッコリにご執心なキララをチラ見ていたら、どうだろうか?まな板のキララの胸に2つ突起が見え、暫く顎に手を置き考えた結果。


「うむ……こんな高揚感を俺一人楽しみのは失礼だっ、返杯返しだっ!」


 何事も公平を重んじる俺は、キララの胸を鷲掴み、3回揉んで、押し倒した。



「ふわぁぁぁあああーーーっ!」


 奇声を上げるキララ。ふむ、中々良い反応だとウンウンと頷く俺。

 顔を真っ赤にして、嬉しそうな声を出すキララは、俺を押し退け、座り込み、胸を腕で隠し、モジモジとおしとやかになった。


「もっと揉んでデカくしないとな!返盃返しだ!遠慮するなキララ。もっと俺に乳を揉ませろっ!爆乳にしてやんよっ!ガハハハッ!」


 と、手をワシャワシャする俺は、ん?ちょっと待てよと、キララの罵声を整理して先程迄の疑問が解消した。


 ザコキャラで、ピンクの兎のワッペンをして、あんな早い時間にダンジョンを離脱するヒモ男等この世界が広しと言えども俺ぐらいなもんだ。


 だから俺だと分かったのか!


 しかし待てよ……

 ギルド組合のライラには夢があると聞いた事がある。

 彼女の家は貧乏でライラの給金があってギリギリなんだとか。ギルド組合で働きながらも勤勉に励み。いつか自分の夢を叶えようと努力している。

 そんなライラにとって俺みたいな働きもせず気分で生きている人間など、イライラの素でしかない。だからあんな事を言った俺にキレたという訳か。


 冒険者達、城門のオッチャン、街人もそうだ。それぞれが俺に掛けた言葉には棘があった。いや、今思うといつも俺にかける言葉は皮肉が込められていた気がするような……


 そして受付嬢のジルは凄く俺に甘いんだ。

 もうこれでもかってぐらい砂糖を俺の珈琲に入れてくる。1:9だぜ!勿論9が砂糖。それを飲むと俺に笑顔をくれるジル。俺の飲みっぷりが大変ツボなのか?ドンドン珈琲を量産して無理矢理俺に飲ませるんだ。

 そしたら健康診断の時「死にたいのかね君は!」と先生にメッチャ怒られた。

 そんな俺に甘いジルが、お前はダメ人間だなんて俺に面と向かって言える訳ねーよ?……ん?……あれ?……ちょっと待て……



 俺は腕を組み首を傾げ呟いた。



 「……俺……嫌われてないか?……」





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