表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

創作詩6: 方舟

作者: 香月融

本投稿では、創作詩 ”方舟” を発表します。本作は家族崩壊を比喩的に表現した詩です。私が出張中、自宅で暴れた息子は警察に収容されましたが、自宅に戻ることはなく隔離病棟に強制入院となりました。当時、機能不全に陥った家族の姿が私の無意識の記憶から鬼と化して本詩に現れたのかもしれません。

蛇口から、

幽かに漏れ落ちる水の音が気になった。


修理するにはもう時間がなかった。

夕食もほどほどに家を出た。

会社に着くや否や顧客から大クレームだ。

午前3時を過ぎて漸く休憩できた。

私はうとうとしてしまった。


薄ら灯りの中で台所のシンクが見える。

ガタガタと震える蛇口からダダ漏れる泥水*、

突然に蛇口のコックが吹っ飛ぶ、

潮吹きの如く肉汁色の飛沫が天井を突き上げる、

瞬く間に悪魔の噴水ショーと化す。


室内が侵されていくよ!

残してきた家族よ!

目覚めよ!

気が付けよ!

外に出て元栓を閉めよ!


ランダムに四方八方へ突風の如く、

溢れた大量が窓を破く、

もはや土石流の如く、

ドロドロの渦が我が家を飲み込んでいく、

瞬く間にあたりの人影や田畑や森も犯されてゆく。


息子は?

娘は?

妻は?

神は?

方舟は?


あ〜・・・

お〜・・・・・

う〜・・・

お〜・・・・・

あ〜・・・


方舟から、

降り立つ生き物達の中に妻子の姿はなかった。


終わり


*脚注:「泥水」は ”どろみず” と読む。

各連の脚韻(〜た。/〜う列/〜よ!/〜く/〜は?/母音〜・)、各連の形状(文末のレイアウトの対称性)にこだわりました。また、詩の連構成においても、前半と後半がシンメトリー(行数=2-555|555-2)になっています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ