第35話 飛ぶぜ?
「しかし強力な拘束魔法でした……もしあの娘が本気であれば命はなかったかもしれません」
歩いて安全圏へと向かう中、星奈さんがプリプリしながら語る。
「我々も今一度気を引き締めなければならない。依頼者を危険にさらしてしまうなど、これでは面目丸つぶれもいいところです」
「うん。油断していた」
「……そだね」
みんな徹夜明けで集中力も欠いてただろうし、これからは動画の内容にも気を配っていけば大丈夫だろう。
「ミコ? どうしたの? 元気ないけど」
「……ん? 別に……ウチも油断しちゃったなぁって落ち込んでただけ……」
「……そう」
今回の問題も大事だが、それよりもミコさんの様子が気になる。
彼女自身が言う、任務を遂行できなかったことを悔いているだけのようには見えない。
「さて、安全圏に着きましたね! 凜音さんと雪たちは迎えの車が来ておりますね! 私はこのまま鍛錬しに向かいますので、ここで!」
「えっ!? 今から!?」
よほど今回のことを反省しているのか、猛烈な勢いで走っていった星奈さん。せめて1度寝てからでも……。
「……ウチも、今日は歩いて帰るね……」
「ミコ? ここから歩いたら2、3日はかかるけど……」
「ん……じゃね~……」
「……」
さて、彼女に何て声をかけようか。
落ち込んでいる理由はなんとなくわかる。自惚れじゃないといいなぁ。
「ミコさん、ちょっといい?」
「りおっち……今日は……その――ふぇっ!?」
少しだけ歩みを進めたミコさんを、後ろから抱きしめる。
「配信では時間がなくて言いそびれちゃったけど……ミコさんのことも大好きだよ」
「えぇっ……いや、だって……どうせウチなんて……」
「ミコさんの笑顔でこっちまで元気を貰えるし」
「そ、それだけが取り柄みたいなもんだしっ」
「空気を読んで周りの関係を円滑に保てるなんて本当にすごいよ」
「ウ、ウチには気を使うくらいしか――」
「おしゃれなところもキラキラしてるところも、一緒にいて誇らしいし」
「そ、それは……」
「えっちのときも俺を労ってくれてるのわかるし」
「――っ!」
「ミコさんが――」
「好きです、一目惚れでした。こんなウチだけど――」
「――よければ、お嫁さんになってください」
「……ぐすっ……ひっぐっ……ぴっ」
「ぴ?」
「ぴえぇぇぇええええ~ん! びえぇぇぇええええ~~~ん!!!」
ぴえんて。こんな時までギャルっぽくしなくても……。
それに、さっき直してたメイクがグチャグチャだ。
「……ごめんね、もう大丈夫っ☆」
数分後、いつものように元気を取り戻したミコさん。
やはり彼女は笑顔が似合っている。
「いこっ☆ 雪や真世さんを待たせちゃってるもんね!」
「そうだね」
彼女たちも見てしまっていただろう。気恥ずかしいな……。
「ごめんなさい、真世さんっ! 私も一緒に帰ります」
「ふふ、私は歓迎しますよ。寝取ら――お嫁さんが増えることはいいことです」
それは性生活のためということでしょうか。よくわかりません。
「……ミコ……」
「雪……」
長らく同じパーティを組んでいた2人。色々と露呈してしまった後の彼女らのファーストコンタクトは――。
「……おめ――」
「まだそんな浅瀬にいるの?」
「……」
「早くこっち来なよ……飛ぶよ?」
「コロス」
最悪だった。
「今日という今日は許さない! “不遇にして不朽”『トム・ザ・キャット!』」
「ちょっ!? それは洒落にならないってぇっ!」
人の頭と同じくらいのサイズの戦闘機が現れ、ミコさんの足元めがけて発砲する。1発1発の威力はそこまでではないが、とにかく弾数が多い。
まさかこんなことで雪さんのスキルを見ることになるとはね。
「こうなったらぁ! “描くは未来”“描くは夢想”『メイクアップ:りおっち!』」
まさかこんなことでミコさんのスキルを見ることになるとは――あれ!?
光に包まれたミコさん、その光がはれるとそこにいたのは……俺!? 変身スキル!?
「――人は、誰かになれるっ☆」
ぎゃる~んってな感じで横ピースとウィンクを決めちゃう俺が目の前にぃぃ!?
「うそ……! ミコは第1聖句までしか使えなかったはずなのに!」
「だから言ったでしょ、飛ぶって☆ さっき『ビビッ』と来たんだよね~☆」
「そんなぁ~……完全に私の負け……」
ガクッとうなだれてしまう雪さん。
「――わっとっとっ……あまり長い時間変身していられないみたいだね……」
時間にして数秒、それだけで変身は解けてしまったようだ。
俺としては安心した。自分の姿をしたモノが勝手に動いてたらと思うと……いくらミコさんでもね。
「ふっふっふ、今こそお見せする時ですね。私の固有スキルを……!」
真世さん何で?
今日はまた20時頃から4話ほど投稿します。
よろしくお願いします!




