第39話 ポーション革命爆誕!創造者、錬金街をぶっ壊す!
――翌日。ロスウェルは、再び“騒動の渦中”にあった。
原因はもちろん、創造者・大河がやらかしたせいである。
「ねぇタイガ、どういうこと? 市場がパニックになってるんだけど?」
冒険者ギルドの副マスターのミーネ・ヴァルドが、その美しい眉をぴくりと動かす。
「えーと……ちょっと試作ポーションを商人に売ってみたら……?」
「“治癒効果が聖女級”って評判になって領都まで流通してるわよ!!」
机を叩く音。ギルドが揺れる。
「え、すごくない? やっぱ俺、異世界経済に革命起こしちゃった系主人公!?」
「犯罪スレスレ系主人公にゃ……!」
リオナが尻尾をピタリと止めた。
アークは腕を組んで淡々と告げる。
「市場干渉。リスク、高。敵、増加ノ可能性アリ」
リュミナスも困ったように頬へ指を添え、
「……創造魔法の拡張は素晴らしいですが、倫理面の再調整が必要ですね」
「いやぁ~褒められちゃったなぁ~(※褒められてない)」
◆ 錬金ギルド前
昼下がり、ロスウェル南区。
白亜の建物の前で、看板を見上げる大河一行。
「ここが噂の錬金ギルド本部……」
大河が目を輝かせる。
「世界で一番頭の固い商売人たちにゃ」
「わぁい、俺そういうの燃えるタイプ」
扉を開けた瞬間――
「貴様が例の“創造ポーション”の製造者か!」
豪奢なスーツに金髪オールバックの男が叫んだ。
「そうです! 異世界クラフト部門・代表、大河トラノモンです!」
「肩書き勝手に作るなにゃ!」
奥から人々がざわめく。
「……創造魔法使いだと?」
「あれが帝国の新たな聖女との噂のパーティか?」
リュミナスが微笑んで一礼するだけで、場の温度が一度下がる。
空気が“聖域化”している。
アークが一歩前に出た。
「交渉、必要?」
「うん。バチッといこう」
◆ “交渉(戦闘)”開始
「創造魔法によるポーションは禁制だ!」
錬金ギルドの代表が叫ぶ。
「でも、俺のは“自然に優しいエコ素材”で作ってるんですけど?」
「ぐっ……だが、あの効果は異常だ!」
「異常!? 違うね! これは“ロマン”だ!!」
バンッと机を叩く。
「回復量が多すぎるんだよ!」
「そう、それこそ! 創造魔法の真骨頂!」
大河の背後でリュミナスが光を放つ。
「神の加護を宿す奇跡の形……それが創造の道」
「説得力強すぎにゃ……」
場が圧される。
アークが淡々と一言。
「ワタシノ計算デハ、既存ポーション比、三百三十%効率+Ω(オメガ)」
「バケモンか!?」
その瞬間、ギルドの空気が変わる。
「……領都市場への供給、こちらで管理したい」
「いやだ!」
即答。
「……お前ら、協定を破る気か!?」
「違う、俺は“自由クラフト主義”の使徒だからな!」
「それ! 宗教かなにかにゃ!?」
「創造は、誰のものでもないッ!」
――バァァン!
机が爆散。火花が散り、魔法陣が浮かぶ。
リュミナスがそっと呟く。
「また始まりましたね……“異世界ビジネスバトル”」
◆ そして伝説の“試飲会”
「では証明してみろ、その品質を!」
金髪オールバックの代表、ギルドマスターのクラウン・ヴェルドールがオーバーリアクションとともに叫ぶ。
その動きで、頭頂部が一瞬ずれた。
(あれ? 今……ズレたよな? 今ズレたよな!?)
大河の脳内アラートが鳴る。
オタク的観察眼、完全発動。
「クラウン様、まさかその……」
「なにを言う! これは“錬金の冠”だ!」
(いやそれ物理的に“乗せてる”タイプのやつ!!)
「ならば、貴様のポーションが本物か――この私の身体で確かめてやろう!」
クラウンが瓶を掴み、ぐいっと飲み干した。
《創造ポーション・Ω(オメガ)》、通称“リジェネ・Ωスペシャル”。
※副作用:一部部位の再生力が異常上昇する。
「う、うおおおおお……!?」
床が鳴動。
魔力の奔流が、クラウンの全身を駆け巡る!
次の瞬間――
ぶわっ!!
彼の頭頂から黄金の髪が爆発的に生えた。
それはまるでスーパーな野菜人。
その勢いで頭に乗せていた冠が吹っ飛んだ。
「な、なんという再生力だ……!」
「再生どころか新規生成にゃ!?」
「毛根に創造の祝福が宿っただと……!」
クラウンは震える手で、自分の頭をなでる。
そこには、確かに“本物の髪”があった。
「う、嘘だろ……! 二十年ぶりだ……風が……風が、頭皮を撫でていく……!」
その姿に、ギルド員たちは感涙した。
「マスターが……! 本当に髪が……! あんなに気にして隠していた頭頂が......!」
「奇跡だ! いや、神話だ!」
リュミナスがそっと微笑み、光を散らす。
「神は、創造の意志を愛します。――貴方もまた、その祝福を受け取ったのです」
「……ありがとう、創造の使徒よ!」
クラウンは感極まって大河の手を握った。
髪がサラッと揺れる。眩しい。
「お前、いや貴公のポーション、正式に“錬金ギルド公認”とする!」
「マジで!? いやー、毛根から世界が変わるとは思わなかったな!」
「その名を刻もう……“リジェネ・Ωスペシャル・ヘアラインモデル”として!」
「いやそれ名前に“オメガ”入るの!? ブランド戦略的に大丈夫!?」
リオナがぴょんと跳ねる。
「これでお兄にゃんも、ヘッドライトつけっぱなしに優しい救世主にゃ~!」
「その言い方やめろ! そしてジャンル拡張すんな!」
アークが無機質な声で締める。
「主ノ功績:医療革命、経済変動、毛髪業界救済。称号《創毛神》付与」
「なんか嫌な方向で神格化された!?!?」
――こうして、ロスウェルに“毛根革命”が起きるのであった。




