表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造魔法で異世界クラフト無双!~猫耳と聖女と鋼鉄の宴~  作者: Ciga-R


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/63

第1話 異世界到着、即サバイバルモード

 

 足元は固い土。ところどころ、背の低い草がまばらに生えているだけで、踏みしめるたびに砂埃が舞い上がる。


「……地図もコンパスもなし。リアルでやったら完全に遭難イベント確定コースなんだが」


 独り言を漏らしながらも、立ち止まっても仕方ないと自分に言い聞かせる。


 リュックの肩紐を引き上げ、重みを調整して歩き出した。


 風が吹く。乾いた空気の中に、かすかに草の青臭さと湿った匂いが混ざっていた。


「ん? ……今の、ちょっと湿気っぽくなかった? まさかの水源フラグ!?」


 鼻をひくひくさせながら、少しテンションが上がる。


「ゲームだったら今、ミニマップに“水滴アイコン”出てるタイミングなんだけどなぁ!」


 冗談めかして言いながらも、足取りは自然と速くなる。


 どれくらい歩いただろう。体感で二時間は経過。


 だが景色はまるで変わらない。延々コピペ荒野フィールド。


 喉は乾き、大事なチョコバー1本目は既に胃の中。足はズシンと重く、体力バーが目に見えて減っていく気分だ。


「おかしいな……この山、もしかして遠景テクスチャじゃない? 歩いても近づかないタイプの背景?」


 半ば本気で呟いた、その瞬間――。


 ガサッ。


 前方の茂みが揺れた。


 反射的に身を固め、心臓がドクンと音を立てる。


「……誰か、いるのか?」


 声をかけても返事はない。代わりに、低いうなり声のような音が漏れる。


 次の瞬間、茂みの中から何かがぬっと顔を出した。


 犬……? いや、違う。でかい。


 灰色の毛並み、青白く光る瞳。静電気のように毛先がチリチリしている。


「お、おおおお……おおかみ!? いや、でかっ! これ初遭遇で出す敵じゃないよね? スライムかウサギ型でやり直しをオナシャス」


 腰を引きながら十徳ナイフを取り出す。頼りなさすぎて、刃先がぷるぷる震えている。


 狼――いや、“それ”は低く唸り、次の瞬間、砂を蹴って突進してきた。


「うわあああ来たぁぁぁぁぁぁっ!? 早い早い早いっ、足音ドップラー効果してるぅッ!!」


 反射的に腕で顔を庇い、目をぎゅっと閉じる。


 ――が、次に聞こえたのは、甲高い「キャンッ!」という悲鳴。


 恐る恐る目を開けると、狼が光の糸のようなものに絡め取られ、地面に倒れていた。


「な、なにっ……!? バリア? いや、サポート魔法? ここに来てやっと助けキャラ来た!?」


 視線を上げる。そこに“誰か”が立っていた。


 逆光の中、長い耳がゆらりと動く。


 人影……いや、違う。肌は淡い緑色、瞳は赤く光り、背中から木の枝のような突起が二本伸びている。


「うわっ、えっ、緑肌!? 待ってこれ、エルフじゃなくてツリーフォーク系!? 俺いま、完全に異世界生物図鑑の表紙見てるかも」


 呆然とつぶやく大河をよそに、“それ”は倒れた狼を見下ろし、右手をひらりと振った。


 光の糸がぎゅっと締まり、バチンという音とともに狼の体が霧のように崩壊。


 その場に残ったのは、青白い結晶の欠片だけだった。


「……え、ドロップアイテム? 今の完全にドロップ演出じゃん! SE鳴ってたし!」


 思わずテンションが上がったその瞬間、緑の存在がこちらを振り向いた。


 赤い瞳が、じっとこちらを射抜く。


 その視線だけで、体温が一気に下がった。


「ひぃっ……え、ちょ、こっち敵認定されてない!? 俺、ノンアクティブモブですから!」


 とっさに両手を上げてアピールするが――。


 耳をつんざく咆哮が、背後から響いた。


 振り返ると、五、六体の狼型モンスターがこちらを囲んでいた。さっきの仲間か。


「ちょ、ちょっと待って!? なんで群れイベント発生してるの!? 俺トリガー引いてないよ!? 戦闘フラグ立ててないよ!」


 狼たちが一斉に樹妖に飛びかかる。


 樹妖は指を鳴らし、光の糸を広げた。空気が震え、轟音、閃光、砂塵。


 理解する間もなく衝撃波が直撃し、大河は地面を転がった。


「ぐはっ!? 物理演出リアルすぎだろぉぉぉッ!」


 視界がぐらぐらと揺れる。

 遠くで閃光が走り、咆哮と爆音が交錯する。


 ――ああ、これ完全に「巻き込まれイベント」だ。


 遠のく意識の中で、そんなメタすぎる感想だけが、ぽつりと浮かんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ