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ライン  作者: Jan Ford
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第2章(20)/7

 時刻は午前2時。丑の刻。幽霊が一番出てくるのはこの時間だと聞いたことがある。

 一輝たちは三島中央小学校の裏口の前に立っていた。立ち込める冷気は肌をも凍りつかせるほどだったが、自転車で走ってきたばかりなのと緊張もあって、体の芯はそれほど寒さを感じていなかった。

 一輝が6年間通った学校だ。そこにこれから不法侵入しようというのだから、人生ホントになにがあるか分かったものじゃない。

 登るぞ、と村上が口だけで合図をした。一輝たちは周りに人がいないか確認する。

 村上の足が金網にかけられ、ガシャガシャという金属音を辺りに響かせた。もしこの音を聞いている人がいたら本当に幽霊が出たかと思ったかもしれない。夜中に徘徊する甲冑の騎士だ。西洋じゃあるまいし。

 見張りに残った竹田と谷以外の4人が登りきると、今度は手はずどおり非常階段のところへと向かう。ここでまた村上が見張りに残り、3人は閉ざされた鉄格子を乗り越え、できるだけ足音を立てないようにして階段を上っていった。目指すは3階の扉だ。4日前に調べに行ったところ、そこのガラス窓は割れてテープで塞がれただけになっていた。昨日も外から様子を見に行ったけれどガラスは割れたままだった。

 どうせなら、わざわざ手間をかけるよりその場にあるものを活用したほうがいい。

 一輝は手早くテープをはがして、ガラスに穴を作った。中に手をつっこんで鍵をまわす。一応6人とも手袋をしているので指紋は残らない。

 だがこれだけでは扉は開かない。中から別の鍵がかけられているのだ。しかもこちらは鍵本体がないと開け閉めができない。

 そこで三上の出番だ。一輝と場所を変わって手袋をはずし、用意しておいた金属片と針金を指先に、腕を穴に入れる。

 こんなめんどくさい扉を入り口に選んだのにも、理由があった。三島中央小学校は60年以上前とかなり昔に校舎が建てられたのだけれど、最近、防犯設備の導入があって学校中の扉やドアに自動警報装置を設置したのだ。そのため、侵入の際には例のごとくガラスを割ってそこから建物に入ってゆかなければならない。

 けれど2重鍵があるから大丈夫と高を括ったのか、外に面した非常階段ぞいの扉には警報装置がつけられていない。セキュリティーがどこにかけられているのかは谷と三上が調査済みだった。

 そんなことを思っている間にも鍵が開いた。三上が扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりと引いていく。警報は鳴らないはずだとはいえ、もしも間違ったことになったら取り返しがつかない。3人が同時に息を飲んだ。

 何の音もしない。

 緊張を抜かないようにして三上が建物の中へと足を入れた。

 真っ暗だった。何も見えない。月明かりのある外とは違って、校舎の中は微かな光も見えなかった。

 一輝はポケットからペンライトを取り出して、静かにスイッチをONにずらした。3人の目の前におぼろげな光の輪が広がった。遠目に気づかれないように、ライトには布をかぶせて必要最低限の光しか発しないようにしてある。

 頭の中の道順と照らし合わせながら、闇の中をゆっくりと足音を忍ばせて進んでいく。狙うのは2階にある職員室の金庫だ。

 閑静とした廊下の中を、自分の脈の波打つ音だけが耳元で響いている。

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