第63話 魔法カード発動! 『ファイヤーボール!』
病院の空き部屋を借り、そこで厳しい顔をした理事長と2人っきり……ではなく真世さんも俺の横にいてくれてる。
まるで極寒の地で全裸で凍える俺に与えられた1枚の毛布――否、ぬくもりそのもの。今度から真世ママと呼ぼう。
「さて、説明して貰おうか。それとなぜメイドの手を握っている?」
「ななな何をだろ~! あ、星奈さんの言ってたことぉ? 多分傷が深いからが変な幻覚でも見ちゃったんじゃないかなぁ~? あっはっは! それと恋人の手を繋ぐのに理由なんかないですよぉ!」
「ははは」
「あはは~!」
乾いた笑い声を出す理事長だが、目が笑っていない。
「あはは~……」
「……」
「……」
「……」
「……そうです、私が例の黒騎士です」
勝てなかったよ……さすがは日本トップの財閥鳳凰院グループのお方だよ……。
「刑法第55条、ダンジョンにおける犯罪活動の罰則について。探索者協会規約第4条、探索活動における禁止事項について。都の条例第36条、ダンジョンの利用における禁止事項及び罰則。他にも――」
「もうおやめください! 凜音様のライフはゼロでございます!」
まだ生きてるよ……500LPくらいだけど。
「なぜそのようなことを? 今言ったこと、知らない訳ではないだろう?」
半分くらい知らなかったけどね。
「そのぉ~……ダンジョンを放っておくと世界が……日本が滅びる的な……」
そういったような感じのこともありましてぇ……。
「というと?」
「……ダ、ダンジョンの影響力が増していずれ周囲を飲み込むほどに成長してぇ……それで……」
「……ふむ、そういう話もあるな」
おや?
「かつてダンジョンを研究していた人間の中にはそう言う人間もいた。漏れなく封殺されて来たが……」
「……」
ま、まさか俺も殺される…!?
「……」
「……タスケ――」
「はぁ~……正直に言おう。我々も秘密裏に破壊を試みてはいた。が、人命含め数多の代償に対して得られる物は少なく、そしてダンジョンの数が多すぎる」
……ふむ?
「無理だったんだ。我々にできることはこれ以上生活圏が脅かされないように維持する程度だった」
まぁ、あんな巨大なボスと戦うなんてね。
しかし、この流れはもしかして思ってたのと違う? お咎め無し? 一緒に頑張りましょう的な!?
「実は黒騎士を探していたんだよ。少しの罰則と支援を与えるためにな」
「本当――えっ罰則!? やっぱりあるんじゃん!」
「そりゃああるさ。キミがさまざまな法律違反を犯しているのに変わりは無い。が、世界のために動いていることは理解している。ほんの些細な罰則と引き換えに、我々にはキミを支援する準備があるのだよ」
「……よかったぁ!」
正直終わったと思ったよ。
繋がっていた真世さんの手も小刻みに震えている。きっと彼女も安心したんだろう。
支えてくれたお返しに、少しだけ力を強くする。
「しかし宝条ベアトリーチェめ……なぜ我々に伝えなかった……あの守銭奴め」
ボソボソと何か聞こえるけど、聞かなかったことにしよう。その方がいい。
「それとメイド。笑いを噛み殺せてないぞ。全て知っていたな? 我々の思惑と凜音さんの現状を」
「ななな何のことでしょう?」
「真世さん……?」
知っていた? 何を? そんな……。
「凜音様――いえ凜音ちゃん、あんな年増の言う事を鵜呑みにしちゃいけませんよ? ママはいつだって味方でちゅからねぇ~」
「ママぁ……」
……ん?
「え?」
「はぁ~ん♡ 素晴らしい……これは素晴らしい感覚ですね……! 真里愛様がママプレイにこだわるお気持ちがよくわかりました」
「真世さん? え?」
「こぉ~ら♡ ママのことはママと呼ばなきゃ、めっ! でちゅよぉ~♡」
「マ、ママ?」
「はぁい♡」
何が起こっている!?
俺は一体どうなってしまうんだ!?
「さて、詳しい話はベアトリーチェ、それともう一つの財閥の人間とも話を進めて行くとしよう。今日のところは星奈のことだ。急ぎ輸送の手続きをしなければな」
よくこの状況でも本筋を忘れないで進められるね。
「そうですね、元々彼女のお見舞いに来たことですし――」
「行きまちゅよ、凜音ちゃん♡」
もうやめて! 俺のライフはゼロよ!




