第3章(9)/11
「そういえば、おまえ横須証券について調べてたのはどうなったんだ。何か分かったか?」
「まあ、あれから少しだけ」
分かったといえば分かったが、事件そのものとは全く関係のなさそうなことだった。あれから前田は青島真二の家に行っていた。
「もうそろそろ潮時かな」
「なんだ、もうやめるのか」
「もう少しだけ調べるよ。それとも、今回のことで加持さんたちも横須証券の記事を書こうって気になってくれたならまた張り切るけど・・・」
「じゃあ諦めるんだな」
「何とかなんないものかね」
「無理だって。なんだったら自分で殺された2人について調べてみればいいじゃないかよ」
「またか?もうごめんだよ。一人じゃ限界があるって。前回のことで懲りたんだ」
結局あれだけ時間をかけても、ほとんど何の進展もなかったのだ。今回、殺人事件の調査がつとまるとは思えなかった。
「1人じゃなきゃ、やるのか?」
宮元が怪しげに笑った
「なんだよ」
「いい奴を知ってるんだ。別の出版社の知り合いだ。もしかしたらそいつが取材についていろいろ教えてくれるかもしれない。会ってみるか?」
「どこの出版社だよ」
「○○出版だ」
「え」大会社じゃないか「そんなところの社員が手伝ってくれるのか?」
「まあ、友達のよしみってやつだ」
何がおかしいのか、宮元は始終ニヤニヤ笑っている。
「どうだ、話をつけてやってもいいんだぜ」
「ああたのむ」
「よし、承った。早速電話しといてやるよ」
そう言って宮元はすぐに携帯電話を取り出した。
「おい、こんな時間に電話してもいいのかよ。相手は○○出版なんだろ。忙しいんじゃないのか」
「フリーライターなんだ。たぶん今の時間は自宅にいる」
フリーライターって。おい、まさか。
「お察しの通り」
「ちょっと、やめろ」
「もう遅いぜ」
携帯電話を取り上げようとしたが、その通り、もう遅かった。宮元は机の間を縫って前田から逃げ出していた。
「どなたなんですか」
後輩の亀井が、こちらの様子を見て面白そうに聞いてきた。無視して前田を追いかけようとしたが、ご丁寧にも前田は大声で説明をしてくれた。
「こいつの昔の知り合いさ」
「言うな、やめろ」
ここにいる全員に暴露するつもりか。
「もう2年近く会っていないらしいんだけど、俺はこいつに紹介されて、それからも何度か連絡を取っていて」
腕を伸ばしたが、携帯にはかからずに空振りした。
「前田さんは何で連絡を取っていないんですか?」
亀井は容赦ない質問をぶつけてくる。
「喧嘩してな。別れたんだよ」
「別れたってまさか・・・元カノですか」
言いやがった。おっしゃる通り佐山翔子と俺は2年前まで付き合っていた。
亀井、後で表に出ろ。




