表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/82

第2話 ただより高いものはない

 ――その夜。


 宝条(ほうじょう)家の方から呼び出しを受けた俺と母さんの2人はとある料亭(りょうてい)に連れてこられた。

 テーブルを挟んで目の前に座っているのは、宝条財閥――様々な分野で事業を展開している、この国指折りの大企業の会長、宝条ベアトリーチェさんとその娘のフランチェスカさんだ。


「――早速ですが天城凜音(りおん)さん、あなたは探索者になる、という決意は変わっておりませんね?」

「はい」

 挨拶もそこそこに、ベアトリーチェさんが単刀直入に聞いてくる。


「男性の特権を捨ててまで目指すものがあるのは大いに結構。ですが、あなたのステータスでは探索者として大成できないと思うのだけど……少しは成長しました?」

 ベアトリーチェさんが、恐らく俺のステータスに関する資料を見ているのであろう。タブレットを操作しながら俺と画面を交互に見ている。


 この辺の感覚――文明というか、技術のレベルは、前世とあまり変わらない。変わるのは、動力が魔力ってことくらいか。もちろんテレビも車もある。


「むしろ固有スキルの『絶倫(ぜつりん)』なんて明らかに種馬向きじゃないの。(うらや)ましいわ、そのスキルがあればこの世は思いのままよ?」

「……その種馬扱いが嫌なんですよ」


 この人、明け()けな物言いが怖くてね……苦手なんだよ。

 保護という名の軟禁(なんきん)状態で強制ハーレムだなんて、その通りだとは思うけども。


「お、お母様! 確かに今は戦闘向きのステータスではないかも知れませんが……いずれ第2の覚醒(かくせい)に至るかも知れません! それに我々のサポートがあれば危険性の問題も収益的にも――」

「こら、フランチェスカ。あなたは黙っていなさい。凜音さんに肩入れし過ぎなんだから」


 娘さんであるフランチェスカさん。長い金髪をゆるく巻いた、いかにもなお嬢様。とても美しいが……残念ながら胸はない。そう、胸はない。

 彼女とは以前から一応顔見知りではあるが……何でここまで肩入れをしてくれるのかは正直わからないんだよね。


「いいえ黙りません! そもそも今日は我々と凜音様のスポンサー契約の最終確認だけだったはずですわ! それなのに今更彼のステータスのことを蒸し返して!」

「……はぁ~あ。。本当にダメねこの子。凜音さん、我が娘をこんなにした責任はちゃんと取ってくださる?」

「お母様! 恥ずかしいですわ!」

「恥ずかしいのは私よ。物事を進めるのに感情的になりすぎちゃダメだとあれほど言ってるのに……で、どうなの凜音さん」


 ……え? 今の流れで本気で言ってるの?

 いやいや、これが上流階級ジョークってやつか。うまいことこちらもウィットに富んだ返しをしなければ。


「はっはっは、フランチェスカ様のような、薔薇(ばら)のように気品(あふ)れる美しい女性と私なんてとても――」

 その時、フランチェスカの顔が枯れかけた花のように、目に見えて元気がなくなっていくのが見て取れた。


「――釣り合わないかも知れませんが、全力を尽くして頑張ります!」

 面接の決意表明みたいな結びになってしまったが、それでも彼女の顔が、超強力栄養剤を一気に飲み干したかのように明るさを取り戻す。感情が忙しいな、この子。


「~~~! ~~~!」

 嬉しそうに身悶えながら、フランチェスカさんがパチンと指を鳴らす。

 するとメイドさんが数人、何かを抱えて入室してきた。そしてそれらをテーブルの上に乗せ、1人のメイドさんが口を開く。


「嬉しさで話すことができないお嬢様の代わりに私がご説明いたします。こちらはかねてより凜音様に贈呈(ぞうてい)するため用意していた剣と、自律型AI搭載(とうさい)探索支援用ドローンのペンギンちゃんモデルでございます」

「何て?」


 剣はわかるが……ドローン? 何でペンギン?

 一見ただのペンギンのぬいぐるみ。2等身のデフォルメされた見た目で、ふわふわな手触り。完全にぬいぐるみ。


「詳しい説明は後ほど担当の者がいたしますわ! 今はこれを……我々宝条財閥があなたに送る最初の支援として受け取ってほしいのです! そう、この魔法剣『フランバスター』とサポートドローンの『ランチョン』ちゃんを!」

 再起動したフランチェスカさんが改めて教えてくれるが……。


「ありがたいけど、その名前だと『フランをバスター(破壊するもの)』になっちゃうんじゃ……?」

「はい、バスターしてくださいませ♡」

 何を言っているのだろうかこのお嬢様は。もしやこれも上流階級ジョーク……?


「『よろしくペン! 凜音様のために頑張るペン!』」

「お、喋った。結構可愛い声で(しゃべ)るんだ。よろしくね」

「『はぁん♡』」

 ……ん? ペンギン型ドローンから怪しげな声が……。


「ちっ、余計なことを……コホン。この他にも凜音様が探索者として大成できるよう、様々なサポートを用意していますので、全力でわたくしを頼ってくださいな!」

「うん、ありがとう。頼りにしてるよ」

 こうなったら早速後で試してみよう!







「……あの、契約書へのサインがまだなんですが……」

「あらあら♪ それじゃあ後は保護者である私が代わりに♪」


 途中から完全に蚊帳(かや)の外だったベアトリーチェさんと、最初から存在を忘れていた母さんにより、その後契約云々(うんぬん)の話がまとめられた。


読んで下さりありがとうございます!!!


ブックマーク、誤字報告や温かい感想を頂けると跳んで喜びます!

★★★★★頂けると泣いて喜びます。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ