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30 いつものメンバー

「お疲れ様だよ林〜。それから優勝おめでと〜」

「…お疲れ」

「すごい活躍だったな。おめでとう」

「ありがとな!」

「それにしても表彰式終わってからすぐ市から来た人たちに囲まれてたよね〜。本当人気者〜」

「ただお祝いの言葉言われただけだ。揶揄われるネタなんてないぞ」

「そう〜?まあ、そういう事にしといてあげる〜」


 表彰式と閉会式が終わってすぐに声を掛けに行こうとしたのだがヒサメノマチの外から大会のために来た人たち(特に女性)から詰め寄られていて、ようやく落ち着いたタイミングで僕たちはそれぞれ労いとお祝いの言葉を送る。


 林は別段疲れた様子もなく屈託なく笑った。


「この後皆時間ある〜?あるならさ、隣の市のヒルガオ市でお祝いパーティーしようよ〜」


 良いことを思いついたといった無邪気な顔で小野寺が提案してきた。


「お、いいのか」

「わざわざ街の外でやる必要なくね?この街のどっかでいいだろ」

「たまには市の軽食屋でご飯食べてみたいじゃんか〜」

「それが目的かよ」


 予定が入っていると断る人がいなさそうなのを察知して当たり前のようにこの後の予定決めが進む。

 …今日は鈴、鳴らないと良いんだけど。


「〜にしようよ〜。神戸もそれでいいでしょ〜」

「…うん、いいよ」

「お、でた。沖嗣の上の空で全然話し聞いてなかったけど一先ず頷くやつ」

「…大体は聞いてたよ」

「それ聞いてない奴の常套句だろ。ちゃんと聞いとけよ、だから大学で変人扱いされるんだろ」

「八雲ノンデリ発言〜」

「は?どこがだよ」


 小野寺の言葉でまた小競り合いが始まった。

 実際話しを殆ど聞き流していたから、話題が逸れたことに僕は内心ホッと胸を撫で下ろす。

 そんな僕に林が話しかけてきた。


「そういえば沖嗣ってこの街の外に行った事ないんだよな?」

「…いや、少し前に行ったよ。カキツバタ市まで」

「ああ、親戚に会いに行ったのか?」


 どうやら林の中では僕の親戚がカキツバタ市にいる事になってるらしい。

 多分麗ちゃんの件で親戚とカキツバタ市のパン屋といったワードを出したからだろう。

 …適当に相槌打っておこ。


「…そんな感じ」

「曖昧な返事だな」


 爽やかな苦笑をされつつ小競り合い、もとい小野寺の八雲イジリが終わった2人に視線をやると小野寺がこちらに元気よく言う。


「そっちも話終わったみたいだし早速行こうよ〜。案内は僕がやるから皆んなはついてくるだけでOK〜」

「いや、心配しかねぇよ」

「…大丈夫でしょ。こんなに自信満々なんだから」

「だから心配なんだろうが」

「自分だったら八雲が案内役のほうが心配になるな〜。いっつも車での送迎に家に帰ればメイドさんがいるお坊ちゃんだから〜」

「だな」

「…わかる」


 そんなやりとりをしながら僕たちは歩き出す。




 公民館がヒサメノマチの端にあるから徒歩20分くらいですぐに真っ白な、ヒサメノマチでいうところの異様な造りの駅らしき建物が見えた。

 …市の建物は全て真っ白にしなければいけない条例でもあるのだろうか、なんて考えているうちに小野寺が手招きしてきた。

 …ぼんやりしてて遅れをとっていたようだ。


「神戸はやくはやく〜。もう少しで電車来るって〜」

「沖嗣、迷子になるなよ」

「…今行くよ」



「…ここに電車が来るの?」

「は、乗ったことねぇの?まじで?」


 僕の質問に心底驚いたと唖然とする八雲。


「…良いでしょ別に。…先々週に一回カキツバタ市行った以外ヒサメノマチから出たことないんだよ」

「じゃあ初ヒルガオ市なの〜!?それなら昼食の後は観光しよう〜」

「それいいな。このメンバーで市に出かける機会っていままでなかったし、楽しそうだ」

「…いや、そこまでしなくても」


 そう断ろうとしたが、肩に乗るエゾテンに妨害されてしまう。


「いいじゃねぇか、たまには休日に友と遊んどけ。こんな風に青春?とか言って楽しめるのは今のうちだぜ。もう少しすれば各々自立して職についてシャチクになるんだろ?そしたらこうして集まる機会なんざなくなっちまうんだ、今遊んどけ」

「…なんか楽しそうだね」

「まあな」


 電子機器は嫌いなくせに目新しい物や文化には興味を示す難儀な性格してる流は街の外へ行くのに肯定的なようだ。


「…外が好きなら行けばいいのに」

「馬鹿言うな、オレが神戸家を放ってどっか行くわけねぇだろ」


 そういう守り神っぽいセリフは役に立つ者だけが言っていいんだよ、なんて考えていたら流からはジトリと睨まれ八雲からは引き攣った笑みを向けられた。…あ。


「なぁ神戸、お前さっきから誰と喋ってんだよ?」


 流がサラリと会話に入ってきたものだから普通に返してしまって忘れてた。

 これじゃあ僕がただの変人ではないか。


「…頭の中のもう1人の自分?」

「なんだよそれ、怖えんだけど」

「まあいいじゃんか八雲〜、あ、ほら電車きたよ〜」

「タイミングいいな。しかも快速だ」


 林と小野寺が電車が来た事を教えてくれた事でこの話は有耶無耶にされて八雲もそれ以上は追及してこなかった。

 …ナイスタイミング。


 駅と同じく白一色で塗りつぶされたいかにも速そうなシャープな造形をしている2階建ての電車に僕たちは足を踏み入れた。

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