第37話 創造者の遺構 ― ジェネシス・コア起動戦 ~最終決戦~
――世界の底に、“心臓”があった。
《ジェネシス・コア》
創造と祈り、“始まりの火”が封じられた、帝国の最も危険な辺境、その最深にある遺構。
空は黒く、地は白く、重力すら気まぐれ。
――まさに物理法則のデバッグルーム。
そこに立つ四つの影。
大河、リュミナス、アーク、リオナ。
それぞれの光を背に、崩壊しかけた橋の上で対峙する。
中央に鎮座するのは、“灰の意志”。
幾億の亡骸が積み上がってできた、巨大な女神像。
無数の瞳が瞬くたび、世界の法則がバグる。
『また来たか……創造者の残滓よ』
空間がねじれ、光が黒へ反転。
――はい出ました、“ラスボス第二形態”!!
「――来たか。ラスボス戦の“第二形態”ってやつだな」
肩を鳴らす大河。テンションは完全に実況モード。
敵の圧は、もはや世界そのものの敵意。
それでも彼は笑う。
「けどな――俺はチュートリアル百回周回勢だ。負けイベ? 知るか!」
白炎が再び灯る。
《TIGER DRIVE・Ver.second》起動――いや、今度は違う。
橙がかった光が、背に“二本目の尾”を描く。
「創造魔法、第三段階――《TIGER OVERDRIVE》、解放ッ!」
爆音。足元の大地がクラッシュ音を立てて砕け散る!
間合いゼロの瞬間、双爪が灰を裂く。
『貴様ノ創造ハ混沌。秩序ヲ乱ス偽リノ理ナリ』
「秩序だァ? その秩序の下で何人がバグらされたと思ってんだ!」
拳と拳がぶつかり、空間が歪む。
――この一瞬、重力が存在をやめた。
後方ではアークが静かに限界突破。
「アーク・モード……オーバーリミット。出力三百パーセント。主ノ未来、護ル」
キタコレ。完全制御型AIヒロインの人間超えモード。
一閃。
灰の頭部が、光の軌跡とともに粉砕される。
「よしっ、ナイス斬撃機装乙女ッ!!」
リオナが横からスライドイン。
灰銀のツインテが光を反射し、耳元の刻印が一瞬輝いた。
「今にゃっ! 獣王流《風爪乱舞》ッ!!」
獣王波形が走る。
――来た、獣王族の血統技ッ!!
風刃の群れが灰を裂き、再生を止める。
その隙を逃さず、リュミナスが祈る。
白光が降り注ぎ、音楽が聞こえるような錯覚。
「祈りの形態、再展開。滅びの理を、再編成します」
祈りのアルゴリズムが、創造魔法と共鳴する。
――“信仰×クラフト”による世界修復コンボ!
灰が焦げ、悲鳴を上げ、崩壊していく。
リュミナスが手を伸ばし、静かに告げる。
「……あなたの“創造”は破壊ではない。それは“再生”です。恐れないで」
その言葉が、大河のコードを再起動させた。
「……ああ。俺は、“もう一度、作り直す”ためにここに来た」
全身に走る創造紋。
白炎と祈りの光が重なり、爆発的な輝きとなる。
――融合魔法式。
「これで、終わりだッ!!」
白と橙の光が交錯し、灰の意志を貫く。
『我ハ……静寂ヲ……望ム……』
「だから、もう休めよ」
閃光。音すら消える。
世界が一度、まっさらになる。
……そして、静寂。
崩壊した遺構の中で、リュミナスが微笑む。
「世界ノ心拍、安定。再構築プロセス、成功」
「ふぅ……。今ならエンディング曲のイントロ、聴こえる気がする」
大河が笑い、リオナが駆け寄る。
「お兄にゃん! ほんとに、終わったのにゃ?」
「ああ……たぶんな。でも、もしこれが“ゲームのエンディング”でも――」
彼は朝焼けに染まる空を見上げた。
「――この世界は、もう“俺たちの現実”だ」
アークが剣を収め、一言。
「任務、完了」
ロスウェルの空に、祈りの光が溶けていく。
彼らの物語は、ここで終わり――
そして、“再創”の始まりを告げた。




