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創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


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第29話 辺境防衛都市ロスウェル、冒険者ギルドへようこそ!


 ――ルーンディナス帝国、辺境伯爵領ギレスブイグの防衛都市ロスウェル。


 帝国の南西、果てしない大森林ヴァルグレンを背に広がるその都市は、まるで“鋼鉄の要塞”のように大地へ突き立っていた。


 高くそびえる灰鉄の城壁。


 壁の上には魔導塔が並び、淡い青の障壁が空を覆っている。


 街の中では冒険者、商人、傭兵など、雑多な種族な人々が入り乱れ、昼夜問わず活気と喧騒に満ちていた。


 だが、それは“生き延びるための熱”でもあった。


 ロスウェルは、帝国で最も危険な地。


 外には魔物が巣食い、地下には古代文明の遺構が眠る。


 “守備機構”と呼ばれる自動兵器がいまだ稼働し、うかつに遺跡に入れば一瞬で灰になる。


 それでも――人は、挑む。


 金のために。名誉のために。


 そして、“この地の英雄”になるために。


「うわぁ……やばい。これ完全に“異世界テンプレ×王道ギルド×魔導都市”じゃん……!」


 門をくぐった瞬間、大河のテンションが爆発した。


 瞳はきらきら、完全に観光モードである。


「見てこれリオナ! 摩訶不思議な謎アイテムを売る露店とか魔道具屋とか、もうワクワク指数が限界突破してんだけど!」


「にゃふふ~、お兄にゃん、テンション高すぎにゃ。そうにゃ!、この街は最高にロマンティックな所にゃ!」


 これまで以上にテンション高めで、なおかつリオナは、有りそうで無さそうな胸を反らすと、どや顔を決める。


「そして、ここロスウェルは冒険者の聖地でもあるにゃ。ここで名前を上げれば、一人前扱いにゃ」


 リオナは誇らしげに尻尾を立てた。


 腰には短剣、胸元には冒険者カードが光っている。


「にゃにゃーん! 改めて自己紹介にゃ! リオナ・ルカオン! ロスウェル冒険者ギルド所属、Dランク冒険者にゃ!」


「おおっ、まさかのDランク!? つまり、序盤チュートリアル突破済みの“現地プレイヤー”ポジションじゃん!......依頼忘れるのは愛嬌か! なのか?」


「……タイガ、Dランク冒険者は、ロスウェル都市において上位三割。Cランクへの昇格率は二割未満――つまり、リオナは相当な実力者です」


「そうにゃそうにゃ~! お兄にゃん、もっと褒めていいにゃ!」


 リオナは尻尾をぶんぶん振りながら再び胸を張った。


 その可憐なあざと姿に、大河は“妹属性+猫耳もふもふ+Dランク実力者”という強すぎる要素に撃ち抜かれる。


「……ぐはっ、属性過積載だ……! ギルド入る前から尊死フラグ立ってる……! 依頼忘却の件はデリート案件だな」


 そんな呟く彼を見て、AIイヴの人間体であるリュミナスは小さく笑った。


「……この街、魔力密度が高い。人々の“熱”が、空気を震わせている……」


 祈るような声。


 そのシルバーグレーの瞳には、街全体の命の流れが映っているようだった。


 もう一人の人間体が板についてきたアークは、主に城壁や守備兵を観察している。


「……防衛機構。三層。魔導障壁、状態良好。……安全、確保」


「さすが分析担当! てかお前ら並んでると絵面が強すぎるんだよ!」


「……タイガ、あなたの外見ステータスも現在、平均以上に整っています。街中で注目されるのは当然のことです」


「いやそれフォローになってねぇから!?」


 実際、周囲の視線はなかなかに熱かった。


 黒と橙の髪の細マッチョ、神の使いかの清楚な聖女、美貌の金髪戦乙女、腹ペコ猫耳少女――


 完全に“旅する新興パーティ”として話題の的である。


「お兄にゃん、ギルドはすぐそこにゃ! あの大きな建物!」


 リオナが指差す先、石造りの大広間――冒険者ギルド《ロスウェル支部》があった。


 入り口には巨大な剣と盾の紋章。


 扉を開けると、香ばしい肉の匂いと喧噪が一気に押し寄せてきた。


「おぉぉぉぉぉ!! これこれぇ!! この雑多感、まさにギルドだよ! 筋骨隆々の戦士! ローブ姿の魔術師! ドワーフの鍛冶屋までいるじゃん!!」


 タイガの興奮は止まらない。


 完全に“ゲームの初拠点到着イベント”そのままだ。


 リオナが受付に向かって手を振る。


「やっほー! ミーネさーん! 帰ってきたにゃー!」


 カウンターにいた女性が顔を上げた。


 青髪を束ねたクールな受付嬢――彼女の名はミーネ・ヴァルド。


 元Bランク冒険者で、今はギルド職員として働いている。


「……あら、リオナ。無事に帰ってこれたのね。その様子じゃ今回は依頼忘れなかったのね。それに貴女にしては珍しく仲間を連れてるじゃない」


 どうやら、リオナのクエスト忘れは今に始まったことではないらしい。


「えっ! あたし依頼忘れたことなんてないにゃ? そんなことより! にゃふふ、紹介するにゃ! お兄にゃんと、リュミたん、アークたんにゃ!」


「……お兄にゃん?」


 ミーネの眉が、わずかに上がった。


「にゃ、にゃーっ、深く考えないでにゃ!」


「なるほど、また妙な相手と組んだものね」


 タイガがすかさず挙手。


「創造魔法の使い手・大河でーす! 見ての通り超絶方向音痴ですが、戦闘職です! あと聖女と戦乙女付きです!」


「……は?」


 その場に、軽い沈黙が落ちた。


 だがリオナは得意げに笑う。


「お兄にゃんは、すっごいにゃ! あの《灰の追跡者》を一撃でぶっ飛ばしたにゃ!」


 ミーネの表情が変わった。


「……《灰の追跡者》を、倒した? Cランクの群れを単独で?」


「はい。正確には、《TIGER DRIVE》による高次出力によって灰の瘴気ごと消滅させました」


 リュミナスが心が落ち着く、それは透き通る声で補足する。


「なにこの癒されボイス……!? それが本当なら……面白いわね」


 受付嬢ミーネが、少し口角を上げる。


 その目は――まるで何かを見つけた狩人のようだった。


「なら、まずは登録を済ませましょう。ここは帝国辺境、実力がすべて。貴方がどんな存在でも――結果を出せば、誰も文句は言わないわ」


 タイガは頷いた。


「上等だ。……冒険者ライフ、始めようじゃないか」


 そして――


 ロスウェル防衛都市に、新たなパーティが誕生した。


 AI聖女リュミナス=クローロ、兵装戦機乙女アーク、猫耳冒険者リオナ・ルカオン、そして転移してきたクラフト系おたく・タイガ=トラノモン。


 世界は、まだ“彼らの物語”を知らない。


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