第5話 巡らされていた策略
「おはようございますわぁ~~~!」
「んん……あ、おはよ……」
フランの可愛らしい声で目を覚ます。時計を見るとまだ6時……何だ、2度寝ができるじゃあないか。
「おやすみ……」
「まあ! ふふ、だらしがないですわね」
そう言いながらも楽しそうに頬にキスをしてくるフラン。
「わたくしは学校があるので先に行きますが……凜音様はどうされますの?」
「んん~? 学校かぁ~……」
学校……施設……抜け出して……ん?
「まずいっ! 抜け出したのバレたらヤバい!!!」
「ですわよね……さすがにわたくしもあの施設には無理を言うことはできませんので……」
「いやいや、身から出た錆だし! とにかく急いで帰らなきゃ……!」
「では途中までご一緒しましょうペン」
……ん?
「コホン、さぁ顔を洗って身支度を整えてくださいまし!」
「あ、うん」
何か大事なことを見落としているような感覚に陥るが、今はそれよりも施設に戻らねば!
ていうか、フランもまだ学生だったのね。
◆◇◆◇◆◇
放課後、結局抜け出したのがバレて罰を受けに行く途中、級友たちと出会った。
施設には学校のように授業もあるから一応級友だ。
「お前、夜中に施設抜け出したんだって? 何やってたんだよ?
「まさか……女か?」
「ん~……そうでもあるしそうでもないし」
本当の目的はダンジョンだったが、フランとも会ったし嘘ではない。そもそもこいつらに話すことでもない。
「かーっ! 羨ましいぜ! 俺も早く女とヤりてぇ!」
「それな! 俺の“約束された勝利の剣”でこの国を救うんだ!」
「なんの! 俺の“刺し穿つ聖槍”で女をひぃひぃ言わせてやる!」
「その戦い、俺の“無限の小剣”の方が有利だな! どんな女でもアヘらせてやるっ!」
これである。
17年間に及ぶ隔離生活は確実に彼らの女性への価値観を歪め、思春期男子特有の欲望が爆発寸前だ。
もしかしたら隔離されているのは極限まで女性を求める本能を刺激するためなのかもしれないと思えるほどに。
「……俺、この後用事があるから行くわ」
いずれにしろ、俺が彼らと仲良くなることはない。
女性を自慰の道具としてしか見ていない彼らとは。
「んだよ、つれねーな」
「今度抜け出すときは俺らも連れていけよ!」
彼らの声が遠くなるのを感じながら、施設の建物を出て駐車場へと向かう。
そこには1台の車、そしてそこから降りてきたのは――。
「はぁ~い、凜ちゃん♪ 2日連続で会えて嬉しいなっ♪」
母の天城真里愛。母と言っても血は繋がっていないし、1か月に1度、数時間しか会えないから母というよりは面倒見てくれるお姉さんという感じ。
「ごめん、母さん。俺がやらかしちゃったばかりに呼び出されてしまって……」
「それは別にいいけどぉ~、私のことは真里愛かママって呼んでって言ってるでしょぉ~!」
頬を膨らませ、怒っているようなポーズをとる母さん。息子に名前で呼ばせるなよ……。
昔はこんなふわっとした感じじゃなかった気がするけど、今はどうしようもなくふわっとしてる。
多分俺が何をしても怒らない。今怒ってる風だけど。
「凜音くん、天城さん、行きましょうか」
なかなか車に乗らない俺らを見かねてか、運転席から理事長が声をかけてくる。
まさか彼女まで同行するとは……俺は一体どこに連れて行かれるというのだろうか。
「心配しないで……私がついてるからね!」
「母さん……」
◆◇◆◇◆◇
そしてたどり着いたのは、横に広く真っ白い大きな建物。
いかにも研究所のような雰囲気を醸し出しており、側面にはこの建物の役割を示す言葉が刻まれていた。
「……精子バンク……」
「凜ちゃん……私がついてるからね……!」
母さんに手を引かれ、中に入る。なぜ俺がここに……昨日出し尽くしたと言うのに!
「初めての利用です。登録と説明をお願いします」
理事長が俺らの前に立ち、受付のお姉さんに話しかける。
「まぁ! ここを始めてのご利用ですか!? お姉さんがヌキヌキしてあげます!」
風俗か何かかな?
「こほん」
「……失礼しました。では簡単に説明しますね。ご存知のように世の中は男性の数が圧倒的に少なく、子作りに対して需要と供給が全く釣り合っておりません。そこで学校を卒業した男性には月に1度、お精子様をピュッピュッして提出して頂く義務があります」
ところどころ卑猥な気がする。
「別室にて採取して頂き、提出されたお精子様は適切に保存処理され、全国の希望者に人工的受精という形で提供されます。今ならお姉さんに直接注いで頂けるキャンペーン実施中でぇす!」
卑猥だ。
しかしおかしい。
お姉さんが言うように、俺がここにくるのは卒業後――後1ヶ月以上猶予があったはず……!
「昨夜施設を抜け出した罰だ。色々な事情を加味した上でな……そう、色々と」
俺の内心を察してか、理事長が眼光鋭く追い討ちをかける。
まさかフランのことがバレて……?
いや、そんなはずは……。
「私がついてるからね……!」
「どうしてもというなら私がヌイてやる」
「今ならお姉さんと恋人になれるキャンペーンも実施中です!」
……いや、別に手伝って頂かなくても……。
「1人で大丈夫です」
「は? じゃなくて……そういう訳には行かないんです。不正提出を防ぐためどなたか女性と一緒でなければいけない決まりでして……通常はパートナーの女性とご一緒されるんですよ。パートナーを現地調達という手もありますが。ってかヤらせろ!」
何てことだ……まさかこんなことでフランを呼び出す訳にはいかないし……。
どうしたもんか……。
「……私がついてるからね……!」
そう言って母さんが、俺にスマホの画面を見せてくる。
これは……フランの連絡先?
「……私がついてるから!」
まさか!? 自分を選べってことか!? 脅そうってのか!?
さっきから何度も同じことを言っていたのはそういうことだったのか!?
「……母さん、頼む……」
「――っ! うんっ♪ えへへぇ~♪」
屈してしまった……。
何の屈託もない笑顔のはずなのに……胸中はなんてことを考えてるんだ……。
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