第30話 冒険者ギルド・ロスウェル支部 ― 模擬戦試験と“創造魔法使い”の初陣!
――ロスウェル冒険者ギルド・試験区画。
広大な石造りの訓練場に、観覧席が並ぶ。魔力障壁に覆われた闘技場の中央では、鋼の守護機が唸りを上げていた。
その名も《模擬守護機》――かつて古代遺跡を守護していた自動兵器を解し、模倣した戦闘用ゴーレムである。
ある程度の戦闘経験を有し、ギルド職員に認められた登録希望者は、この守護機と模擬戦を行い、実力に応じて初期ランクが決定する。
【冒険者ランク制度(ロスウェル基準)】
Sランク
国家戦力級。帝国で確認されたのは三名に満たず、その一人の出現で周辺諸国の軍事バランスが軋むと言われる。その希少性と影響力は、“単独で戦局を終わらせる厄災”と恐れられるほど。
Aランク
英雄・剣聖クラス。国を代表する戦士。都市ひとつを単独で守る力を持つ。
Bランク
熟練の最上位。都市防衛戦の主力。到達者は千人に一人。
Cランク
一人前の熟練者。ギルドからの信頼厚く、指名依頼が可能。
Dランク
一般冒険者の中心層。ここからCへ上がれるのは二割程度。
Eランク
新人を脱した冒険者。危険地帯での依頼もこなすが死亡率高め。
Fランク
登録直後のルーキー。ほぼ全員がここから始まる。
「それじゃ、試験を始めようか」
ギルドマスター・グラフトが立ち上がる。
全身を鋼鉄のような筋肉で覆った老ドワーフ――かつて“帝国最強の一人”と呼ばれた男だ。
「まずは、アーク。お前さんから行く。相手は模擬守護機、出力五割だ。やれるか?」
「了解。……制限解除、第三律稼働――戦闘形態、起動」
アークの背中から蒼い魔力が噴き上がる。
まるで翼のような残光が広がり、会場全体の空気が震えた。
観客が息を呑む。
「な、なんだこの魔力圧は……!? Bランクでもおかしくねぇ!」
「やべぇ……人間じゃねぇ……!」
鋼の守護機が唸り、アークに拳を振り下ろす。
――だが、空気が一閃した。
「解析完了。弱点、喉部装甲――破壊」
音すら追いつけぬ速度で、アークの掌が閃く。
光刃が守護機の首部を切断。金属が悲鳴を上げ、巨体が崩れ落ちた。
「試験終了。……評価:Aランク相当」
グラフトの声が低く響く。
会場がざわめく。
「Aランク!? 登録試験で出たぞ!?」
「あの娘、一体何者だよ……!」
リオナが目を輝かせた。
「アークたん、かっこよすぎにゃ! もう完全にラスボス撃破級にゃ!」
アークは無表情で一言。
「……任務、完了。評価、適正」
「次、リュミナス・クローロ」
白い衣を纏う聖女が、静かに前へ進み出た。
だが彼女は武器を持たない。
試験中、搬送されてきた重傷の冒険者の前に跪き、両手をかざした。
「……死なせはしません。魂が望む限り、命は終わらない――《聖光再生》」
金色の光が奔流となって傷を覆う。
失われた腕が再生し、砕けた骨が音を立てて繋がった。
その場にいた者、全員が息を呑んだ。
「再生魔法……完全再生だと!? あれは神殿級でも難しいのに」
ミーネ・ヴァルドの唇がわずかに震える。
「……これが、“聖女”リュミナス。神の祝福そのものね」
リュミナはただ静かに微笑んだ。
「私は神ではありません。ただ――生を取り戻す祈りを、少しだけ知っているだけ」
「さて……最後は、あんたの番だ。創造魔法使い大河」
ギルドマスター・グラフトが、ゆっくりと前に出た。
「俺が相手をしてやる。全力で来い。命までは取らん」
「出た、筋肉マスター! こういう展開、俺めっちゃ好きなんだけど!!」
大河が腰の魔導環を展開する。橙の魔力が螺旋を描き――
「創造魔法《武装展開:虎爪機構》――起動!」
地面が砕けた。
光と炎の奔流の中、大河の腕に橙色の爪状エネルギーが顕現する。
背後に虎の幻影が咆哮した。
「うおおおおおッッ!!」
「よし、上等だァッ!」
二人の拳が激突した瞬間、風圧で訓練場の障壁が軋む。
圧倒的な力のぶつかり合い。
「こいつら……本気で殴り合ってやがるッ!!」
「魔力出力、尋常じゃねぇ!!」
グラフトが吼えた。
「悪くねぇッ! その魔法、まさしく創造者の系譜だ!」
「へっ、やっぱ異世界テンプレにはこういうバトルが必要なんだよなぁ!!」
拳が交錯。
最後の一撃、虎爪が閃光となって爆ぜ、衝撃波が走った。
グラフトは一歩下がり、笑う。
「試験終了。……評価、Bランク相当。正式登録を許可する!」
歓声が沸き上がった。
そして、リオナが一歩前に出る。
「にゃふふ……最後の最後はリオナの番にゃ! この子、《ヴァルグレンの影狼》討伐の証を持ってきたにゃ!」
リオナは黒曜石のような牙――高位魔獣の素材を掲げる。
ミーネが目を見開く。
「それ、Dランク単独では無理な相手よ……まさか、本当に討伐したの?」
「もちろんにゃ! 仲間たちのおかげで勝てたにゃ! でも、トドメはリオナにゃ!」
グラフトが顎を撫でる。
「ほう……なら追加試験だ。守護機、出力三割でいくぞ」
「了解にゃ!」
リオナが跳び出した。
風を裂く身軽な動き。小柄な体が残像を残して跳ね回る。
「獣王覚醒《影爪乱舞》――!」
銀閃。
次の瞬間、模擬守護機の関節が一気に断たれ、金属が爆ぜた。
観客が息を呑む。
「な、何が起きた!?」
「影だけが動いたように見えたぞ!」
リオナはくるりと着地し、にゃっと笑う。
「ふにゃ~、リオナ、やればできる子にゃ!」
グラフトが腕を組んで頷いた。
「……認めよう。お前さんの実力、Cランク相当だ。正式に昇格を許可する」
「にゃにゃっ!? ホントに!? リオナ、Cランクにゃ~~っ!!」
リオナがぴょんぴょん跳ねる。
タイガとリオナは最高のテンションで手の平を打ち付け合う。
「うおおお、うちの猫娘が成り上がってくぅぅ!! テンプレ進化イベント発生だぁぁ!!」
リュミナスは穏やかに微笑む。
「……努力は、奇跡を生む。あなたの爪も、きっと獣王と共にあるわ」
「にゃふふ~、イヴたん、あっリュミたんにゃ、何にしてもありがとにゃ! これでご飯大盛りにゃ!」
こうして、“創造魔法使いタイガ”たちは正式に冒険者として登録された。
アーク:Aランク相当(補助制限によりB登録)
リュミナス:Bランク(治癒特化)
リオナ:Cランク(影走り・乱撃型)
タイガ:Bランク(創造魔法系)
ミーネ・ヴァルドは微笑み、登録証を渡す。
「ようこそ、ロスウェルの冒険者ギルドへ。強者は大歓迎よ。あなたたちの物語は、ここからが本当の始まり」
タイガは深呼吸し、拳を握った。
「……行くぞ、みんな。今度は俺たちが、この世界を創る番だ」
その言葉に、仲間たちは頷いた。
そして――ロスウェルの空に、再び祈りの鐘が鳴り響いた。




