第75話 S極とM極
「みなさんこんにちは! 今日はいよいよ我々『アヘピス』のリーダー、星奈さんの復帰戦です!」
カメラに向かって爽やかスマイル!
「よろしく頼む! この身に代えても凜音の安全は守るからな、視聴者さんたちも安心して欲しい!」
【おかえり~! (10000円)】
【またミイラになるなよー (10000円)】
【色々な意味での復帰ね。これから鎬を削る相手になるのかしら (10000円)】
色々な意味とは、探索者パーティとして高難易度の探索を行う、ということかな。
きっと最後にコメントした人は高ランクの方だろう。その通りになれるように頑張ろう。
「ということで、今日はランクAダンジョンに来てます! Aランクは初めてなので緊張しますね~」
【Aランク!? 大丈夫なの!? (10000円)】
【マジかよ、復帰戦だろ? (10000円)】
予想通りの反応。まぁ大丈夫だろう、いざとなれば例の騎士が参上するだけだし。
「今回は厄介な罠や予測不能な技を使うモンスターではなく、シンプルなパワーが試されるダンジョンを選びました!」
「はっはっは! その名もゴーレムダンジョンだっ!」
そう、再びのゴーレムダンジョンである。
【罠がないって……存在そのものが割と罠じゃない? (10000円)】
【あいつらいきなり地面の中から出てくるしね (10000円)】
「その通り! ですが、こちらには魔力で敵を探知できる素晴らしいサポーターがいるので問題ありません!」
「いぇーい、ぴすぴーす」
雪さんである。
彼女の『ジェリー・ザ・マウス』のレーダーには魔力探知機能もあるから、隠れたモンスターや罠ですら探知可能! 高難易度では必須クラス! 一家に1人欲しい! かわいい!
「加えて敵の硬い体はミコと……正式加入してくれた凜音、凜花が破壊してくれるだろう! 我々に死角なしっ! わーはっはっ!」
あれ、そう言えば俺がアタッカーなんだけど……ゴーレムを正攻法で倒すなんてどうすりゃいいんだ?
「『忘れてはいけませんペン! 凜音様の使う剣は宝条財閥が用意した特別性! ゴーレムなんてスパッと両断ですわぁ~~~!』」
俺の内心を察してか、フランチョンがそんなことを言ってくれる。彼女がそう言うならば、信じよう。
「では準備はいいな! 行くぞ!」
「はい!」
【うぅ、凜きゅん心配だよぉ (10000円)】
【星奈さん、死んでも守ってあげて…… (10000円)】
星奈さんを先頭にダンジョンを進む。
以前のゴーレムダンジョンとは違い、最初から洞窟の中のようだ。幅と高さ共に5メートルほどの狭い通路が続いている。洞窟と言っても、完全に暗いわけではなく、ところどころ宝石のような石が淡く光って足元を照らしている。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、この石光ってて綺麗だねぇ♪」
「そうだね」
【夜光石って言うんだよ (10000円)】
【ロマンチックよね (10000円)】
今までの洞窟タイプのダンジョンにもあったとは思うが、意識してなかったな。普段はランチョンが明るく照らしてくれているから……。
暗闇の中で足元を照らすように仄かに光っている鉱石。これ……部屋に飾りたい!
「ちょっとだけ貰っちゃおう――硬っ!」
フランバスターで採掘しようとしたが、夜光石というか壁に弾かれてしまった。
【ふふ、かわいい (10000円)】
【誰もが通る道だよね (10000円)】
【ダンジョンの壁は壊れないんだよ! (10000円)】
「……」
顔が赤く染まるのを感じた。
「ははっ、かわいいやつめ!」
「くっ!」
この脳筋騎士め! 頭を撫でるな!
「ダンジョン七不思議の1つ、壁は壊れない。これ、常識」
「ねー、ホント不思議っ」
「お兄ちゃん……私でも知ってるよ?」
「……」
顔が沸騰しそうだ。
【舐め回したい (10000円)】
【オカズにします! (10000円)】
やめて。
「む。前方にある岩、ゴーレムの擬態」
「おぉ、ようやくか!」
入口から少し歩いたところ、1メートルほどの大きさの岩石が落ちているが、それだろうか。確かに前回もそんな感じだった気がする。
ゴーレムが埋まっているということは床に穴が空いているということだけど……壊れないんじゃないんですっけ?
「ほれ、出てこい!」
「……!」
星奈さんが小石をなげると、ゆっくりとゴーレムが立ち上がり始めた。
「『ランクAダンジョンのゴーレムはミスリルゴーレムという特殊金属ゴーレムですわ! 魔鉄よりも硬度が劣る分魔法を使いますわペン!』」
ミスリルゴーレム、かぁ。そう言えば以前採った大量のミスリルはどうなったんだろうか。
「何、問題ない! 我が盾は魔法をも防ぐ――」
「“闇を愛せよ”“2人を繋ぐ”『支援の鎖!』」
凜花から支援を受け、ミスリルゴーレムへと駆け出す。
「とりゃ!」
「……!?」
すごいぞフランバスター! ミスリルゴーレムも真っ二つだ!
「魔法……防ぐ……」
「やったね、お兄ちゃん!」
「ああ! 凜花とフランバスターのおかげだ!」
【すごーい! (10000円)】
【いやゴーレムを斬るってどういうことよ…… (10000円)】
【リーダーが悲しそうに何か呟いてるよ (10000円)】
「さ、サクッと進もう」
「あ~あ、今回ウチの出番ないかもだね~」
「『ゴーレムは物理型ですもの、仕方ないですわペン』」
ミコさんはいるだけで明るくなるから大丈夫!
「……わ、私は……」
【何もできてなくて草】
【復帰したてだからね、ゆっくりしてればいいよ (10000円)】
そういうことだよ!
ということでミスリルゴーレムを収納して再び足を進める。第1層は単発の敵だけ、特に何ごともなく進めた。
しかし第二層からは少し様子が異なっており、まず道の大きさが広くなっていた。雰囲気はあまり変わらないが、夜光石が大きくなっている。持って帰れないのが残念だ。
「『第2層からは複数体のゴーレムが出現すると言われておりますわペン! 通路もその分大きくなってますわねペン』」
「確かに2、3体は同時に出てこれそうだね」
「リクエスト通り、前方から3体のゴーレムが近づいて来てる。戦闘準備」
「よし!」
星奈さんが盾を構えなおす――。
「“闇を愛せよ”“2人を繋ぐ”『支援の鎖!』」
「とりゃ! うりゃ! そりゃ!」
――間も無く倒す。
【やはりダンジョン周回にタンクは不用 (10000円)】
【圧倒的パワーでねじ伏せればいいですからね (10000円)】
【ソシャゲの周回じゃないんだから……タンクは必要でしょ! (10000円)】
「……ふぐぅっ!」
あ、泣き出した。
「星奈ちゃん、がんばっぴ!」
「うぅ……凜花ぁ、ありがとな……!」
ほぼ凜花のせいだけどね。星奈ちゃんに仕事が回らないの。
そして対複数相手でも、ゴーレム程度なら鎖の拘束が有効だとわかり……まあ楽勝だね。
【冗談はさておき、義妹ちゃん素晴らしいスキルですね (10000円)】
【ランクAのゴーレムだぞ? それを身動き取れなくするなんてな。さすが義妹だ! (10000円)】
……さす凜! しかし義妹って何の話だろう。
【義妹ちゃん、『輝きの賢者』への移籍どうですか? 今ならお兄様もご一緒に入れますよ (10000円)】
【バカは黙ってろ。義妹よ、『紅蓮の戦処女』が遥かな高みに連れて行ってやろう! もちろん兄も一緒だ! (10000円)】
「えぇ? え~っとぉ~……」
「無視していいよ、この人たちは」
【なるほど、放置プレイをご所望ですか。やはり私と凜きゅんは性的嗜好がピッタリですね (10000円)】
【どちらかと言うとオレはSだが、時にはMにもなってやるぜ! どうだ、唆るだろう? (10000円)】
ほらね、どうしようもない。
ご覧いただきありがとうございます!
投稿ペースですが、7日から1日1話(20:40頃)となります。
少なくなってしまいますが、よろしくお願いします。




