第3章(16)/13
「くだらないこと言ってないで、次は堂本弘雅の資料。えーと、こっちも23歳の時に入社だけど、田中正志よりは8歳も年下ね。出身地は同じ山梨県。30歳の時に東京に引っ越してる」
「とすると田中正志と堂本弘雅の2人は同じ年に東京に引っ越してるのか」
「そうみたい。どうも横須証券の本社はもともと山梨県にあってそれから東京に越してきたらしいから、そのときに2人は東京に引越したみたいね。ついでに1部に上場したのはそれから7年後」
「ちょっと待った。これは?」前田は堂本弘雅の履歴書の小学校の頃の欄を指した。「何度も引越ししてるみたいだけど」
「さあ、なんでしょうね。親の仕事の都合とか?」
「それにしてはこの時期にだけ集中しすぎてないかな」
資料を見ると、堂本弘雅は6年間に4度の引越しをしたということになっている。どこに引越したとまでは載っていなかった。
「転勤の重なる時期ってのもあるんじゃないの?何度か引越して、それから一つの職場に落ち着いたとか」
「でも、なんでここの欄だけ引越し先が載ってないんだ?東京に移った時は載ってるのに」
「これ調べたの私じゃないから…」
「じゃあ、この資料をまとめた人って、どうしてもういらないって言って、翔子にくれたわけ?」
「取材が終わって記事が書き終わったからよ。決まってるじゃない」
「つまりもう調べてないってわけか…」前田は黙ってうつむいた。「もしかして」
「もしかして?」
「堂本弘雅はわざと自分の引越し先を分からないように履歴書かなんかに何も書かなかったんじゃないか?」
「隠したって事?何のために?」
「分からない。でも、何か都合の悪いことがあったのかもしれない」
「この事件に関係した何かが?」
「そこまでは分かんないけど。いや、まてよ。だとすると」
前田はもう一度田中正志の資料をひっぱし出した。
「ここを見ろよ」
田中正志の高校生のときの欄を指差した。
「やっぱり引越してる。堂本が最初に引越した、そのちょっと前だ。同じように殺害された二人が、過去の同じ時期に引越してた。この時間には何かあるのかもしれないぞ」
「気になるな」翔子は資料を見比べてうーんと唸った。
「調べてみないか?きっと新しいことが分かると思うんだ」
翔子は苦笑いを返した。
「悪いけど私そんなには時間取れそうにないから。最近仕事がいっぱい入ってきちゃって」
「うらやましい理由だ」
「悔しかったら面白い記事でも書きなさいよ」
「ああ書くよ。この事件の裏側が明らかになるとくれば文才のない俺にだって何とかなりそうだ」
「まあ、応援してる」
そして前田と翔子は喫茶店を後にすることにした。情報提供料金と言うことで代金は前田が払うことになった。
「あ、それと一つ聞いていい?」
「何?」
「もう彼氏とかいるの?」
「ざんねん。いませんよ」
「そろそろ身を固めておかないと時期が行っちゃうんじゃないの?」
「余計なお世話ね。はっ倒すよ」
「スイマセンでした…。じゃあ何か進展があったら連絡するから」
「宮元に伝えといてよ。今度こんなことしたらただじゃ済まなくなるって」
情報は手に入れることができた。これからの取材の方針も掴めた。
あとは……ストーカー規正法で訴えられないように気をつけるだけだ。




