75.復讐に来た魔族を圧倒する子フェンリル
ひゃんっ、と吠えるふぇる美。
『なんだなんだ?』
『どしたの? ふぇる美ー?』
念話でしゃべれるようになった、ふぇる太&ふぇる子が首をかしげる。
『……敵が、来る』
『『敵ぃ~?』』
ふぇる美が頭上を見上げる。
瞬間……ごぉおお! と屋内プールの屋根が吹っ飛んだのだ。
現代建築技術を使い、しっかり作ったはずの屋根がである。
黒姫が結界で、がれきから皆を守ってくれた。
「気をつけてミカちゃん。邪悪なる存在の気配を感じるわ……!」
四神の娘、黒姫が額に汗をかきながら言う。
頭上には、黒い靄が集まっていた。
黒い靄はやがて、見上げるほどの巨大龍へと変化した。
「なにこれ……?」
『地獄から舞い戻ってきたぞぉおおおお! どら子ぉおおお!』
! この声……まさか……。
「イチワ・デ・キエリュウ?」
『そうだぁ……! 貴様が究極闘気砲で吹き飛ばした、魔族イチワ・デ・キエリュウ様だぁ!』
前倒した魔族が、どうして……?
~~~~~~
イチワ・デ・キエリュウ
【種族】呪霊
【レベル】30000
~~~~~~
~~~~~~
呪霊
→魔族が死後呪いに転じた姿。
恨みの力が強ければ強いほど、レベルが上がる
~~~~~~
どうやら人間に倒された後、呪霊となって、戻ってきたらしい。
『ぐわははははは! どうだ、恐ろしいだろう! おののけぇ!』
呪霊となったイチワ・デ・キエリュウが笑うと、空が暗雲に包まれる。
ごぉお! とプールに嵐が吹き荒れる。
「ミカちゃん! あいつはヤバいわ! どうしましょう!」
「まあ、大丈夫だよ」
呪霊となったとはいえ、あいつのレベルは3万程度だ。
私で簡単に倒せる。
ふぇる太&ふぇる子が、吠える。
『おれが、やるぜ!』
『あたしも、やるわ!』
二人がやる気満々である。
レベルは二人の方が下なのに……?
『……姉様。ここは、私たちで十分です』
と、ふぇる美。
ま、危なくなったら止めに入ればいいか。
この子達が具体的に、どれだけ強くなったか知りたいし。
「よし、ここは子フェンリルたちに任せます」
「ばう!」「わう!」「…………」
黒姫の結界内に入る私たち。
ということで、子フェンリルVS呪霊イチワ・デ・キエリュウ。
『ぶはっはあ! 死ね死ね死ねぇええええええええええええええい!』
小さな竜巻を作りだし、ふぇる太たちに襲わせる。
コンクリの地面をえぐるほどの威力を持った竜巻だ。
それが猛スピードでふぇる太たちに襲いかかる。
『ふははは! 終わりだぁあああ!』
ぼっ……!
と、呪霊イチワ・デ・キエリュウの体の一部が消し飛ぶ。
と、同じタイミングで、竜巻全てが破壊された。
『なっ!? ど、どうなってる!?』
『おれがやったぜ!』
空中にはふぇる太が立っている。
彼の足からは炎が吹き出ていた。
『どういうことだっ!』
黒姫や、ふぶきたちも、何が起きたのかわからないらしく、首をかしげていた。
そっか、皆には見えてなかったのか。
「ふぇる太は足から炎を吹き出して、目にも留まらない早さで移動。竜巻、そして呪霊イチワ・デ・キエリュウの体を食いちぎったんだ」
「主よ……見えておったのか……? あんな……猛スピードで走るふぇる太が」
「え? まあね」
ふぶきが唖然としていた。
まあ、神ならこれくらいできて当然でしょう。
「ミカお母様すごいっ! わたしじゃ見えませんでしたっ」
あれ、眷属神は見えなかったのか。
最高神だから見えたってこと……?
『く、くそ! まだだ!』
黒い靄が急速に広がろうとする。
『……兄さん、姉さん。あの靄は、呪いよ。広げたら駄目』
と、ふぇる美が言う。
~~~~~~
呪いの風
→呪霊イチワ・デ・キエリュウのスキル。触れたものの命を奪う呪い
~~~~~~
ふぇる美、相手の力を看破してる。進化した影響かな?
『次は、あたしの出番ね!』
『ふはははは! 無駄だぁ! わしの力は風! 風はどんなものでも乗り越えていく! 広がるのを防ぐなんて不可能……!』
すると……。
『氷神!』
ウォオオン! とふぇる子が吠える。
ぱきぃんっ! と黒い靄が、一気に固まったのだ。
『な……ば、かな……風を、凍らせた……だと……!?』
~~~~~~
氷神
→氷神フェンリルのスキル。
魔力を帯びた遠吠えを聞かせることで、特定の相手を、絶対に凍らせる
~~~~~~
なるほど、風などの肉体を持たない敵にも有効なのか。
『あ、あり……えない……わ、しは……レベル3万! 貴様ら……見たところ、まだ、子供! なぜ……力で、上回れる!』
確かに、とふぶきがうなずく。
「ふぇる太、ふぇる子のレベルは四桁じゃ。いかにスキルが強かろうと、レベル3万の敵を圧倒できるわけがない」
「普通にやったらね。でも……ほら見て」
ふぇる太&ふぇる子の体から、黄金の光が漏れている。
「あれは……闘気!?」
どら子が驚く。
闘気、発動させることで、一時的超パワーアップが可能となる。
「信じられない……闘気の習熟には、かなりの年月がかかるのに! ふぇるふぇるたちは、まだ赤ちゃん……使えるわけが無いのに……」
するとふぇる太達は言う。
『うぉん! なんかできた!』
『ふぇる美がやり方教えてくれたのっ!』
ふぇる美がふぇる太たちに、闘気の使い方を教えていたのか。
「でも、ふぇる美はどうやって、闘気の使い方を?」
『……姉様の全知全能に、アクセスしました』
「全知全能にアクセス?」
『……はい。どうやら私は姉様の持つ力にアクセスし、全知だけを使えるようです』
全知まで使えちゃうなんて。
「強くなったねえ、三匹とも」
『それに……しても、あ、りえん! 呪霊……だぞ?! 肉体のない、怨念に、ダメージを与えられるのは! 神格を……持つ、もの……だけ!』
イチワ・デ・キエリュウがまだわめいてる。
ふぇる子の氷から抜け出そうともがいてるが、抜け出せてない。
「そりゃね、三匹とも神獣にクラスアップしてるからね」
ふぇる太は炎神フェンリル。
ふぇる子は氷神フェンリル。
そしてふぇる美は雷狼神。
三匹ともの種族名に、神が入ってる。
そう……私が洗礼したことで、神獣になっているのだ。
「神格1.0の神獣達だよ。呪霊にも攻撃が通るの」
『こ、うなったらぁ……!』
イチワ・デ・キエリュウが何かしようとしていた。
『おれはぁあああああああ! やるぜええええええええええええええ!』
ふぇる太の全身から炎が吹き出す。
炎の化身となったふぇる太が、超スピードで体当たりした。
イチワ・デ・キエリュウの体が、爆発四散する。
どごぉおん! と、音が後から聞こえてきた。
「やるじゃん……ふぇる太。音を置き去りにする一撃をはなつなんて」
『うぉお! 姉ちゃんに褒められたぜー! うれしいぜー!』
ふぇる太がこっちに降りてきて、ベロベロとなめてくる。
ほんと立派になったなぁ。
『あー! ずるい! お姉ちゃんになでなでしてもらうのっ! あたしもっ!』
「はいはい、二人ともよく頑張りました」
フェンリルたちの顎下をなでてやる。
『……お姉様、まだです』
とふぇる美が油断なく上空を見つめている。
全知スキルを使って、調べたようだ。
どうやらまだ生きてるらしい。
『ぐ、そおおおおお! こうなったら……わしのぉお! たましいをもやしてぇええ! ここら一帯を消し飛ばしてやるぅううううううう!』
~~~~~~
呪霊イチワ・デ・キエリュウの暴走
→魂を破裂させ、そのエネルギーで周囲を吹き飛ばす。
防御不可の一撃
~~~~~~
『やばいぜ!』
『あたしが氷神で……凍らせる!』
『だめ、防御不可だから』
『『そんなー!』』
うん、ここまでかな。
私はスマホのカメラを、イチワ・デ・キエリュウに向ける。
「完全削除」
ぱしゃりっ。
……写真の画角に収まっていた、イチワ・デ・キエリュウが、完全に消去された。
「はい、お疲れさま」
どうやら、神スキルを防ぐことはできないようだった。
ま、相手は呪霊で、こっちは神なんだから。
こっちのほうが格上、スキルが通るの道理。
『うぉおお! すげー! 姉ちゃんすげー!』
『呪霊の全存在をかけた、最後の一撃すら一瞬で消しちゃうなんて! すごーい!』
二匹が凄い凄いとうれしそうに飛び跳ねている。
「いやいや、相手を君たちが弱らせてくれたおかげだよ」
『……姉様、優しいです』
ふぇる美がスリスリと、私の足に頬ずりしてきた。
どうやらこの子には、バレてるようだ。
私がふぇる太たちに、花を持たせようとしたってことに。
「子フェンリルたち、信じられんくらい、パワーアップしておるのじゃー!」
『当然ですっ、ミカ様が力を授けたのですからっ!』
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