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第76話 筋肉の土壌で花が咲く


 その後も特に星奈ちゃんの出番となるような事態もなく順調に進み、ボス部屋の前までたどり着いた。

 本来であれば狭い通路、突然現れるゴーレムに苦戦するのだろうけどこちらには雪さんがいるからね。


「『ここのボスはアダマンタイトゴーレムと言って、モンスターとしてはSランクに分類されるほどの強敵ですわペン!』」

「アダマンタイト!」

 ゲームなどで同じみの激レアめちゃ(かた)鉱石(こうせき)じゃないですか!


「『ただし半分地面に埋まっている状態でスタートするので、敵の射程に気をつけていれば思ったよりは苦戦しないそうですわぺん!』」

「なるほど」

 Sランクへのとっかかり的なボスなのかね。


「そう、アダマンタイト! 今日の目的はそのアダマンタイトだ! 私の盾を作る為のな!」

「そう言えば壊れちゃいましたもんね」

 今使っているのはスペアなのかな。


「前は何の素材だったのぉ~?」

「……前もアダマンタイトだ。単純な硬度なら最上位に強い鉱石だからな!」

「へぇ~! そんなに硬い盾を壊しちゃうなんてぇ、魔人さんって激ヤバだねぇ~」

 あ!


 【え!?】

 【魔人!?】


「ちょっ! 凜花ぁ!」

「ふぇ?」

 あわわわ……みんなには秘密にしてたのに!


【だからミイラ……え? その程度で助かったの?】

【ちょっと! 魔人なんて洒落になってないよぉ!】

【魔人の格好したお姉さんってことだよね……?】


「バレてしまっては仕方がない! そうだ、私は凜音さんを守るために魔人の攻撃を受け、見事に生存した優秀なタンクだ! やはりタンクは必要なのだ!」

「あはっ♪ さっき言われたこと気にしてるぅ~!」

 まだみんな疑いの段階だったのに、トドメを刺しちゃったね……タンクのくせに。


 【魔人ってマジなのかおい……おい凜音、本気で紅蓮に加入しろ。オレらが守ってやるから (10000円)】

 【魔人って本当ですか!? 凜きゅん、ルミナスセージへの加入、本気で検討してください。命に代えてもお守りしますから (10000円)】


 ほぼ同時に同じことを言う2人の視聴者さん――間違いなく石火さんとルミナさんなんだろうけど。


「何を言う! 次は我々で絶対倒すのだ! そうだろう、みんな!」

「リベンジ相手に不足なし」

「今度はウチが守ってあげるからっ!」


 星奈さん、雪さん、ミコさんが(そろ)って頼もしいことを言ってくれる。

 あんなに怖い思いをしたのに、みんな強い人達だ。


「ということなので、俺は『アヘピス』のみんなと一緒にいます。再び魔人と出会っても――」

「お、おい……!」

 いいこと言う途中だったのに、星奈さんが赤面して割り込んできた。


「み、みんなの前で恥ずかしいじゃないか……プ、プロポーズなんて……!」

「……」

 脳みそが筋肉だけでできてると思っていたが勘違(かんちが)いだった。花畑も設置されていたらしい。

 どうしてプロポーズだと勘違いしたんでしょうか。


「……」

「も、もちろん答えはイエスだが……」

「……」

「わ、私も一応女だから……その、いい雰囲気的な、な!」

「……」

「い、いや違う! こんなの私ではない! 私こそがロマン(あふ)れるプロポーズをしてやろう! だから答えはやはりノーだ!」


 いつの間にかプロポーズしたことになっててしかも断られた件。

 そして気がついた。この脳筋花畑に付き合っていると話が進まないことに。


 【……】

 【……】


「ここのボスはアダマンタイトゴーレムと言ったな! なればこそ、私1人て倒してみせよう! 苦しい戦いを乗り越えた先に……先に……」

 チラチラこちらを見る星奈、いや筋肉培養花畑。


「――いや、その先は全て終わったら明らかになるだろう」

 あ、またフラグ建てた。まあいいや。


「――いくぞっ!」

「……」

「……」

「……」

「『……』」

「お、お~!」

 唯一、凜花だけが返事をしてあげた。やっぱりいい子だね。


 【……】

 【……】


「……グゴゴゴゴ!」


 ボス部屋の扉を開けると、アダマンタイトゴーレムはすぐにこちらに気がついたように(うな)りを上げる。

 褐色(かっしょく)の、金属のようなボディが上半身ほど露出(ろしゅつ)しており、フランチョンが言った通り通り下半身は地面に埋まっている。それでも3メートルはある巨大なモンスターだ。

 正攻法では、距離をとって遠距離攻撃がいいらしいが……。


「覚悟ぉっ!」

 一目散(いちもくさん)にゴーレムに突進して行く星奈さん。


 【さすがに無謀(むぼう)じゃ……】

 【いや1度死んだ方が……】


 視聴者さんも辛辣(しんらつ)だ。


「……凜花、補助してあげて」

「う、うん……でもぉ~……」

「『凜花さんの”支援の鎖(アシストチェーン)”の効果は低いと思われますわ。対象への想いが明らかに足りてませんもの……ペン』」

 あれ、また死んじゃうんじゃ……。


「ぐはっ!?」

「ゴゴゴ……!」

 ゴーレムを殴り、そして殴られ吹き飛ばされる星奈さん。ステゴロて。


 【せめて盾使えや!】

 【某バカよりもバカがいるとは……】


 本当に……あの人は……。


「まだまだぁ! 私の想いはこんなものではないっ!」

「ゴゴゴ!」

 立ち上がって殴り、大きく殴り飛ばされ、立ち上がって殴りかかり、吹き飛ばされ……。


「命を救われ――ぐはぁっ!」

「……!」

「初めてを奪われ――うぐぅっ!」

「……!」

 奪ってない。

「私の強い想いは――がはっ!」

「……!」

「こんなもんじゃなーい!」

 しかし……何だろうこの胸に去来(きょらい)する熱い思いは!


「星奈ちゃん! やっちゃえー!」

「星奈ちゃん! 気合だよーっ!」

「行きなさい、星奈ちゃん」

 他の誰でもない、あなた自身のために!


 【やれ! 胸がコアに通じる弱点だぞ! (10000円)】

 【拳の握りをしっかり! 腰の回転を伝えるのです! (10000円)】

 【そこっ! 避けてーっ! (10000円)】


 いつの間にかみんなも応援してしまっている!


「ごふっ!」

 しかしゴーレムにいい打撃を貰ってしまう星奈さん。


「星奈ちゃん! もう見てられないよっ!」

「凜花……」

 凜花が鎖を出そうとするが、首を振って静止する。


「これは星奈さんの戦いだから」

「……うん」

 凜花もわかってはいたか……いや、違うな。


「――ペッ! 負けるかぁ!」

「ゴォォ……!」

 口から血を吐き、それでも立ち上がり駆ける星奈さん。ゴーレムは……たいして()いている様子はない。


「――まだまだ!」

「……」

「凜音の隣にいるには……まだまだ足りないんだぁぁぁ!!!」

「……!」


 それでも、鬼気迫(ききせま)る勢いだけは止まらない。止められない!


「戦いに勝つのは……必ず勝とうと、(かた)く決心した者なのだ! 私はっ! 決心しているッ!!!」

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