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第34話 配信の落とし穴


「――んで、『バカぁーーー』って言いながら照れて逃げるところなんてさいっこーに可愛くて――」

「凜音さん……もう朝ですので……その辺で……」

 む? まだ語り足りないしフランと真里愛とまひるちゃんしか語ってないのだが。

 しかしやつれた様子の星奈さんから懇願(こんがん)するような声が……。


 【すみませんでした。素直に彼女たちが羨ましいわ (10000円)】

 【凜きゅんは本当に天使だったんだね…… (10000円)】

 【待て、まだCGの可能性も捨てきれない。ぜひ乱こ――オフ会を開催してもらわなければ (10000円)】


 途中離脱した人も多いが、何人かは最後まで付き合ってくれたようだ。こんなアホみたいな嫁彼女自慢動画に。

 離脱した人も概ね好意的なコメントをして落ちてった人が多かったので、どうにか汚名返上はできたと言えるだろう。


「みなさん、本日はグダグダな動画に付き合ってくれてありがとうでした!」


 【いえ、こちらが(あお)った結果ですので…… (10000円)】

 【なんか……自分を磨くしかないって思ったよ。その努力もちゃんと見てくれる気がするし (10000円)】

 【いつか出会えた時に自信持ってハーレムに入れて下さいって言えるように頑張る (10000円)】


「俺も、女性から真に好かれるように頑張ります! それではこの辺で……また見てくださいね!」


 ……。

 ……。

 ……。


「ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど、何とかなったね」

「雪さん……みなさんも長時間付き合ってくださりありがとうございます」

 さすがに『アヘ顔ダブルピース』の3人も疲れているようで、顔に表れている。いつも元気のかたまりであるミコさんすら表情が暗い。


「では急いで――えっ!?」

「なっ!? 何だこれは!? 鎖!?」

 撤収しようとした矢先、突如として地面から生えた鎖に体を拘束された!


「ふわぁぁ~……やっと配信終わった~? 待ちくたびれちゃったよ~」

 木々の影から、間延びした話し方の少女――俺より少し年下くらいの女の子が現れた。


「誰だ貴様ッ! この鎖は貴様かっ!?」

「うふふ、そうよ~。邪魔者も憎い人もまとめて拘束する、く・さ・り♡ 素敵でしょ~♡」

 見ると俺と星奈さんだけでなく、ミコさんや雪さんまで拘束されている!


「“凛として立て”“厳然と在れ”『身体強化!』――何っ!?」

「あはっ! Sランクの探索者さんでもダメみたいだね~」

 星奈さんが第2聖句まで開放して拘束を解こうとしたが、それができないほどの拘束力!?

 俺ならいける気がするが……まずは会話を試みよう。みんながどうなるかわからない。


「何が目的だ!」

「目的~? ん~……そうね~、動画で嘘くさい愛を語る薄情者のお兄ちゃんに会いに来たってところかしらぁ~」

 動画……視聴者の1人ってことか。


「みんなもバカだよね~、本当に会いたいんならさぁ、今回なんて絶好のチャンスだったのにぃ~。長時間の配信なんて、見つけてくれって言ってるようなものだよねぇ~、お兄ちゃん♡」

「……」

 危険区だから大丈夫……そう思っていたが、考えが甘かったか。


「……拘束を解け!」

「い・や♡ まだお仕置きが済んでないも~ん♡」

「お仕置?」

「そ~だよ~……愛だなんだと言いながら、私に1度も会いに来ない薄情者の嘘つきさんにねっ!」


 黒色に紫色のメッシュが入ったツインテールを揺らし、ゴスロリファッションに包んだ体を震わせながら大声で叫ぶ少女。

 恐ろしい展開すぎて逆に冷静になってしまったよ。視聴者がストーカー化した事案、今後もあるかも知れないし。


「すまないが俺は君のことを知らないんだ。まずは名前を教えてくれないか?」

「……そんなことすら知らないの? ひどいね、本当に」

「ぐっ……」

 まずい対応だったようだ。鎖の拘束が一段と強まってしまう。


「私は! 何度も何度も! お兄ちゃんに会うことを考えてた! 動画だって何回も見たし夢でだって何度も会った! エッチなことだって何度もしてくれた! それなのにお兄ちゃんは名前も知らないなんてっ! ――そんなの許せないっ!!!」

 エッチなことだけじゃなくてもう少し現実を教えてやれよ、夢の中の俺!


「ぐっ……と、とにかく名前を……それでお友達から始めようじゃないか……」

「友達ぃ!? 何を今更――」

 名前さえ知ることができれば……ここで彼女を取り逃がしたとしても追跡できるからね!


「……もしかして、本当に知らないの? 私のこと」

「え? も、申し訳ないけど……どこかでお会いしましたっけ?」

 まさか、卒業前に理事長に引き合わせられた娘たちの中にいたとか……?


「……天城凜音」

「はい?」

「間違いじゃない、本人……だよね」

「はい」

 これで人違いでした、だったら笑って済ませてあげたのに。ぶん殴るけど。


「私は……いや、やっぱりやめておくわ。せいぜい……私のことを想うといいよ」

「……」

 そう言って去っていくゴスロリ少女。

 とりあえず難を逃れたということか。


「追う?」

「……いや」

 雪さんの『ジェリー・ザ・マウス』であれば追跡は可能かも知れない。


「……何だか辛そうな顔だったし、今回は大目に見てあげて欲しい、かも」

「凜音さんがそう言うなら」

 彼女たちも被害にあっている訳だから、俺の独断で決めるのは申し訳ないけど。

 



「ぬぬぬぬ……うぉりゃぁぁぁ!!! さぁ小娘! 尋常に勝負だ! ――あれ?」

 5分ほど後、拘束を無理やり解いた星奈さんをなだめるのに時間がかかった。

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