第3章(11)/12
前話の更新からずいぶん時間がたってしまいすいませんでした。
加えて、前話「第3章(10)/12」の末尾に一部追加しておきました。
雨が降ったせいか外はいつもよりも多少は涼しかった。ただ、その分湿気はひどかった。自転車に乗っていても、爽やかな風どころかむしむしとした空気に全身を包まれいるような感覚しかしなった。
自転車を走らせながらまわりを観察していたけれど辺りには全然人影が見当たらなかった。せめて外に人がいて、あいつらのやろうとしていることを目撃しているようなら今日の待ち合わせはなくなるんじゃないかと思ったが、それは無理そうだ。
一輝はポケットに入った10万円に封筒の重みを確かめて目的の場所へと向かった。
もう、いまさら考えるようなことはなかった。ここまできたら、実際あいつらと顔をあわせて話すしかない。言いたいことはたくさんあった。何でこんな事をしたのか、いつから計画していたことなのか、どうして俺なのか。
聞いてみなければ、もう俺には何も分からないのだ。1年間共に罪を重ねてきた仲間は、遠く向うで、俺の敵となってしまったのだから。
どうしてこんな事をするのか、今したいのは、そう竹田達に尋ねることただそれだけだった。
校舎裏には、誰もいなかった。
その代わり、フェンスに1枚の紙切れが貼ってあった。暗くて見えなかったと言ってこのまま帰ったとしても、あいつらに言い訳できてしまいそうなくらい小さな紙切れだったけど、一輝はそれを手にとることにした。近くに電灯があったのでなんとか文字は読むことができた。ここに10万円を置いていくように書いてある。間違いない。誰か一人は、一輝がここに来て金を置いていくのを見張っている。そんな場所はこの近くでは学校の敷地の中しかなかった。
「でてこいよ。竹田か、谷か?それとも・・・」
「気づいてたのか」
聞こえてきた足音は、フェンスの向こう側からだった。
「竹田か」
「そうさ」竹田の声は無表情だった。一昨日ボイスチェンジャーを使ってかけてきた奴と同じ、無表情な声だった。「おい、村上、三上、谷、出てきても構わないとさ」
途端に、四方から自転車がペダルをこぐ音が近づいてきた。一輝がやってきたほうの道から谷が、その反対から村上と三上の姿が現れた。
「久しぶりだな、青島」
谷が冷めた口調でそういった。
「お前達が全部していたのか」
「そうだ」
「一体いつから」
「最初からさ。最初から、お前がカモになることは決まっていた」
「どうしてだ」
「金があるからさ」
「そういうことだよ」
いつの間にか竹田が一輝の後ろでフェンスを乗り越えようとしていた。そのまま竹田は道路へと飛び降りた。
「青島、金を出せよ」
「どうしてこんな事をするんだ」
「いいから黙って出せ。俺達のやってきたことを言いふらされたくはないだろ」
「一緒にやってきたんじゃないか」
「黙って出せって言ってるんだよ。聞こえないのかボケ野郎が」
一輝の知っている竹田ではない、と思った。これが本当の竹田で、今までの姿はわざと着飾って見せていた物なのか。
そうではない、と思い直した。竹田自体は変わっていないのだ。村上も、三上も、谷も。変わったのは俺だ。今までは仲間だった青島一輝は、もう、ただの金ずるにしか過ぎなくなったのだ。ただの金ずると接するなら、どんなにぞんざいだって構わない。
唐突に怒りが湧き上がってきた。




