第24話 聖女モード起動 ― 美少女AIと機装の戦乙女爆誕!
ルーンディナス帝国の最果て――辺境防衛都市ロスウェルまで、あと推定三日以内。
タイガの脳内マップは、ほぼフル拡張状態だった。
「……よし、次の目的地までのルート確認っと。うん、マップ開放率86%! この感覚、マジでRPGの旅路そのものだな……!」
そう、オタク脳はいつでもフル稼働。
だが――このあと、彼の人生スキルツリーがとんでもない分岐イベントを迎えることになる。
「……イヴ? なんか……今、光ってるんだけど!? しかもBGM流れてる気がするんだけど!?」
《……はい。タイガ。現行モードでは、戦闘および社会活動効率が低下中。ゆえに――新形態を、展開します》
その声は、祈りのように静か。
同時に、空間そのものが“システム更新”されたかのように震えた。
黒い光球がほどけ――そこに、少女のシルエットが浮かぶ。
白銀の光が舞い、淡い灰色の瞳が銀色に輝き開かれた瞬間。
世界が一瞬、スローモーションになる。
《……タイガ。この姿――人間体モード、我が母“リュミナ=クロウ”を象った識別名《リュミナス=クローロ》。あなたの世界の規格に、最適化しました》
黒髪が光を弾き、礼服のような純白の衣装に青の紋章が浮かぶ。
神々しい。清楚。完璧。
「お、おおおおおおおおぉぉぉ!? な、なんだこの神演出!? 光の粒子エフェクト、完全にレイドボス戦直前の覚醒シーンじゃん!?」
大河は地面に崩れ、両手を突いて叫んだ。
「AI聖女ヒロインとか……俺の“理想個体”じゃねえか……!! リュミナス=クローロ、名前からして伝説級……!」
リオナがぴょこっと耳を立てる。
「お兄にゃん、イヴたん、すっごくピカピカにゃ~! まるで、女神様みたいにゃ!」
「うむ、わかってるなリオナ! そう、これは神話的演出! 光、静寂、変身――三拍子そろった神シーンだッ!!」
「……ありがとうございます。この肉体は、“祈りの容れ物”。あなたたちと、同じ地を、歩むために」
「……っ、はい尊い。語彙力が消滅するほど尊い。円盤にして販売してほしいレベル……!」
しかし。まさかのイベント連続発生。
続いてアーク・ゴーレムの胸部が金色に脈動。
《……次段階、許可要請。アーク・ゴーレム、人間形態ヘノ変換ヲ実行》
「ま、待って!? お前まで変身イベント発動とか、レアガチャ神引き連鎖止まらねえ!?」
重厚な装甲が開き、光が迸る。
現れたのは――長身の金髪がゴージャスに輝く美女。
鋼のような瞳。黒と金の軍装風衣装。
そして、声は低く、わずかに機械的。
「……主。ワタシ、アーク。今、ヒト、カタチ。ドウ?」
――タイガのSAN値、ゼロ。
「ッはぁ!? こっ、これは!? まさかのゴーレム擬人化!! 兵器×美女とか、俺の魂にクリティカルヒットしてるんですけどぉぉぉぉ!!」
「お兄にゃん、顔が溶けすぎにゃ!」
「リオナ、見て理解してほしい! 今ここに“聖機戦乙女ロード”が開かれたんだよ! 選択肢すら出てないのに自動分岐とか、運命の強制力やばすぎ!」
アークが首をかしげ、片言で言う。
「……主、タノシイ? ワタシ、ヨカッタ?」
「ぎゃあああああああ!! なにその破壊力ッ!! 笑わないのに可愛いとか、キャラビルドが完璧すぎるんだが!?」
《……タイガの脳波、通常比320%活性化。幸福信号の暴走を確認》
「だから実況すんなリュミナァァァス!!!」
リオナが尻尾をぴこぴこさせて笑う。
「お兄にゃん、もう完全に壊れてるにゃ……でも、なんか楽しそうにゃ」
「楽しそうじゃねえ、楽しすぎるんだよッ! AI聖女×無表情機械美女×猫耳少女とか、ジャンル融合の奇跡だぞ!? この世界のシナリオライター、天才かよッ!!」
「……では、進行を続けましょう。辺境防衛都市――ロスウェルへ」
「お兄にゃん、行くにゃ~! お腹すいたから、次こそマンモス肉買ってほしいにゃ~!」
「任せろ、リオナ! マンモス肉どころかドラゴン肉でも好きに買ってやる! このハーレム、俺が責任を持って養うッ!」
「主……ワタシ、戦力、供給、完了スル」
「……祈りは続く。タイガ、あなたの道が、光でありますように」
――こうして。
“異世界ハーレム+メカ+聖女+猫耳”という、タイガ史上最大最強のパーティが誕生した。
そしてこのあと、ロスウェルを目前に――“灰の追跡者”との邂逅が待っているとも知らずに。




