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ライン  作者: Jan Ford
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第1章(1)/1

     1


 5月13日


 電灯が一つ浮かんでいる。

 青島一輝は夜の道を一人家へと向かっていた。人影はなく、音を立てる物もない。

 まるで体に重りが乗っかっているかのように歩くのがつらかった。疲れがたまっている時ほど、いつもの道のりを長く感じる時はない。早く帰ってゲームでもしたかった。そうじゃないんだったらさっさと眠ってしまいたい。

 山村先生の声が、突如、頭に浮かび上がった。今日の午後の部活でのことだ。一輝たち1年生の部員は全員、剣道場の前に立たされていた。

「次のテストで順位を10位上げられなかったやつはペナルティだからな」

 何で部活の顧問にまでそんなことを言われなければならないのか、意味が分からない。一輝の隣に立っている吉沢はこちらに視線をあわせて、口には出さずにそう言っていた。一輝は危ないから前を向いてろと視線を返した。

「剣道部の今年の一年生は、どうも成績が悪いとの話をきいた。部活をがんばったっても、勉強を怠けてるんじゃ話しにならないからな」

 村山先生はそういって部員に睨みをきかせた。常に起こりっぱなしの顔に、さらに威圧感が増す。

 結局、勉強の話も含めて一輝たちは延々15分間も鬼顧問の話を聞かされるはめになった。部活が終わって、それこそ意識が飛ぶんじゃないかと思うほどきつい練習を終えた後に先輩が言ったことには、このお説教は毎年恒例の儀式のようなものらしい。

 成績が悪いっていうのもたぶんでっちあげだよ、とも聞いた。吉沢はそれを聞いて、帰る間中ずっと愚痴をはいていた。ただ、一輝やその先輩は、吉沢本人の成績に関して言うならば鬼顧問の話はあながちでたらめとは言い切れないな、とひそかに思っていた。

 なんにしても今日は期末テストの一週間前だ。いやでも帰ったら勉強しなければならない。十分きつい練習なのに、その上ペナルティを食らうなんてごめんだった。

 桜園公園に差し掛かったところでふと見ると、備え付けの柱時計が11時の少し前を指していた。塾から帰るのはいつもこれくらいの時間なのだ。それから帰ってから学校の勉強もしろというのが、そもそも間違っているのだと一輝は思った

 マンションに着いた。パスワードを入れて中に入り、青島家の部屋がある12階までエレベーターを使う。

 ただいま、と言いながら玄関を上がって、手洗いうがいを済まし、そのままの格好で居間に入って、用意してあった夕食をさっさと平らげた。

 部屋に下がろうすると、母さんが一輝のことを引き止めた。

「明日から期末テストの一週間前でしょ?」問い詰めるように聞いてきた。

「そうだけど」

「じゃあ、部活はないのね」

 母さんはそういうと、安心したように台所へ引き下がった。どうやら一輝に期末テストのことを思いださせようとしたらしい。一輝は、ついさっき一生忘れられないほどに念を押されてきたばっかりなんだから、わざわざ確認することないだろうとうんざりした。

 自分の部屋に入って、ベットにカバンを放り出す。机の前につき卓上ライトのスイッチを入れた。カバンからノートを一冊取り出して英語の予習を始めようとしたときだった。

 突然どこからか男の怒鳴り声が聞こえてきた。

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