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第59話 慰めた後は……

 ランチョンは……AIじゃない……!?


「そん、な……っ!?」

「いえ、AIも搭載(とうさい)してるのですけれども。実は今までの会話のやり取りなどは、マニュアル操作で我々が直接行っていたのですわ! ランチョンの時は主にわたくしですが!」

 なん……だって……?


「ランチョンを出して頂いてよろしいですか?」

「あ、あぁ……」

 頭がうまく回らない中、言われるがままランチョンを取り出してフランに渡す。


「ここの……お尻のところを7秒ほど長押ししますと――」

「『オートモードに切り替えます。デバイス情報の確認――ペン。通信状況――ペン。周囲の状況の確認――完了ペン。おはようございます、凜音様。ご指示をお願いしますペン』」

 抑揚(よくよう)のない、文字通り機械的な音声が流れ始めた。


「……」

「まあ今は置いておきまして、問題はここからですわ」

 置いてかないでくれ……! 事態が飲み込めない!


「配信終了後、わたくしは席を外しました。その後ランチョンの起動を知らせるアラームが鳴ったのですが――」

「魔人のとき、だね」

「はい。その時対応してくれたのが、ちょうど操作盤の近くにいた……まひるなのですわ」

「……」


 そういう、ことか。

 あの時俺はランチョンに魔人の情報を求めたが、(かんば)しくない反応にすぐに『収納』してしまった。そのことでまひるちゃんを傷つけてしまったのだ。


「……あたし……ごめん、なさい……」

「いや! まひるちゃんが謝ることじゃない! 俺の配慮(はいりょ)が――」

「あたし……! 凜音様が必要な時に……! 力になれなかった……」

 ……違った。


「魔人は怖い存在だって、そればっかりで……必死に戦おうとする凜音様の助けになれなくて……あたし……」


 再びすすり泣く声だけが部屋に響く。

 冷たくされたからじゃない。まひるちゃんは……俺の力になれなかったと思い込んで落ち込んでいるんだ。


「……通信が途絶(とだ)えた後、まひるはわたくしを呼び、真世に緊急車両の手配をしてくれたのです。その時の表情は……」

「……」

 俺が死ぬかも知れない。そんな状況でまひるちゃんは……。


「その後真世から凜音様の無事を知らされて、ご覧の状況ですわ!」

「……もう、あたしには凜音様にお仕えする資格が……ありません……」


 ……まいったな。まいった。どうしようもない。

 本当にまいった。


「ごめん、こんな事言うのはどうかしてるかも知れないけど……まひるちゃんが愛おしくてたまらない」

「……えぇ?」

「こんなにも想ってくれてありがとう。後悔してくれてありがとう。改めて、これからも支えて欲しい」

「そんな……意味がわからない……」

 そうだろうそうだろう。しかしそうとしか言えない……いや、ちゃんと伝えなきゃ。


「いつもまひるちゃんのかわいい笑顔に()やされ、健気な姿に励まされる。そばにいてくれるだけで幸せだよ。素直じゃなさすぎて素直なところも大好きだ!」

「……けどぉ……」

「まひるちゃんは戦闘面でもサポートしたいと思ってくれてるの? それならそれで嬉しいけど」

「……それ、は……」

 正直厳しいだろうけど。フランのように『鑑定』などが使える訳でも、探索者としての経験がある訳ではないのだから。

 

「あたし、は……」

「うん」

「……違う、かも……」

 そっかそっか。


「そう。なら、今回のまひるちゃんは完璧だったんじゃない? すぐにフランや真世さんを呼んだんでしょ? そのお陰で星奈さんは助かったんだし!」

「……」

「それに直接戦いのサポートじゃなくても、『怪我しないで』とか『無事でいて』とか……この言葉にどれだけ励まされたかわかるかい?」

「あ……」

「これからも頼むよ。ずっとそばで、励ましてください」


 目に涙を溜め、今にも泣き出しそうな顔で俺をじっと見つめるまひるちゃん。

 きっと、その涙はさっきまでと違うものだ。


「……こんな、あたしでもいいの……?」

「まひるちゃんだからいいんだよ」


 まひるちゃんを抱きしめる。

 落ち込む必要などない。後悔する必要もない。ただいてくれるだけで嬉しいんだと思いながら。


「……キス、して」

「うん」


 そっと、力強くまひるちゃんの唇に触れる。そして――。


「さっ! 一件落着といきましたし、魔人についてのお話を致しましょう!」

 どうしてぇっ!? これからまひるちゃんと濃厚(なぐさ)めックスの流れだったじゃん!


 どうでもいいよ! 魔人なんか!


「そうですね! 2度と辛い思いをしないためにも! 今度会ったらコテンパンにしちゃってくださいっ!」

「ふふ。その意気ですわよ、まひる!」


 ……そうだね!

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