第5話 チュートリアルで本当に死にかけた件
世界そのものの仕組みに関わる――根源的な技術。
そんな物騒なワードが、説明なしで頭に浮かんだ時点でヤバい予感しかしない。
「……やっべ、これ絶対ラスボス戦前の“意味深な装置起動ムービー”じゃん」
そう呟いた直後、台座の奥で「ヴゥゥゥン……」と低い振動音。
遺跡の壁一面に、金色の紋章がバチバチと浮かび上がる。
その光はまるで、“再起動”ボタンを押した瞬間のゲーミングPCみたいに一斉点灯。
「お、おい……嘘だろ? 俺、マジで押しちゃいけないスイッチ押したパターン? やめろよ、自爆カウントダウンとか鳴らすなよ!?」
もちろん止まらない。
壁が光り、天井の奥からギシギシと巨大な機構音。
光の紋章がぐるぐる回転を始め、床の文様が次々と発光。
しかも、嫌なことに光が――大河の足元に集まってきていた。
「……ちょ、待って? え、ターゲット俺? やめて、演出対象プレイヤー俺ですか!?」
叫ぶ間もなく、光がドガァッと弾けた。
視界が真っ白。
全身から力が抜け、床に崩れ落ちる。
体の奥から何かが“吸われていく”。
血も、魔力も、魂ポイントも全部まとめて引き落とし。
ステータスウィンドウが次々にアラートを点滅させる。
◇――――――――――◇
HP:2/140
MP:0/20
生命維持限界を超過。
スキル【創造魔法】の基盤同調中……
◇――――――――――◇
「うわ、めっちゃ赤文字出てる……! これ完全に“死亡フラグ確定エフェクト”じゃん……!」
手を伸ばそうにも、指一本動かない。
視界がノイズ交じりに揺れて、音が遠のく。
『……俺、死ぬのか……? いや、ここでゲームオーバーは理不尽すぎるって……なんてクソゲー』
意識が闇に沈むその刹那――。
――選定、完了。
――再構築、開始。
頭の中に直接響く謎ボイス。
直後、胸の奥でドクンと爆ぜた。
「うわッ、なにこれ!? 心臓リブート!? 熱ッ、燃えてるってこれ!!」
焼けつくような痛みの中、金色の粒子が全身を駆け巡る。
血管の中を光が走るのが、視覚的に分かるレベル。
崩壊しかけた身体が、無理やり再構築されていく。
呼吸が戻り、心臓が再び脈を打つ。
視界を取り戻すと、あの黒い球体――“コア”が目の前に浮かんでいた。
まるで命を刻むように、静かに鼓動している。
◇――――――――――◇
緊急再構築プロトコル発動
創造魔法:自動補完モード(生命維持)
HP:47/140
MP:5/20
副次効果:【創造の欠片(Core Fragment)】を獲得
◇――――――――――◇
「……マジで蘇生スキル発動してる!? チュートリアルでリスポーンってどんな難易度設定してんだこの世界!」
ぜぇぜぇと息を吐きながら、コアに手を伸ばす。
するとそれは、ふわりと浮かんだまま――彼の胸へと吸い込まれた。
「おおおおおッ!? 体内インストール!? え、これ完全に主人公限定仕様じゃん!」
光が一閃し、静寂。
ステータスに、新たな一文が浮かび上がる。
◇――――――――――◇
固有特性:【創造の心臓(The Core within)】
効果:魔力再生・創造魔法の安定行使/生命再構築(極低確率)
◇――――――――――◇
大河はしばらくポカンと画面を見つめ、それから吹き出した。
「……はは。チート通り越してバグキャラ化してんじゃん俺。てか、死にかけないと発動しないチュートリアルとか、どんなデスゲー仕様だよ……!」
壁にもたれ、天井の光をぼんやり見上げる。
胸の奥では、“何か”が確かに鼓動していた。
「……ま、結果オーライってことで。今日の成果:生存+チート心臓ゲット。……うん、だいぶ盛ってるな俺の人生イベント」
小さく笑いながら、息を整える。
――その時。
遺跡の奥、閉ざされた扉の向こうから。
“目を覚ます”ような、低い唸り声が響いた。
「……え? 嘘、続くの? ちょ、待って、セーブポイントまだ見つけてないんですけど!?」




