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第61話 完熟花弁に水を

 翌日。


 目を覚まし体を起こすと、目の前には誰かの後頭部があった。

 意味がわからなかった。恐怖以外の感想が浮かばなかった。


「凜音さん、昨日はすまなかった」

「その声は……理事長? いつからそこに……」

「命の危機に(ひん)した状況からの帰還、星奈のこと……凜音さんたちが心身ともに疲れている中であのようなことを申したこと、本当に申し訳ございませんでした」

 このまま続けんの? 後頭部と背中しか見えないけど。


 しかし昨日の今日でよくもまぁ態度が変わったこと。


「何が目的ですの?」

「……」


 かわいい寝間着姿のフランが慌てた様子で駆けつけてくれる。

 ていうか、誰が理事長をここまで通したんだ?


「もちろん、凜音さんの身を案じていたとはいえ本意ではない結果となってしまった私の対応を謝罪しに来たのです」

「……その心は?」

 あ、これ何かしらの裏があるやつだ。


「いやいや、二心はありませんよ」

「……」

 顔に書いてある。『四心くらいあるよ!』って。

 

「……」

「……」

「……5か月」


 何だ? 5か月?

 まさか俺に残された猶予(ゆうよ)は残り5か月だとでも言うのか!?


「……凛音様が精子バンクに訪れていない期間が5か月を超えました」

「んん?」

 予想だにしていなかった単語が飛び出てきて目が点になってしまった。


「あ、あれは……ちゃんとたくさんお嫁さんがいればいいんじゃ――」

「いえ、全くそんなことありませんわよ? 全男性の義務ですから。てっきりわたくし以外と行ってるものだとばかり……それとお嫁さん、全然足りませんわ」

 まさかのフランに呆れられてしまっている!


「まあ、これからも行かなくてもいいように取り計らおう。その代わり――」

 来た。理事長の思惑が……! いつの間にか普段の偉そうな口調に戻ってるし!


「そ、その代わり……?」

「定期的に私を抱け。その際に摂取したものを提出しといてやる」

「……」

 ……ええ?


「その心は?」

「……」

「その心は?」

「……好きなんだよ! 本気で! 悪いか! 他の糞男どもと違って素直でかわいくて! 昨日だって心配で心配で(たま)らなかったんだよ!

「理事長……」

 何かと俺に手を出すよう言って来ていたが、そう言うことだったのか。まじか。

 

「そういうことでしたら……まあ、悪くはないですわね。凜音様、お気付きかとは思いますが、鳳凰院(ほうおういん)家の方々は政界に強い影響力をお持ちです。今のように絶対のルールにも手が出せるほどに」

「な、なるほど?」

「そのような方を身内に引き込むことができれば、色々と助かることも多いでしょう」


 色々と、という部分に多大な含みを感じる。

 そういった打算的な思いで抱くのは正直気乗りはしないが……まあ順番が前後するだけの話だろう。


 理事長は30代後半の……ムチムチボインで半熟な真里愛とはまた違って、完熟しきったフェロモンをムンムンさせた色っぽい女性。(そそ)られるかどうかと言われたらとっても唆る!


「……私は既に2人産んでいるからな。こいつらのような生娘(きむすめ)とは違う快楽を教えてやる。どうだ?」

「……ほう」


 対戦よろしくお願いします!


 ……。


 ……。


 ……。


「んおっほぉぉぉッッ!? 何コレぇ、なにこれぇぇっ!? こんなの知らなっ――ほぉぉぉっ!? やめっ! 休ませて――ぉぐぉっ、おっ、おっ、おっ、んほぉぉっ!?」


 対あり!




 ◆◇◆◇◆◇


「……私は今年で40になる」

「そうなんですか? 全然そうは見えないですよ」

「ありがとう。実はな、昔から40になる前には結婚をしたいと考えていた。そんな中で出会ったのが君だったという訳さ……」

 ひとしきり熟しきった体を堪能(たんのう)させてもらった後、ベッドに横になりながら理事長が語り出す。


「何としても君を手に入れたいという思いと同時に、君が成すことを見たいとも思っていた。本来なら、男性が探索者を目指しても全力で阻止するのだが……」

「今の俺があるのは理事長のおかげなんですね」

「……そうだ。恩着せがましく感じるだろうが、最早手段は選ばない。今は打算ありきの関係でいい。いずれ……少しでも気持ちを向けてくれたら十分なんだ」


 最初は――いや、最近まで厳しくて取っつきにくい人だという印象だったが……意外とそうでもないのかもしれない。

 なんというか、尽くしてくれそうな感じ?


「これからは凜音さんを…そばで見守らせてくれないか?

 理事長の下半身を見る。何度も放ったモノが、(あふ)れて(もも)を伝っていた。


「……もちろん! これからもよろしくお願いします!」

「ありがとう。ついでに、その……できれば名前で……咲夜(さくや)と呼んで欲しい」

 顔を赤らめて顔を()らす姿は、まるで少女のそれだった。




「咲夜さん、よろしくね!」

「ああ! こちらこそ、末永くよろしく頼む!」

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