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ライン  作者: Jan Ford
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第2章(18)/7

 多少の期待はあったかもしれない。犯罪を犯すことで、今まで見えてなかったものが見えるようになるんじゃないか、毎日のけだるいマンネリから抜け出せるんじゃないか、という期待が。

 手始めは、学校での窃盗だった。

 学校というのはあきれるほどに警戒心の欠如した所だ、というのが俺達の持論だった。持論といっても、本当にその通りでだったし、実際のところ俺達は論理を実践に移してうまくやっていくこともできていた。

 さすがにああも窃盗が重なると、学校も手を打ったり、生徒のほうも多少貴重品などに対して気をつけるようになってきたが、痛い目にあわないうちはひどいものだった。盗む側の人間が被害者を「ひどい」というのもどうかと思うけれど、そうなのだからしかたない。扉の鍵なんて平気で開けていくし、誰もいない教室にいくつもカバンが残されたままという場面など、図らずしても簡単に見つけられてしまう。

 実行は、こちらが拍子抜けするほど楽だった。一輝や三上は残りの4人と別の学校なので無理だったけれど、大西たちは実行犯と見張り役、受け取り役など分けていろいろやっていたらしい。

 かくして起こった学校内の窃盗団の跋扈も、2ヶ月ほどすると下火におさまった。誰にも見つからず、盗った金額の総計は15万円程度。金は全て公園で寝泊りしているホームレスの寝床においていった。べつに金欲しさにやったことではない。

 学校での窃盗に見切りをつけると、今度は普通の店や家に手をつけようということになった。まだ早すぎる、失敗したら今度こそただでは済まないし、もっと安全なところからいったほうがいいのではないかという意見もあったけれど、退けられた。逃げ出すようでいやだったのだ。それに、学校でのことがあまりにもうまくいっていたので強気になっていたところもあった。

 もうこれ以上は思い出す必要もあるまい。さまざまな本を使って犯行に適する場所や時間、タイミング、注意点や技術を身につけ、さらにはいくつもの経験を通して、俺達は今日にまでたどり着いた。最初に感じていたスリルや緊張も、今日に至ってはかなり薄れてしまった。

 一般的に犯罪者が捕まるのは安心感が生まれて警戒感が低下しはじめる時だというから、気をつけなければならないのは分かっていたけど、こればかりは、どうにもならない。

 だからこそ、そろそろ潮時なのだ。大きなへまをしでかす前に、手を引かなければ。

「青島」

 突然声をかけられて、軽く心臓が飛び上がった。寝そべる一輝を見下ろしていたのは竹田だった。

「なあ、トイレ行かねえか」

「いいけど、外出ても大丈夫か?」

「こんな寒い日に真夜中の公園に出てる人なんていないよ」と言って苦笑いを浮かべる。見られるわけないって。

 うーんと唸りながら、一輝は横になったり座ったりしている4人の様子を盗み見た。特に、何か反応を遣してくることはない。

「まあいいか」と言って立ち上がった。ちょっと動いて体を温めるのもいい。

 一輝と竹田は公園の奥にあるトイレへと走っていった。風が冷たく吹き付ける。もちろん人影など見当たらなかった。

「なあ、青島」

 用を済まして、トイレからでてきた時だった。竹田が神妙な顔でこちらを見ていた。

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