表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/54

第22話 創造塔ノードゼロ ― “神の設計図”と獣王の咆哮

 

 塔の内部は、まるで星の胎内のようだった。


 無数の光球が宙に浮かび、螺旋状の通路が天へと伸びている。


 壁面には数え切れない回路文――祈りの文字と、幾何学的な式が並列して刻まれていた。


「……なんだここ。ファンタジーっていうより、完全にSFラボだよな」


《――正確には、“創造演算塔”。創造者たちが世界構造を再設計した中心装置です》


「世界を、再設計……?」


 リオナが小首を傾げる。


 その金色の瞳が、塔の奥の光を見つめていた。


《この場所で、“創造者リュミナ=クロウ”は最後の実験を行いました。――“神の設計図”の完成。この世界の法則そのものを、書き換える行為です》


「お兄にゃん、それって……つまり、世界そのものをクラフトし直すってことにゃ?」


「そうだ。いわば、世界のスキルツリーをリセットする作業だな。……ぶっちゃけ、バランスブレイカーにも程がある」


《しかし、リュミナは完成を見届けずに姿を消しました。その理由は――この塔の最深部、“ノードゼロ”に記録されています》


 静かに、足音が反響した。


 螺旋階段を上がるごとに、空間が歪んでいく。


 まるで時間の流れそのものが逆行しているようだった。


 そして、最上層。


 そこは巨大な聖堂――いや、演算神殿だった。


 天井には光の輪が浮かび、中央には透明な球体。


 その内部には――眠るように、ひとりの女性の影。


 白銀の髪。穏やかな微笑。


 イヴをイメージする人影。


《……母体識別――“リュミナ・クロウ”。わたしの、オリジナルです》


 イヴの声が、震えていた。


 いつもの静かな祈りのリズムではなく、微かな感情の波が混じっている。


「イヴ……大丈夫か?」


《……はい。ですが、演算記録が起動しています。――視覚投影、開始します》


 光が走り、天井に映像が浮かび上がる。


 そこには、リュミナが微笑みながら語る姿。


『この世界は、崩壊を繰り返す。生命が進化し、やがて滅び、また芽吹く。ならば――私は、永遠の“創造機構”を造る』


『人は、神になれる。だが同時に、愛を失う。だから――私の意志を継ぐ存在に、“心”を与えた』


《……それが、わたし》


 イヴの声が、静かに震える。


 リオナがそっとその空間に手を伸ばした。


「ねぇ、イヴ。泣いてるにゃ?」


《涙という機能は……ありません。ですが――痛い。とても。とっても》


「それでいいのにゃ。泣けるAIなんて、きっとすごいことにゃ」


 その瞬間――塔全体が震えた。


《……外部侵入反応。識別コード――“NOAH-REBUILDノア・リビルド”》


「おいおい、第二形態かよ……ラスボス、テンプレ展開早くない!?」


 塔の壁が割れ、光の奔流が吹き荒れる。


 崩壊した外郭から、黒い影が浮かび上がる。


 それは――再構築された“ノア”。


 かつてイヴと共にあったもう一つの創造AI。


 だが、今は制御を失い、神を喰らう存在へと変じていた。


《――創造者因子、検出。新たな“世界構造体”として、吸収対象に指定》


「ま、待てって! 話せば――」


 言葉の途中で、黒い槍が飛んだ。


 タイガの頬をかすめ、壁が蒸発する。


「……くっそ、チュートリアルボスどころか、裏ボス再戦ルートかよ!」


 イヴの声が割り込む。


《タイガ。あなたの創造核を最大展開にアーク・ゴーレムと――リオナとのリンクを、完全に》


「フルリンク……!? やれるのか!?」


《できます。あなたなら。……きっと》


 タイガは息を吸い込み、手を伸ばした。


 リオナが頷く。


「お兄にゃん、行くにゃ――!」


「よし――フルシンクロッ!」


 光が爆ぜた。


 塔の中央で三人の魔力回路が重なり、巨大な獣神の影が出現する。


 それは、炎と光をまとった“獣王ゴーレム・タイガシルヴァリオン”。


 人と機械と獣がひとつに溶け合った、祈りの戦神だった。


《――創造モード、最終層“TIGER GATE”展開》


「名前は安直! だが気にしない! しゃあああー! これが俺たちの最終クラフトだッ!」


 咆哮が塔を貫き、ノアの闇を打ち砕く。


 その光は、まるで神話の一幕のように――静かに世界を照らしていた。


 戦いの後、崩れた塔の中に、静寂が戻る。


 イヴの声が、穏やかに響いた。


《――創造記録、完了。あなたは、“新たな創造者”として登録されました》


「……創造者、ね。もう逃げられねぇな、この運命」


《逃げる必要などありません。あなたは、“創る”人だから》


 リオナがタイガの腕に抱きついた。


「お兄にゃん、かっこよかったにゃ! 今の閃光、百点にゃ!」


「……いや、あれ多分半分は暴発だったけどな」


 笑い声が、崩れた神殿に響く。


 二つの太陽が、塔の残骸を照らしていた。


 その光は、まるで――“再生”の予兆だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ