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第15話 コア・ビースト

 ――宝箱を破壊する。


「『そんなっ!? それは重大な規約違反ですわ!』」

「……そうだ」

 まるでフランが直接喋っているかのようにランチョンが反応する。


「『どうしてそんなことを!?』」

「ダンジョンを……破壊する必要があるんだ。詳しくは後で話すけど……」

「『ダンジョンを破壊!? この世界は……この国の経済や生活はダンジョンが大きな役割を果たしているのですわよ!?』」

「……知ってる」

「『食料は50%以上! 魔道具に関しては80%以上がダンジョン産とも言われているんですのよ!?』」

「……うん」


 人類の生活圏はモンスターに追われ、魔道具の開発コストはダンジョンから入手するのとは比較にならないくらい高い。

 もちろんそれだけじゃなく鉱物や食料などの資源もダンジョンに頼っているところが大きい。


 それでも――。


「『……それでも、必要なことなのですか?』」

「そうだ。フランたちと……大事な人たちと一緒に生きるために」

「『……』」


 明日もし全ての文明や技術がなくなると言われても、滅びるよりはマシなはずだから……。


「『……わかりました。あなたを信じますわ! どうぞお好きになさってくださいな!』」

「……え!?」

 正直、とても許して貰えないと思っていたけど……!


「『……あなたが探索者を目指すと聞いた時、何をバカなことを言ってるのだと思いましたわ。しかし、その目は……決して軽はずみな気持ちで言っているのではなく、強く気高い意思を感じました。そして、今もその目をしています。信じるのにそれだけで十分ですわ!』」

「フラン……」

「『それに、わたくしはあなたの1番の妻――が贈った高性能AIドローンですからペン! 凜音様のことは誰よりも信じてるペン!」

 確かに、高性能過ぎてまるでフランと直接話しているかのようだった。


「……そうだね。帰ったら1番の奥さんに……それとみんなにもちゃんと説明しなきゃ」

「『はい、きっと待ってますわペン!』」


 そうと決まれば早速……。


「フランバスター。俺達の未来を……切り開いてくれ!」


 どうか、これが正解でありますように。そんな祈りを込めながら宝箱を十字に切り裂く。

 宝箱は4つに分かれ、次第に消えていった。

 規約が本当なら、これでこのダンジョンの探索報酬は2度と手にはいらない。


「『凜音様! 目の前にゲートのようなものが!』」

「――っ! 成功か!?」

 いつもの帰還ゲートとは様子が異なり、赤い色のゲート。どこか禍々(まがまが)しい印象を受ける。


「……入るぞ!」

「『……はい』」

 剣を構え、慎重にゲートを(くぐ)る。

 その先は――。


「『大きなモニターが複数、ダンジョン内を映していると思われます。その下にあるのが恐らく操作パネルでしょうか。そして……部屋の中央にあるクリスタルのようなものは……』」

「ダンジョン・コア……!」


 部屋の中央に浮いている、ボウリング玉くらいの大きさで青く輝いているクリスタルのようなもの。

 恐らくこれが……ダンジョンコアだろうか。


「……破壊するぞ」

「『はい。内部は全て写真に収めました』」

 さすが、できるAIだ!


「フランバスター!」

 いつもより多めに魔力を込め、クリスタルに剣を振り下ろす。

 見た目以上に硬いダンジョンコアだったが、それでも真っ二つに切り裂かれた。

 それと同時、周囲がけたたましいサイレン音とアナウンスに包まれる。


 <警告。警告。当ダンジョン、レベル3ゴーレム種ダンジョンのコアが破壊されました。迷宮内部の挑戦者を排出。これより最終試練を開始します。ご武運を>


「やはりダンジョンコアだった! これで――!」

「『なんですのこの声は……それに、最終試練!?』」

 これらの意味不明なことは、ランチョンのデータにもないらしい。一体何が――。


 しかし考察する間もなく、ゲートを潜ったときのような浮遊感を味わう。

 一瞬の出来事だったが、気がつけばダンジョンの入口があった場所に来ていた。


「うっ……ここは……?」

「『凜音様! あれは!?」

 ランチョンの示す方向を見ると、割れたダンジョンコアを中心にものすごい勢いで何かが形成されているところだった。


「『ダンジョンのあった場所も崩壊して――っ!? 何か巨大な物体が形成されていますわ!』」

 これが……最終試練とやらなのだろうか。

 今はただ、何ができるのか見守るしかない。


 次第にコアを中心として、人型の何かが形作られていく。

 長いように感じるが、それでも30秒ほどだろうか……ようやく変化が収まったあとに立っていたものは……。


「でかすぎ……」

 超巨大なゴーレムだった。

 薄い緑で半透明なボディ、全長は……わからない。それほどまでに大きなゴーレムだった。


「『ステータス……個体名、ミスリルゴーレム・コア。全長100メートル……』」

「100メートル……」

 思わず圧倒される。

 腕も、足も、体もまるで山のようで……一体どうすればいいのだろうか


「コォォォ……」

「『凜音様!!!』」

「――しまっ!?」


 まるで空が堕ちてきたのかと勘違いする程。ゴーレムがその拳を振り下ろした。

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