第七話
廊下の奥で、紙をめくる音がしていた。
誰かが咳をする。
遠くで、何かが落ちる音。
シュウは入口で立ち止まり、手にした紙袋を見る。
袋の口に指を入れる。
白い端が見える。
すぐ閉じる。
「……ここに置いといて、いい?」
「……毒とかじゃないから」
机に向かっていた治癒科の学生が顔を上げる。
袋を見る。
シュウを見る。
「そこ、で」
もう興味はなさそうだ。
壁際の台に袋を置く。
手を払って、踵を返す。
曲がり角で、一瞬だけ中を見る。
誰かが袋を見ている。
すぐ、視線が落ちる。
シュウはそのまま行った。
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しばらくして。
紙袋が、少しだけ動く。
中を覗いて、止まる。
白いパンを一つ取る。
一口、かじる。
「……もそ」
隣のベッドが揺れる。
「おい」
「なにしてんだ」
「……毒味」
「は?」
「一応」
「お前の舌で?」
「失礼だな」
「信用できねー」
少し黙る。
「……じゃあ俺も」
半分に割る。
ちょっと歪む。
「そっち多い」
「気のせい」
見合う。
どちらも動かない。
先に、多い方が置かれる。
隣のベッドへ。
「起きたら怒るぞ」
「知らん」
「でも食うだろ」
二人で笑う。
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外に出たシュウは、風に当たって息を吐く。
指先を払う。
「……あーあ」
振り返りかけて、やめる。
「固くなったら知らねーからな」
歩き出す。
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少し後。
別の部屋。
包帯を巻いた生徒が、ベッドの端に座っている。
靴を履く。
片方。
止まる。
もう片方。
床に手をつく。
立つ。
体が少し傾く。
とっさに机に手を伸ばす。
ガタン。
「……いってぇ」
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ミコトは机で記録を読んでいる。
ページをめくる。
止まる。
部屋を一度、見回す。
一瞬、眉が動く。
「……ふん」
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