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14 丑三つ時の肝試し 2

 足を踏み入れた真っ暗な金木犀館は当たり前だが静かだった。

 僕たちの歩むたびにギシギシ軋む木造の床の音が壁に反響してこだまし、一層不気味さを際立たせてくる。


 それぞれがライトを片手に見渡してみたが、ホールは特に異変はなさそうだ。


「ね〜ね〜」


 小野寺がライトを顔の下から照らしてこちらを振り返ってきた。


「うわぁぁっ」


 それに驚いた八雲は大絶叫。

 耳元で叫ばれたからキーンと鼓膜の奥で音が鳴る。

 それは肩に乗る流も同様のようで丸くカーブした小さな耳をぺたりと伏せて顔を思い切り顰めていた。


「うるっせぇ!!」


 流、同じくらいの声量で怒鳴り返さないで。僕の耳が壊れる。


「2人2人に分かれようよ〜。一組は右の資料室、もう一組はヒストリー室〜」

「お、良いな。ならグーパーで別れよう」

「俺は嫌だぞ!?みんなでいた方が安全だろ!」

「はいそれじゃあいくよ〜」


 八雲の主張なんか聞こえない小野寺の掛け声で僕はグーを出した。


「おお、一回で分かれたな。俺とペアは…沖嗣か」

「僕は八雲とだ〜」


 そう言って小野寺は僕の腕にしがみつく八雲をベリっと引っぺがす。

 細身な体躯に似合わない力強さある離し方だった。


「俺は資料室なんて行かないからな!」


 資料室は実際に使われていた貿易の履歴書や貿易により入ってきた古い物品が展示されている。対してヒストリー室は貿易するに至るまでの経緯を知ってもらうための学習スペースだ。

 ビビりな八雲は実物のある資料室には絶対に行きたくないらしい。


「じゃあ俺らが資料室行く。沖嗣もそれで良いか?」

「…いいよ」


 こうして僕たちと小野寺たちは一度分かれた。



 資料室は本棚が3つ段になって並んでおり、資料を実際に手に取って中の内容を見ることができる。

 貴重な当時の物に触れることで理解を深めてもらおうと考えられたのだという。


「…なにも無さそうだね」

「そうだな。お、これ」


 ライトの光で示されたのは壁に飾られた昔のポスターだった。大きな文字でなんとか入港!と書かれている。昔の文字だから読めないが他国の船が初入港した時のポスターだろう。


「今じゃ世界一周するようなでかいクルーズ船がバンバン入ってくるような人気の街になって凄いよな。この当時の人が知ったら絶対驚く」

「…驚くってもんじゃないんじゃない?腰抜かして倒れるよ」

「ははっ。そうだな」


 当時の人たちが驚いて倒れる想像を膨らませて僕も笑う。


「棚のほうも見てみよう」

「…そうだね」


 上の段からライトを横にずらして下の段へ。あるのは当時の資料で綺麗に丁寧に並べられている。一冊手にとってみたが埃も殆どなく大事に保存されているのがわかる。

 血に濡れている様子や動くこともない。


「そっちはどうだ?」


 反対の端から見ていく林が声をかけてきた。


「…なにも。異常なしってところかな」


 棚は何もなかったので今度は壁際のショーケースに入った展示品を見にいくことにした。


「これ貿易時に向こうの政府から贈られたティーカップらしいぞ」

「…凄い細かい植物模様だね。取手部分も繊細につくられてる」


 なんて肝試しらしくない話をして眺める。

 流が気をつけろって言ってたから気を緩めてはいないけど何も起こらず、やや拍子抜けしそう。


「ヒストリー室よりも資料室のほうがなんか起きそうな気がしたんだけどな」

「…ヒストリー室って何あったっけ。最後に来たのだいぶ前だから覚えてない」

「確か船のミニチュア模型と壁の展示パネル、あとは…」

「うわぁァァ」


 離れたところから八雲の絶叫が聞こえてきた。僕は何かあったのかと向かおうとしたが流に止められる。


「落ち着け。アクセサリー野郎がただビビってるだけだ」


 どういうことだろう。流はそれ以上言わずにクワッとあくびをしてこれ以上説明する意思は感じ取れない。


「…あっち行く?」


 代わりに林に聞いたが首を横に振られた。


「いや、大丈夫だろ。あの悲鳴で思い出したんだがヒストリー室って船長の等身大パネルと全身鏡があるんだ」

「…なんで鏡?」

「後ろの壁に当時のこの街の様子が描かれてて、1人で観光に来た人が自撮りできるように、だったかな」


 なるほど。それなら八雲が驚くだろう。


「うぁぁぁ」


 二度目の悲鳴。

 大方ハイテンションの小野寺が八雲のリアクションに味を占めて驚かしているのだろう。小野寺とペアになったのが運の尽き。



◇◇◇


「こっちは何もなかった。小野寺たちの方は?」

「成果なしだよ〜」


 別れる前の場所で落ち合って報告し合う。

 やっぱり小野寺が色々仕掛けたようで八雲はさっきよりも小さくなっていた。暗くてよく見えないけど小刻みに膝が震えているような気がする。


「2階に行く前にドア確認してみないか?」


 入ってきた後ろのドアを指差して林が言う。


「そうだね〜。八雲離して〜動けないよ〜」

「俺行くよ」


 早足でドアに近づいた林がドアノブを回して…



ガチャ、、ガチャガチャ…



「うん、閉まってるわ」


 いつもと変わらない調子でそう宣言した。


「やっぱり話は本当だったんだ〜!閉じ込められるなんて自分初めてだよ〜!」


 鼻息荒くニッコニコの小野寺は両手をブンブン振って大喜び。

 そんな喜んだら隣で魂抜けかけてる八雲が可哀想だよ。無意識に追い込んでやらないであげなよ。


「よし、無事閉じ込められたことだしみんなで2階行こう」

「行こう〜!」


 この2人、強すぎない?

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