第55話 ヤッたことはヤラれる
その後も同様の手法でスライムを倒しながら先へと進み、気が付けばボス部屋の前に。
一時減っていたコメントも、少しずつ戻ってきたので一安心だ。
【さっきのスライムもすごかったね。まるで散弾銃みたい! (10000円)】
【物理とは何か考えさせられるね (10000円)】
【元からある武器だけではなく、落ちている物も利用できる。参考になるよ (10000円)】
「あははは~……」
とはいえ自分自身もまさかここまでとは思わなかったな。
前のゴーレムの時は第2聖句まで開放しての結果だった。もしかしたら強敵との戦いで『身体強化』や固有スキルのレベルが上っているのかも知れない。
「さっ! 気を引き締めてボスに挑戦したいと思います!」
「『ここのボスは“キングスライム”という、通常よりも大きいスライムとなりますわペン。残念ながら王冠は被っておりませんわペン!』」
ふむ、名前の通りなら相当大きいスライムなのだろう。
これは気を引き締めてかからねば。
「では……ボス部屋、オープン!」
中を見ると、いつもより大きい部屋の中央に一軒家ほどの大きさのスライムがプルプル震えて待ち構えているのが見えた。
そういえば星奈さんたちはこのダンジョンで敗走したと言っていたが……。
【大きいの! (10000円)】
【こいつ、デカすぎて本当に武器が通らないんだよね (10000円)】
【魔法を使うにしても、火と水への抵抗も強い。難敵だよ (10000円)】
「なるほど……」
「ピギィィィーーーッ!」
「うるさっ!」
こちらを認識したらしいキングスライムが鳴き声のようなものを上げる。
耳をつんざくような甲高い音だ。
「あれ!? しかもさらにデカくなってない!?」
「『“肥大化”のスキルですわペン! さすがに身体全体を飲み込まれたら大変な目ことになりますわペン!』」
「むむ、それは避けたいですね」
あの体内に取り込まれたら酸で溶けるまでもなく窒息死しそうだ。
キミ本当にCランク?
「とはいえそこまでの大きさになるには時間が――」
「『あぶないですわ!』」
「おっと」
悠々と眺めていた所、スライムが何かを飛ばしてきた。
【酸液!? 床が焦げてるみたい! (10000円)】
【油断しないでよぉぉ…… (10000円)】
【ちょっと! 凜きゅんのかわいいお顔が傷ついたらどうすのよっ! 私が責任取るわっ! (10000円)】
【私も取るわ! 連帯責任よ! (10000円)】
【みんなに責任を負わせる訳にはいかないわ。私だけでいいわ (10000円)】
みんな仲いいね。
しかし顔にかかってしまっては一生マスク生活を余儀なくされてしまうかも知れない。
動画映えはしないが、ここはサクッと終わらせよう。
「大きいってことは、弱点も大きいってこと! くらえっ!」
「ピッ!? ギィィーーーッッ!!!」
拳大の石をコアに向けて一直線に投げる。
キングスライムがデカいと言っても、巨大ゴーレムの足元くらいにしか及ばないのだ。何の脅威も感じない。
「討伐完りょ――うわっ!」
そんな油断を見透かすように、スライムの最後の反撃が襲いかかってきた。
スローモーションに感じられる思考と視界が捉えたのは――。
【危なっ!】
【いやぁぁぁ!】
そう、破裂したスライムの体液が部屋中に飛び散ったのだ。
「――ちっ! “頭を垂れろ”“汝ら導く”『身体強化』」
「『――に、逃げるですわ! 危ないですわ! 避けるですわぁーーー! ペン!』」
小声で聖句を開放し、『身体強化』のレベルを上げる。今まで俺がやってたかのような、まるで散弾銃のような酸液を避け切るには第1の出力じゃ足りないと判断したから。
ランチョンも、声が聞こえないように敢えて大きな声を出してくれているようだ。カメラに映らないように配慮もしてくれている。
「――っ!」
それでも避けきれない物はこっそり左手で弾く。皮が焼けるような感触があったが、問題ない程度だ。
「(星奈さんたちは――無事か)」
流石というべきか、既に星奈さんがみんなの前で盾を展開している。
「……ふぅ」
一瞬の出来事だったが、何倍もの時間が過ぎたような感覚の中。酸液の雨も止んだところで一息つく。
【凜きゅん……】
【無事、だよね……?】
「はい、少し危なかったですが幸い無傷でやり過ごすことができました!」
【よかった……本当に良かったよぉ……】
【ごめんなさい、私見てられなかった】
【心臓止まったわ】
視聴者のみなさんも本当に心配してくれたようで、投げ銭を忘れてコメントしてくれている。
動画の山と言えばそうだが……いかんね、どうしても通常時の撮影では油断が生まれてしまう。
星奈さんから貰った話、いい機会かもしれないな。
「ご心配をおかけしました! 本当に無事ですので!」
くるりと回って無傷なことをアピール。もちろん左手の甲は映さないようにね!
【うん……うん……! (10000円)】
【ねぇ、今度の動画はお姉さんと一緒にお花の紹介動画にしよ? そうしよ? (10000円)】
「それもいいかも知れませんが……もしかしたら、次回の動画は重大発表があるかも知れません!」
その実、大した事ない発表なのは配信者あるあるだけどね。
【いよいよね…… (10000円)】
【準備はできてるから! (10000円)】
【も、もしかして……なの! (10000円)】
【そんなまだ早いわ……けれど、あなたがそう言うなら構わないわ (10000円)】
いやなんかみんな知ってる風だけど……何で?
「そ、それでは今日はこの辺で! 次回も会いましょう~!」
ちなみに、ダンジョン報酬はスライムのような見た目の、なんかネバネバした塊だった。




