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ライン  作者: Jan Ford
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第1章(3)/1

 一輝は、前にも似たようなことがあったのを思い出した。あれは10年近く前のことだ。当時は埼玉にある母側の祖父母の家に住んでいて、一輝はその頃小学校の入りたてだった。学校ではようやく数人の話し相手ができて、帰り道に一緒に話しながら帰ったのを覚えている。同時に、6年間通った通学路が頭の中によみがえってきた。

 家に帰ろうとすると、玄関の前に二人組みのスーツ姿が立ちふさがっていた。今でさえ駅の中によく見かける普通のサラリーマンの風体が、あのときはひどくおっかないものに見えたのだ。一輝は近寄ることができなくて、結局近くの通りに止まって、近くの建物のかげに隠れることにしたけれど、男たちは一向に立ち去る様子が無かった。それも時々、インターホンに向かって何かいっているのが見えた。とても、温和な雰囲気とは言いがたかった。一輝はその間ずっと、泣きそうになるのを耐えていると、やがて日も暮れて辺りが暗くなってきた頃に家の中から祖父が出てきた。

 眉を寄せて、男達に向かってたしなめるように何かを言うと、男たちもそんな祖父に向かって何やら言い返した。しばらくして、祖父は男たちの間を通りぬけるように道路に出てきて、陰に隠れている一輝のところへと駆け寄ってきた。

 こんなところにいたのか。さ、おじいちゃんと帰ろ。祖父はそれだけ言って、一輝の腕を引いて家に入った。玄関を通る時に、一輝はじっとこちらをにらみつけていた2人の男のことを見上げた。それは、生まれてはじめて目にした。疲れと絶望とで打ちのめされた人の表情だった。その時の一輝にはその表情の意味が分からなかった。男達が父の勤める横須証券の系列会社の社員で、後に契約を打ち切られたということを知ったのは、それから4年ほど経ってからだった。

 時間が無い。さっさと宿題を片付けなけりゃ。一輝は目を覚ましたみたいに慌ててシャーペンをつかんで机に直った。父さんのことはとりあえず後でまた考えよう。いちいち構っていたらきりが無い。

 隣の部屋からは、ひっそりと静まって何の物音も聞こえてこなかった。

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