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方針会議

 天の祈珠


 精霊エネルギー、魔力の器と接続することで双方のエネルギーを生み出すことが可能とする秘宝。

 生み出されるエネルギーは有限は無く宿主の命が尽きるまで半永久的にエネルギーを生み出すことを約束されている。


 無限に生み出される力は他者から妬みと欲望と的とされやすい。

 遥か昔に天の祈珠を宿した者がいた。

 その無限に等しい絶大な力を手にしたが故に己自身を狂わせ、更に天の祈珠の力を欲さんと企む他者の罠に陥った天の祈珠を宿す者は命を絶つまで拘束され、天の祈珠の力を強制的に力を引き出される物に成り下がり悲惨な最期を迎えたという。


 ・・・・・・


「っという訳です」


「メイラさん、ちょっとさっきの出来事を結構端折られてるんですけど」


「私は見えなかったんですから仕方ないでしょう。天の祈珠がハルの中に宿して且つその力を使えることがわたっことが分かればこの場合十分な情報なんです!」


「メイラ。先ほどのことが見れなかったのがそれほど悔しかったの?それともー他になにか見てはいけないものでも見たのかしら?」


 エリーゼがニヤニヤと喋りながらメイラに対して話しかけるとメイラは顔を赤くしてしている。


「そそそそんなことなんてある訳がないでしょう姫様!そっそうハルよ!ハルがいけないですよ!元はと言えば勝手に教会に入るから・・・・・・」


「待て待て、そのことで俺が悪者になるのかよ!おかしいだろ!」


「お前らちょっと落ち着いたらどうだぁ?見える話も見えてこねぇだろが」

「だろうがぁー」


 メルデとレーネに俺らが先ほど俺らが起きた出来事について情報を共有している。

 魔術師イヴァンを見つけ女神からもらった天の祈珠の力を解放してもらったことについて説明は済んでいるが他にもエリーゼに抱き寄せられ介抱してもらった話はしていない。

 というよりもメイラが先程の出来事の説明をすると自身から言い出しそれだけしか話していない、実際その状況が見えないメイラの説明は俺らが見たことをメイラに伝え、俺が見たことをそのまま言っているだけである。

 メイラが実際見たのはエリーゼが俺を抱き寄せている所しか見ていないだがそのシーンだけはあえて2人には伏せているようだがエリーゼはその話をぶり返そうとしている。


 どちらかというと俺もちょっと恥ずかしいからその話を所だけ伏せてもらえるとありがたいんだけども。


「ああもうわかった。とりあえず魔術師イヴァンには会えて力を解放してもらったんだろ?んでこれからハルの中にある天の祈珠ってやつを俺たち以外には知られないよう秘密にすりゃいいんだろ」


 メルデはこれ以上続けると面倒になりそうだと察したのか話を刺すように結論を唱えた。


「そう、その通りです。ハルが私たちの仲間になった以上、仲間の危険を見逃すわけにはいきません。そこで結論に至ったうえでのお話です」


「・・・・・・今後の方針についてだな」


 メルデがそういうとエリーゼは静かに頷いて今後の俺たちの活動目的を話し始めた。


「ではこれから私たちがどのように旅を続けていくかを決めたいと思います。まず第一にやらねばならないのはハルの身を守ることになります。メルデ、このボーダントの街から東に行くと何があるかご存知ですか?」


「ああ、このまま東に進めばカスタル地方に入る。そこには多くの街と城が点在しているは知っている。俺も何度か商売で行ったことがあるからな。そんでそのカスタル地方には世界では数少ない魔術と剣技を養成する学園があるな」


「メルデ、ありがとうございます。これだけ説明して頂ければ十分です」


 エリーゼは席を立ち部屋の窓際に向かい歩いて行く。

 そしてゆっくりと振り返り俺たち3人にエリーゼはこう告げたのだ。


「ハルそしてメイラ、あなた方2人はこれからカスタル地方にあるレグマーニ学園に1年間入学して生活をしてもらいます」


 学校!?

 予想もしていなかったエリーゼの方針に俺は驚いているが一番驚いていたのは俺ではなくメイラだった。


「なっ!?姫様何をおっしゃられてるのですか!何故私とハルの2人だけがこの期に及んで学園で1年も過ごさねばならないのですか!私たちは国の復興、そしてローグバブリアの復讐の為に旅をしてきていることをお忘れになったのですか!!」


 メイラがエリーゼの唱えた方針内容を聞いて反論するのは当然だろう。

 彼女らが旅する理由がメイラの言う通りである以上、メイラが憤慨するのは当然のことだ。


「落ち着けなさいメイラ。お忘れになったのですか?私はこの方針の第一にハルの身を守ろう使命が最優先することです」


「でっですが姫様!」


「何度も言いませんよメイラ、落ち着いて聞きなさい。これからこのような方針の理由について説明します。席に着きなさい」


 興奮しているメイラを落ち着かせようやく座っていた席に腰を再び下ろした。


「では宜しいですかみなさん?よく聞いておいて下さい。まず初めにハルとメイラを学園に身を寄せる理由を説明ですが、ハルには天の祈珠を最大限の力を引き出せるよう魔法と闘気についての技術を学んでもらいます。そしてメイラはハルの身を守るために傍に居てもらいます」


 メルデはエリーゼの方針に気付いたのか「なるほどな」と口にして頷いている。

 当然のことながらこれだけの理由でメイラは納得はしていない、眉を歪ませ何か言いたそうな顔をしている。


 元はと言えば俺のせいだ。

 エリーゼたちと会って間もないにも関わらず、俺の中にある天の祈珠のせいでエリーゼたちに迷惑をかけてしまっている。

 先程俺は会議を行う前にエリーゼにこれ以上俺のせいで迷惑をかけたくないので俺は一人でなんとかすると話を持ち掛けたところエリーゼにこう言われたのだ。


「いいですかハル、そのようなことは2度と言ってはいけませんよ。例えあなたと出会った日が浅かかろうとも私はあなたのこと仲間として受け入れたのです。そしてあの時私はあなたを守ると約束したのです。だから絶対にあなたを見捨てるようなことはしませんし、ハルも天の祈珠を持つ身として覚悟を持たなければなりません」


 このように言い返され説教を喰らってしまった。

 これだけ迷惑をかけてしまっているのにも関わらず俺のことを心配してくれているのはとても嬉しくそしてエリーゼには感謝しきれないほどの恩を受けているのだ。

 俺はエリーゼの方針に当然異議など唱えることなどできない。


「さて次に私を含めメルデとレーネの3人は2人が学園に入学している間、カスタル地方に多く点在する街に訪れローグバブリアに関する情報を集めることに徹することにしましょう。10以上集中して街が点在する地方は中々ありませんし、何より図書館などもある街もありますので暫くはこの地方で身を置きましょう」


「姫様の言う通りだな。情報集めはこの場所が最も手っ取り早いだろうし、少しは落ち着くことも必要だった所だし丁度いいじゃねーか」


 どうやらメルデはエリーゼの方針に賛同らしく肩入れしてカスタル地方に留まることを望んでいるようだが横に座るメイラはどうしても納得のいかない顔をしている。

 どうやら彼女は限界が来たらしく俺たちが囲むテーブルをバンッと強く叩き2人に対する不満を吐き散らした。


「いい加減にしてください!!二人とも何故悠長なことを言ってられるのですか!!1年かけて調べ物?ふざけたことを言うのも大概にしてください!!私たちがどうしてこの場所にいるのか分かっているのですか?全てはローグバブリアを探し復讐をする為に遥か故郷を離れ旅を続けているのに・・・・・・ついにあなた方は故郷を見捨てる気にでもなったのですか!!私はそんな方針なんて認めない・・・・・・認められるわけがないのよ!!」


 怒りが頂点に登り彼女の周りは胸が締め付けられる程の狂気と殺気を放ち俺たちを睨み付けている。

 これ程の殺気を感じたことがなかった。

 俺は息を飲み黙っていることしかできない程に彼女から放たれる殺気に怖気づいてしまっていた。

 だが強直している俺をよそに3人はなんと先程と変わらない態度でいた。

 更に驚いたことにメルデはメイラの言ったことが「だからどうした」と言いたそうな呆れた顔をしてこう言い返したのだ。


「ったくこれだから教養のないお嬢様ってのは見ててつまらねぇんだよ」


「・・・・・・なんですって!」

 その瞬間メイラはメルデの胸ぐらを掴んでいた。

 掴まれてなおもメルデは彼女に怯むことなく平然とした態度でいる。

 メイラの常軌を逸した殺気はとてつもないものであったがその殺気を受け流すかのように平然としていられるメルデも俺にとっては異常とさえ思えるほどであった。

 そして胸ぐらを掴まれていながらもメルデはこう言ったのだ。


「剣の技術と礼儀作法しか学んでこなかった知識のない奴が上品な言葉でしゃべるのがつまらねぇ。それでいてすぐ頭に血が上って周りが見えなくなる辺りも馬鹿の極みだな」


「メルデ・・・・・・いまここでぶん殴られたいの?」


「ぶん殴られて少し頭冷やすべきなのはおめぇだよ。じゃあひとつ聞くがこれまで旅を続けてローグバブリアの姿と情報を一度でも手に入れれたことがあったのか?」


「ないわよ!それがどうしたっていうの!!」


「それだからいつまで経っても見つけられねぇってことだよ。奴らが何の為に国を滅ぼしたのか、何故魔獣を操ることができたのか、奴らの目的がわからねぇ。復讐をしたくってもどこで何をするかも分からないのに世界中を旅したところで目的を掴めなきゃむしろ時間の無駄なんだよ」


「だからこそ世界中を旅してでも探し出さなきゃいけないじゃない!!」


「それが無駄だって言ってるんだよわからねぇのか?お前はあいつらの目的がわかってんのか?そんでどれだけの人数がいるのか知っているのか?」


「そっそれは・・・・・・」


 長い間旅を続けてもローグバブリアを見つけるどころか情報について何一つ掴めずにいるのは事実であり、その事実を突き付けられ言い返すことができず彼女は喉を詰まらした。


「思い出せ、今俺らが知ってることってのはローグバブリアっていう名前しかわかってねぇ。これだけ時間をかけて旅して来たってのに名前しか分からねぇ方が異常なんだよ。・・・・・・情報だ。奴らの正体がなんなのか知らなきゃ一生勝てねぇ。そして俺らは今まで情報収集を怠ってきたから見つかりもしねぇんだよ。だからこそ調べるっつう地道なとこから追っかけてんだ」


 メルデの言葉に彼女は驚きな顔を見せ、同時に胸元を掴んでいた手を静かに離した。

 掴まれていた胸元が解放され落ち着いたかと思いきや彼は何事もなかったかのようにテーブルに置かれた飲みかけのコーヒーをすすり更に説明を続ける。


「それにだ、今回の方針には姫様がハルを優先にすると言った。これも加味して暫くレグマーニ学園に入学させるのはいい選択だと思っている。レグマーニ学院は数ある学園の中で名門に連なるとこだ。その学園には世界各国の貴族の人間も少なくはねぇ。貴族の人間が通う学園でテロリストなんてゴロゴロいたら名声とも学園の評判がガタ落ちになっちまう。外からも内からも狙われるリスクも減ってハル自身の実力も磨けると考えりゃ最善だと思わねぇか?」


 彼がエリーゼの方針に賛同していたのはローグバブリアの情報を探る為だけではなく俺の保身までも考えてくれていた。

 殺気を放たれ胸元を掴まれてもなお冷静さを欠かない精神力、次の一手を最良に導く知性は裏社会のリーダーとして活躍していたと言われれば頷ける。

 感情的に走り過ぎていた彼女は恐らく気づいたのだろう、自分以上に諦めずローグバブリアを見つけ出そうと必死なのだと。

 そして詰んでいる現状を打開策を練り俺の安全を守る約束も果たそうとしていることすら気づかず彼を掴みかかってしまったことに申し訳なくなったのだろう。


「すまないかったメルデ、私が浅はかなばかりにまた感情的になってしまって・・・・・・この通りだ」


 メイラは頭を下げメルデ含め俺たちに向かって誤っていた。


 その言葉を聞いてエリーゼは笑顔を取り戻し、両手を合わせて叩きこの場を和ませようとした。


「メイラ、気にしなくていいことよ。わかってくれればそれだけでいいの、だからこれからの為に一緒に頑張りましょう」


 メイラを許し励ますエリーゼ、彼女の特徴である尻尾はゆさゆさと揺らし機嫌が良さそうである。

 なにあれあの尻尾・・・・・・モフモフしたい。


「さてメイラも納得してくれているようだしこれから2人には入学についてのルールを覚えてもらわないといけないわね」


 ルールとは何だろうか?


「ルールと言っても簡単なこと、天の祈珠の存在を他人に知られないようにすればいいことだけよ。それとメイラは閃煌剣術の最高位であることを象徴する法衣は着ないこと。名前は隠すほど気にしなくてもいいでしょうがその法衣は他の剣術派閥が見ればすぐに閃煌剣術の最高位と分かって色々と面倒なことになりそうでしょうからね」


「姫様、それならばいっそ名前すら隠してしまって黙って過ごしていれば天の祈珠の存在を隠せるのではないのですか?」


 メイラの質問について俺も同意見だ。

 身を隠くして天の祈珠の存在をばれないようにしなければならないのに何故中途半端に隠す必要があるのだろうか?


「いい質問ね。これはある種の賭けでもあるの。今回の入学はハルの身を守るのもあるけれども私たちの最大の目的であるローグバブリアの情報を得るチャンスであり、そしていつかローグバブリアを倒すための仲間となってくれる人材をここで引き込みたいところでもあるわ。さりげなく実力と才能をちらつかせることで魅了して引き込める人材もあるかもしれないじゃない」


 なるほど、力のない人間は力ある者に魅了されやすい心理を上手く使い周りを取り込んで戦力増強を図ろうとしているのか。

 ローグバブリアを討つ為なら危険な橋も渡ろうとする戦略は流石と思ったが、可愛い見た目とは裏腹にこのお姫様の黒い一部分を見てしまった気分だ。



 一時はどうなるかと思ったが再び全員の結束は固まり、始まったばかりの俺の異世界生活に大きな変化が間違いなく訪れそうだ。

投稿の期間が遅くなりすみません。次話から次章に移り物語が進展していきます

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