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第38話 不遇にして不朽


「うわぁぁぁぁ~~~!?」


 という訳で、ダンジョンに侵入して速攻で駆け出す。

 片手で剣を振り回し、反対の腕に雪さんを抱き、とにかく突っ走る。


 森林エリアのようだが、高速で移動しているため雪さんには新幹線の車窓(しゃそう)からの風景のように見えるだろう。

 それどころじゃないかもだけど。


「キシャ――!?」

 通りすがりに、人よりも大きい蜘蛛(くも)()ぎ払いつつ。


「わああああ!? 何かかかったぁぁぁ~!?」

「あ、雪さんあまり喋ると――」

「ひゃぶっ!?」

 遅かったか……舌を()んでしまったようだ。


 雪さんが涙目で恨めしそうに見つめてくるが、心を鬼にして走り続ける。

 後でお口の中を見てあげなければならないと(ちか)いながら。


「む、蜘蛛の巣が――うん、問題ないな」

「もごもごっ」

 絵に描いたようなキレイな蜘蛛の巣も魔力を(まと)ったブラックハイネスで切断することができた。

 このまま進もう。


「お、早速下層への階段だ!」

「もごっ!」

 そのまま飛び込むようにして階段へ。2層も様子はあまり変わらない。


「よし、いくぞぉ!」

「もっ!」


 ……。


 ……。


 ……。


 その後も2層から5層と特に問題なく進みきった俺達の前にはボス部屋の扉が。


「ふぅ~……ダンジョンの最奥目指すだけなら全部これでいいかもなぁ」

 道中の素材とか倒した際のドロップとかはもったいないかも知れないが……どうせ運に左右されるものだし。


「もっ!」

「もう喋って大丈夫だよ。ほら、お口の中を見せてごらん」

「うぅ~……いふぁい(痛い)……」

 素直に小さな口を目一杯(めいっぱい)広げる雪さん。


「……ふむ」

 えっっっ!!!


 えっちすぎますぅ! 小さいお顔の小さいお口で頑張って口を開いて……しかも無防備! こんなにも無防備な姿を(さら)してっ! えっちすぎますぅぅぅ!!!


ふぉお(どう)? ひぃふぇふぇふ(血出てる)?」

「……ふむ、よく見えないな。すまないが――」

 (あご)をクイッとな。むしろ余計舌が見えなくなった気もするが関係ない。

 彼女の口の中を全て堪能(たんのう)するまで止まれねぇっ! 


ふぇ()ふぇえ(ねぇ)……?」

「もう少し待ってくれ」

ふぇ()ふぇふぉぉ(でもぉ)……」

「大変だ……! 血が(にじ)んでいるじゃあないか!」

「……凜音さんの方が血出てるよ……鼻から」

「……」


 いけない、興奮しすぎたようだ。


「……ボス部屋行こっか。おいで、リア!」

「『――凜音様、ご無事ですか? わん!』

「『待ちくたびれちゃったよぉ~! わん♪』」

「『……生きてさえいればいいわよわん』」

 1人そっけないようでめちゃくちゃ全肯定してくれてる発言のケルベロスの頭がいる。


「予定通り、このダンジョン特有の蜘蛛のストラップは全部突っ切ってきたよ。ただ、ボス部屋ともなるとそうはいかないかもだからサポートよろしく!」

「『あら、今回は優秀な探索者の方がいらっしゃるじゃないですか! そちらの方にお任せしてはいかがですか?』」

「え?」

 予想外の答えに面食(めんく)らってしまう。


「ん。この後大きなボスを倒すんでしょ? 露払(つゆばら)いは私に任せて」

 フンスと小さな鼻を鳴らす雪さん。


「私の『トム』の無限の可能性を見せてあげる」

「それじゃあ……任せた!」


 ランクA探索者である雪さんの戦いに期待を寄せながら、ボス部屋の扉を開ける。

 その部屋はいたるところに蜘蛛の巣が張り巡らされており、中央の巣に3メートルはありそうな巨大な蜘蛛が、その脇に2体の少し小さめの蜘蛛がいた。小さいと言っても、自動車くらいの大きさだが。


「“不遇(ふぐう)にして不朽(ふきゅう)”『トム・ザ・キャット』――これでよしっ」

「これは……?」

 雪さんの小型戦闘機には、『収納袋』から取り出したビニールが(くく)り付けられていた。


「魔力で起爆(きばく)する爆弾。威力はかなり強い……高いけど」

 少しだけ悲しそうな目をしてる彼女。それは『トム』を犠牲(ぎせい)にすることか、お金のことを思ってか。


「『トム』、任せたよ」

「……」

 気のせいだろうけど、コックピットにいる何者かが親指を立てた気がした。誰もいないけど。

 てかこれ、完全に神風(かみかぜ)アタックじゃん。


「……」

 そして爆弾を抱えた『トム』が部屋の中央にたどり着く。

 彼の出す飛行音は3体の蜘蛛の興味を引くことができたようで、近くによってきてくれた。


「今っ!」

「うおっ!?」

 雪さんが俺の外套(がいとう)の中に入り、そして合図を出す。

 その瞬間、目を開けていられないほどの光りと共に衝撃(しょうげき)が襲いかかってきた。


「ギシャアアア!?」

「ギ……ギギ……」


 大きい方の蜘蛛は体を半壊させつつもまだ息がある。

 取り巻きの2匹は少し離れていたものの、ひっくり返って地面に横たわっていて全く動かない。


「ギ……ギギ……」

「『トム』……お前の犠牲は忘れない」

 爆心地の中心にいた『トム』は当然悲惨(ひさん)な状態に。蜘蛛が鳴いているのかと思ったら、『トム』が崩れる音だったらしい。


「大丈夫」

 雪さんがそういった瞬間、トムの機体が元通りになった!?


「トムは攻撃力はいまいちだけど、魔力を補充すれば(よみがえ)る。そう、何度でも」

「え、普通にすごい」

 本当に無限の可能性を感じる。毎回『トム』は犠牲になるかもだけど。




「さて、とどめを刺して……ダンジョン攻略完了!」

 ランクAといえど、ハマればこうも容易く攻略できるとはね。


「1つ100万円の爆弾が10個……9個にしても良かったかな……」

 ……後で払うから! 泣かないで!

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