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ライン  作者: Jan Ford
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第2章(22)/7

「マジかよ」

 三上が毒づいたのとほとんど同時に大西が舌打ちを漏らした。

「ったく何やってたんだよ竹田たちは」

 最悪だ。一輝はもと来た道を早足に歩きながら自分も舌打ちした。これで大西に責任を取らせることも、メンバーを解散させることもふいになった。おまけに目撃されて急いで逃げなければならないというおまけつきだ。前もってした準備も全て水の泡だ。

 悪いことはさらに続いた。三上が勢いよく開いた出口の扉が大きな軋み声を上げたのだ。学校中に響き渡る、宿直の人が起きていたら間違いなく耳に入ってくるような大きな音だった。

 真っ青になっている暇もなく、3人は校舎から飛び出して階段を駆け下りた。気づかれたかどうかなど確かめもせず、ひたすら下へと足を動かした。

「こっちだ」

 見ると竹田が足もとで手招きをしていた。

「裏口は危ない、校庭のほうから出る。こっちだ早く」

 歯軋りをしながら竹田のあとを走って追いかけた。あごの力が抜けるたび歯がガチガチと音を鳴らした。

 校庭の金網を乗り越えて校舎から出た。谷と村上に合流し、息をつく間もなく自転車をとめてある工場前の道路に向かって駆けた。背中からパトカーのサイレンが学校の方向へ近づいてくるのを聞いて、寒さとは別の理由で全身に鳥肌が立った。

「パトカーだ」誰かがかすれた声で言った。「音を立てずにいかないと見つかる」

 可能な限り足音を忍ばせながら、それでも一輝たちは全力で走った。自転車を見つけると飛びかかるようにして鍵を外し、乗り込むと同時にこぎだした。どこでもいいからとにかくここから遠くへ。それだけを考えてひたすらこいだ。

 家々の間を抜け、無人の交差点を渡り、車の通らない道路を横切って進んでいった。寒さも疲れも感じなかった。こびれついたサイレンの響きだけが頭の中で絶えず反響していた。

 どれだけの時間がたち、どれくらいの距離をいったのだろうか。一輝たちは見たこともない町の景色の中で、荒い息をついてぐったりと自転車に寄りかかっていた。

「くそ」

 吐息とも愚痴ともつかぬ声で大西が吐き捨てた。

「何でこうなるんだ」

 大西の自転車が蹴飛ばされて横倒しに地面に叩きつけられ、そのひょうしにハンドルが内側にへし曲がった。

 くそ、ともう一回叫ぶと地面に仰向けに寝転がった。

 はじめての失敗。それも自分達で失敗を望んでいた時に、全く予期しない形でやってきた失敗なのだから、皮肉以外の何ものでもなかった。

 真っ暗闇の2回の廊下が頭に浮かんだ。あともう少し、曲がり角まで本当に目と鼻の先の距離だった。もう3歩進んでいたのならうまくいっていただろう。竹田が携帯をかけてきさえしなければ。

 もちろん、竹田を責めるべきではない。これは全員の責任だ。

 思えば、今までがうまくいきすぎていたのかもしれない。所詮は素人の中学生が馴れ合いでしていたことだ。いつか失敗するはずだった。それがたまたま今日だったというだけのことだ。

 もうやめよう。こんなことは今夜で最後だ。大西を説得して、普通の学生生活に戻ろう。

 覚悟を決めて、一輝は何気なく空を仰いだ。

 冬の夜空に太陽の昇ってくる気配は感じられなかった。

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