序章
「よし、今日も張り切って走るかな」
準備体操を終えていつものように早朝ランニングに駆け出し始めた。
毎日同じ時間にランニングすることを日課にしている。
ランニングが趣味と言う訳でなく、体を鍛えるために走りこんでいる。
俺が幼い頃、物心つく頃には親はおらず近くの孤児院に預けられていた。
預けられたばかりの俺は体が弱く近所の子供からイジメられる子供だったがある日テレビを見ていると
格闘技の特番が放送されていたのでしばらくぼーっとその番組を眺めていると、ある一人の格闘家に釘漬けになった。
その選手は軽やかにステップを踏みながら飛び周り、言葉にできないほどの華麗な足技を披露し一瞬で俺の心が奪われた。
その格闘技とはカポエラと呼ばれるものだった。
その魅力に惹かれ孤児院の院長に頼み込み小学2年生の頃にカポエラを始めた。
最初は体が弱かったせいもあり上手くできなく苦労していたが徐々に体力をつけ始めるようになり、小学5年生になると短距離走もスポーツもクラスのトップになる程の運動ができる体になった。
体も力も付き始め、いつの間にかイジメられることがなくなっていた。
その頃、俺の周りの友達が空手を始めて一緒に空手を始めないかと誘われた。
別の格闘技についても少しばかり興味があったので空手の誘いを受け道場に通い始めた。
中学生になる頃には胴着の帯が黒帯になる程の格闘技の実力をつけていた。
高校生になると空手の大会に入賞を果たすほどの空手の実力を持っていたが空手だけを専念せずカポエラも続けていたいという思いから、空手部に入部せず助っ人として呼ばれる生活をしていた。
そして間もなく俺は高校生活を終える。
高校生を終えると孤児院を離れ自力で社会に出なければならないので就職活動も行った。
運動ができるところを評価され消防士として就職が決まっていた。
これから俺の生活は順風満帆に迎えられると思っていた。
そんな時だった。
ランニングをいつものようにしていた俺の真横から一台のトラックが突っ込んできた。
その瞬間、俺の体に強烈な衝撃が襲った。
十分に鍛えられた体であったがトラックが相手となるといとも簡単に吹き飛ばされてしまった。
一瞬の出来事に俺は何もすることができず宙を舞い心の中で「もうだめだ」と思い込んだ。
これが走馬灯というものなんだろうと思いながらゆっくりと目蓋が閉じようとした時、背中から何かに引きずられるかのような感覚に襲われた。
次の瞬間、いま見ていた景色が一変した。
辺り一面が真っ白な空間が広がっており、その空間の中に1人の女の子がこちらの様子を見るように座っていた。
「やぁ、初めまして。私は偶然と気まぐれに生きる女神というものだよ」
そう言うと横たわる俺の隣まで近寄り顔を覗かせた。
「さて早速だけどもこれから君には私の出す選択肢を選んでもらうよ。秋篠春馬くん」