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創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


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第41話 甘味戦線異状アリ! ~聖女と戦乙女と猫耳の禁断スイーツ~

 

 ロスウェルの朝。


 朝もやを裂く鐘の音が響き渡り、街の通りにはいつもの喧騒始まっていた。


 だが――その片隅、屋台通りの一角に、今日も異様な熱気があった。


「お兄にゃんっ、仕込み終わったにゃ! ミルク、砂糖、卵、ぜーんぶOKにゃ!」


「完璧だリオナ! そして今日こそ――異世界にスイーツ革命を起こすッ!!」


 机を叩いて気炎を上げる大河。


 後ろには、相変わらず完璧な立ち姿のアーク。


 そしてその隣では、リュミナスが神々しい笑顔で祈りを捧げていた。


「この世界の甘味文化はまだ黎明期……つまり今こそ、創造の出番だ!」


「また始まったにゃ……お兄にゃんの“文化改革モード”にゃ」


「違う! 文化じゃない、これは――魂の問題だッ!」


「……甘味で魂を語る人、初めて見たにゃ」


 その時、アークが首を傾げた。


「主。目的、再確認。甘味、戦略的意味ハ?」


「アーク、それはな……!」


 大河が指を突き上げる。


「“人は甘味によって幸福度が上昇し、幸福度の上昇は戦闘力と創造意欲に直結する!”」


「……完全に理論武装したオタクの暴論にゃ」


「しかし、経験的には正しい傾向です。糖質は思考効率を高めます」


 リュミナスがすっと加勢した。


 その柔らかな微笑みが、場の空気を一気に「なんか正しそう」に変えてしまう。


「……聖女様(リュミたん)が言うなら正しい気がしてきたにゃ」


「だろぉ? これぞ“祈りの糖分理論”だ!」



◆創造魔法:スイーツ錬成アルケミック・デザート


 大河がノリで創ったそれっぽいお菓子の杖を振り上げ、魔法陣を展開する。


 今回の創造魔法は、いつもの鋼鉄や武具ではなく――やたらと可愛いピンク色の魔法陣だった。


「いくぞ! 《アルケミック・デザート》!!」


 キラキラと星屑のような魔力が舞い、卵と砂糖が宙に浮かぶ。


 ミルクが光の糸となり、空間で混ざり合っていく。


 やがて、ふわりと香る――甘く、やさしい匂い。


「なっ……なにこれ……心が溶けそう……」


 リュミナスが思わず胸元を押さえる。


 光が頬を撫で、微笑がふわっと広がった。


「リュミナス……! 今、すごく“エンディングテーマ差し替え回”みたいに輝いてる!!」


「……意味はいつもの如く、よくわかりませんが、貴方の“創造”はとても、温かいですね」


 その言葉に、大河の脳が沸騰した。


「うおおおおぉぉ!? 尊いっ! 尊すぎる!! 聖女が照れ顔で褒めてくれるとか、この世界の神バランス壊れてんぞ!!」


 リオナが冷静にツッコむ。


「お兄にゃん、たぶん本人が一番バランス壊してるにゃ」


 そんな中、アークが静かに差し出した皿の上には――


 黄金色に焼き上がった、ふわふわのプリン。


「完成。名付ケテ、創造プリン Ver.0.9」


「試作番号まで付いてるのか!?」


 リュミナスがそっとスプーンを差し入れた。


 ぷるん、と音がした瞬間、光の粒がふわりと舞う。


 一口、口に含むと――


「……甘い。けれど、優しい……」


 その瞳が潤む。


 祈りにも似た声が漏れた。


「……この甘さ……まるで、祝福のようです」


「きたぁぁぁぁぁ! 感想が完全に聖句っぽい! これだよ、この“異世界×スイーツ×尊み構成”!!」


 リオナも一口食べて、ぴょんと耳を立てる。


「にゃんっ!? な、なんだこれ、舌がとろけるにゃ!? これ、癖になる味にゃ~!」


「フフ、猫耳族は甘味に弱い傾向があるんだっけ? よし、商品名決定だ!」


 大河が勢いよく叫ぶ。


「“猫耳プリン~聖女の祝福仕立て~”!!」


「……名前のセンス、相変わらず地味に恥ずかしいにゃ」



◆猫耳商会、再びバズる。


 その日の昼。


 リオナが屋台を出すや否や、冒険者通りに行列ができた。


「おい、昨日のシチューの店だろ!? 今度はプリンだってよ!」


「“食べたら幸せになるプリン”とか書いてあるけど、マジか!?」


「聖女様が味見して泣いたって噂、ほんと!?」


 口コミは瞬く間に広がり


 “猫耳商会”はロスウェルの新名所になっていた。


 そんな騒ぎを見下ろしながら、大河は満足げに腕を組む。


「ふっふっふ……これぞ創造魔法の真髄、“人を笑顔にする科学”だ」


「お兄にゃん、もう商人ギルドからスカウト来てるにゃ」


「え、マジで!? やべぇ、経営ルート開いた……!」


 アークがメモを取る。


「現状利益率、高。拡張案、提案可?」


「いいねアーク! 次は“創造チョコ”と“マナキャンディ”いこう!」


「……完全にスイーツ創造者にゃ」


 リュミナスがくすりと笑う。


「でも、素敵です。貴方の創造が、誰かの幸福になるのなら――」


 その言葉に、大河の心が一瞬、静かに燃えた。


 甘い匂いと、優しい光。


 彼の中の“創造者の炎”は、確実に膨らんでいく。


 ――この笑顔を、もっと見たい。


 その想いが、次の創造を呼ぶのだ。


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