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創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


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第8話 初勝利と、創造者としての覚醒

 

 スモークウルフの体は、しばらくの間、草の上で息絶えたまま動かなかった。


 黒灰色の毛並みが朝日に照らされ、鈍く光を返す。


 血の匂いが風に乗り、生の名残を空へと運んでいった。


 大河は、その光景を呆然と見つめていた。


 ――ついさっきまで“生きていた”存在が、今はただの“物”になっている。


 ゲームで何度も見たはずの“討伐完了”の瞬間。


 だが、現実のそれは重く、冷たく、心の奥を刺してくる。


「……これが、現実の“戦う”ってやつか……」


宿主(マスター)、注意。対象体に魔力反応》


「え?」


 イヴの声と同時に、狼の身体が淡い光を帯びた。


 輪郭がほろりと崩れ、無数の光の粒が宙に舞い上がる。


 やがて風に溶けるように消え――地面には、黒い結晶だけが残った。


「……なに、これ」


《確認完了。名称:魔石マナクリスタル。魔物の体内で凝縮された魔力結晶》


 しゃがみ込み、拾い上げる。


 黒曜石のように滑らかで、ほんのりと温かい。


 中心部では、まるで小さな心臓が脈を打つように光が明滅していた。


「これが……ドロップアイテムってやつか。……マジで存在してんのかよ」


《素材として有用。創造魔法における“触媒”としての使用が可能です》


「触媒? ってことは、これ使えば……クラフト強化とかできる感じ?」


《はい。魔力効率の上昇、および創造範囲の拡張が見込まれます》


 大河は魔石をポケットに入れ、深く息を吐いた。


 緊張が抜けた途端、代わりにこみ上げる実感。


 ――俺、今……この世界で“勝った”んだ。


 その思考の瞬間、視界に青白い光が浮かんだ。


《ステータス更新完了》


 半透明のウィンドウが開き、整然とした文字が並ぶ。


【ステータス】

 名前:虎ノ門 大河

 年齢:27

 職業:創造者(Creator)

 称号:異世界人

【スキル】

・言語理解

・逃走本能 Lv1(危険感知・反射強化)

・創造(Creation)Lv1(魔力を物質化する)


「……スキル欄に“創造”ってある。これ、俺専用のスキルってことか?」


《その通りです。宿主(マスター)の肉体と創造核の同調により、“固有スキル”として確定しました》


「つまり……俺はこの世界で“何かを作れる”存在ってことか」


《はい。しかし、創造は同時に“世界の修正”でもあります。過剰な干渉は、反発を生む可能性があります》


「反発……?」


《詳細は未観測。必要に応じ、わたしが制御補助を行います》


 イヴの声が一瞬だけ、祈るように静まる。


 どこか母性的で、それでいて無機質な響き。


 だが、大河の胸には、不安よりも好奇心が燃え上がっていた。


「……なるほど。創造者って、そういう意味か」


 立ち上がり、遠くの山脈を見上げる。


 風が頬を撫で、朝の光が視界を満たした。


「次は、“生き延びる”だけじゃなく、“創る”番だな」


 ポケットの魔石が、淡く脈動する。

 まるで、その決意に応えるかのように。


 ――そして、視界に新たな文字が流れた。


《新スキル派生を確認――『解析(Analyze)Lv1』を獲得しました》


「お、またきた。解析? アナライズって、あの鑑定スキル的な?」


《はい。創造スキルとの連動により発現。対象の構成情報を“視認”できます》


「“視認”って……いやいや、まさかそんな――」


 試しに、足元の狼の爪を拾う。


 その瞬間、視界に文字列が走った。


《スモークウルフの爪:硬度D、魔素含有率3.4%、触媒適正:低》


「うわ、本当に出た! これ完全に鑑定スキルじゃん! ……俺、もうなろう系主人公ムーブ入ってる?」


《解析スキルは、創造行為の補助回路です。素材理解は、創造精度を飛躍的に高めます》


「はいはい、つまり“クラフトの効率化”ってやつね。了解!」


 大河は魔石を取り出し、右手に乗せる。


 朝日を受け、黒い結晶が鈍く光を放った。


《魔石。魔力密度:24%。触媒反応安定。創造素材として適合率95%》


「よし、初クラフトいってみるか。“装備創造”ってやつを――」


 緊張と興奮が交錯し、心拍が上がる。


 イヴの声が、まるで祈りのように響いた。


《イメージを明確に。あなたを守る“形”を思い描いて》


「俺を守る……軽くて、動けて、防げるもの。――そうだ、防具だ」


 脳裏に浮かぶのは、現実で使っていたアウトドア用の防刃ジャケット。


 通気性がよく、動きやすく、見た目も悪くない。


「――Formulate:Protect Gear!」


 光が溢れ、魔石が砕ける。


 光の粒が大河の全身を包み、衣服の感触が変わった。


 光が収束したとき、彼は黒灰色のジャケットを身にまとっていた。


 柔らかく、それでいて刃を弾く反発力。胸元には創造核の紋章が刻まれている。


「……マジで出来た。これ、成功ってことでいいのか?」


《創造完了。名称:プロト・ギア。防御補正+15。軽減属性:斬撃・貫通。耐久度:Cランク》


「ステータス付き!? RPGのクラフト画面から出てきたみたいだな!」


《魔石触媒の効果と、明確なイメージが成功要因です》


「ふむふむ、つまり“想像力こそパワー”ってやつか……!」


 腰の十徳ナイフに目をやる。解析スキルがすぐに反応する。


《十徳ナイフ:硬度F、強度劣化。素材再構成推奨》


「よし、お前も進化タイムだ」


 狼の爪を触媒に、“小型で扱いやすく汎用性のある刃”をイメージする。


「――Formulate:Reforge Blade!」


 刃が淡く光を帯び、空気を震わせながら形を変えた。


 黒鉄の柄、青白い魔力線を走らせる刃。


《再構成完了。名称:マナエッジ・ナイフ。攻撃力+12。魔力伝導率:高。耐久:Cランク》


「……おお、これはテンション上がるやつ!」


 手に伝わる重み、微かな振動――“現実の手応え”。


 それが不思議と心を奮い立たせる。


《おめでとうございます、宿主(マスター)。これであなたは、“戦う準備”を整えました》


「……そうだな。昨日は逃げるだけだったけど――今は違う」


 二つの太陽が、青空に重なるように昇っていく。


 光を受けて、黒灰の装備が淡く輝いた。


「――よし。今度は俺の番だ。“創造者”としてな」


 風が吹き抜け、防具の裾を揺らす。


 遺跡を背に、虎ノ門大河は新たな一歩を踏み出した。


 この世界を――“創り変える”存在として。


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