表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライン  作者: Jan Ford
19/77

第1章(15)/5

「本日、横須証券元役員で現在証券取引法違反の罪に問われている小暮、堀口、浅井、橋本、谷屋、青島の6人を殺人容疑で再逮捕しました」

 間違いではなかった。あの6人が。今まさに、俺が調べている6人が殺人を犯していた。では一体、誰を殺したんだ?

 再び画面が切り替わった。司会に女性キャスターがその答えを教えてくれた。

「今回新たに発覚した殺人事件で被害者とされているのは、東京都在住、事件当時38歳の田中正志さんです。田中さんは生前、今回再逮捕された6人が経営していた横須証券に勤務しており、職場間でのいざこざから事件が起こるに至ったものと思われます」

「本当に信じられないような事件ですね」もう一人の男性キャスターが口を開いた。「証券取引法の違反のみならず、自分の会社の社員を殺害するなんて前代未聞の話です」

 全くその通りだった。テレビの前の多くの人が同じことを思ったに違いなかった。

 番組は2ヶ月前に横須証券が起こした証券取引法違反の事件と、事件直後の日本経済への影響をイメージ映像を使って説明しだした。説明が終わると、キャスターの2人があの時社会全体に走った衝撃はすごい物でしたね、とか、株主の企業経営に対する不安も増大しました、とか言って話を引っ張った。

 前田は殺人に関する情報を聞こうとじっと画面を睨んで待った。自分が取材していた6人だからというのではなく、純粋に、6人がどうして殺人を犯したのか、その動機が知りたかった。彼らが何を望み、何に駆り立てられたのか、その”何か”の正体をこの目で確かめてみたかった。普通の犯罪者にはない、”何か”を。

 しかし、キャスター達は事件の詳細については何も語らずに次のニュースに移った。

「すごいことになったな」

 宮元だった。いつの間にか前田の後ろに立ってパソコンの画面を眺めていた。

「やっぱりこの事件を追いかけてて正解だった」

 宮元がとがめた。

「こういう派手さは、お前の書こうとしてたのとは違うんじゃないか?」

「そういう意味じゃない。俺達が思っていた以上に、この事件には奥があるんだ」

 不謹慎にも、前田は胸の躍るのを感じていた。企業として起こした犯罪、そして殺人。本来別物であるはずの2つの事件が交わった先に、まさに自分が明かりを当てようとしている先に、誰も見たことのないような真実が眠っている。そんな気がしてならなかった。

 吹き荒れる雨風が再び壁を叩きつけて轟いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ